不可視の情報
<infomation> //エニグマによるシェアリング
【クライテリオン】:わたしたちが数えれば数十万の流れ、主からすれば無限の流れ。光の夜はこの時ぞ。善悪の花を見つけ次なる舞台へ進む。
【ネクロス】:うむ、早いものだ。《怒りの日》はすぐだが、その前に目標を過ぎなければならん。徒花のままでは困るからのう。
【ルーク】:達成はしている。しかし試練に耐えられるか分からんな、なにせ若すぎる。
【オーガン】:三強、アヴェンジャーを狐として見る。望むのは赤と赤の交わり。母の物語も父の呪縛も異端には関係ない。チャンスがないと分かっているのに乙女は寄り添いたい。
【ネクロス】:はははっ! まだ諦めんのか、嫉妬なのか愛なのか分からんな。これまでに王を襲わない点を考えると迷っておるだろうな。
【スプリング】:そっちも若いのだから仕方ないでしょ。目的はマリスの異端者を消すこと。裏切り者は裏切り者を引きよせコミュニティは拡大する。組織内に生まれる派閥はどうすることもできない。特異人には文法があるのだからね。
【クライテリオン】:男女の文法的には逆を攻撃すればいいのだけど……どういうことか一緒に居たいらしいわね。わたしには理解できない冴えたやり方よ。
【ルーク】:他人の不幸は蜜の味らしいからな。繰り返す物語に刺激を求めるのがヒトぞ。
【オーガン】:『差別をなくそう』などと言う奴らはいつの時代も害悪だ。
【ネクロス】:ヒトを不安にさせる文字列を使おうとしないからな。例えば、放射能汚染されたヒト、ウランやプルトニウムのような放射性物質は体内に蓄積する――なのに、『体外に少しずつ排出される』と言い安心させる。間違っていないだろうが、生物学的半減期が何十年かも知らせず『尿やら便で少しずつ排出される』とだけ言う。死体が焼かれて汚染物質が大気中に漂っても恐怖しないのはそのせいかもしれんな。無知な人間がマリスを漂わせる。
【スプリング】:人間を浄化するにも資源とお金がかかる。差別をなくそうと言う奴は嘘つきの偽善者、操作されるのは可愛らしく無知な愛玩具、弄ぶのはお金も権力も持っているお姫様。無暗にIQを披露すると非難されるし、EIを考えない発言は他人を不愉快にする。だから、マリスのセカイはマリスでしかない。
【ルーク】:調和に寄せてだな…………クライテリオン、全員一致のようだぞ。
【クライテリオン】:『色は匂へど』。すべては時間が解決してくれる。我々は最後の競争を観ようじゃない。
</infomation>
『偽りの円卓は、自由劇と人形劇を見守るのみ』
CECOの連中は声を揃える。それが合図だったかのようにシェアリングは終了した。
短い話でもヒントは十二分らしい。
「どうだ? イェーガー。今の話しは小説一冊分の内容だ」
「熟読して二時間ほどの内容には思えませんね。わたしの頭の中は綺麗なものですよ」
とネクロスに返すわたしは、事実頭の中は綺麗だ。けれど情報を整理できない点を考えると汚い。完成体の情報収集能力は良い意味で狂っているし、話が早くて助かる。
そんなわけで、わたしは話に付いて行けなかったということ。とても腹立たしいけどこれが実力の差だ。ある程度の要点を伝えるだけで完成体連中の第六感は察する、残念ながらわたしはそんな連中ではない。
ほんと、恐ろしい連中。
「もう少し分かりやすくできなかったのですか? これじゃあ仲間外れにする精神攻撃です」
「過去と未来にヒントが置いてあるのだから、理解できずとも仕方ない」とオーガン。
「つまり、わたしの探しているXをあなた方は知っているってことでしょ。それと、シンフォニーと
どうして隠す? と、わたしは訊く。
CECO連中がヒトを安心させる文字列を扱うなら、言わない方が正解だろう。けれど、それを嫌う連中だからこそ、真実の文字列を扱っても抵抗はないはず。ヒトを不安にさせるのが大好きな特異人は表のメディアを利用すればセカイ中を不安だらけにしてしまう。
この空間には不可思議しかない。
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