不思議なブレイン

 わたし自身もXを追っているわけだし、Xを捕まえることが裏の政府とシンフォニーへの近道なのは間違いない。<殺される前に確保しろ>それがわたしとブレインのミッション。


「今のイヴィル・ハンティングは下位と中位で盛り上がり中か、それは邪魔できないわね」


「イェーガーは絶対に邪魔しないでよね。この世はお金で自由になれる。人間を操る最高のシステムのおかげでわたしは操作されなくて済む。まぁある意味で操作されているけど」


 聴いたわたしは可視化ヴィジュアリゼーション・スコープを使い、にこやかな面持ちで、


「もしも、イヴィル・ハンティングの標的が何の罪もない特異人と知ったら……」と訊く。


 わたしが気になった発言は疑いを晴らしてもらわなければならない。同じ企業の者には使いたくないが、わたしは死神としてマスコットの首にカマをかけた。


 裏の政府とシンフォニーが協力関係だと知っているのはわたしとブレインとCECOの連中だけ。裏の政府もしくはシンフォニーの構成員の中に、<操縦者>がいるかもしれない状況でマスコットの発言は黒。アルカナムにシンフォニーの構成員が潜んでいたわけだし、周りを信用できない今はわたしの可視化が最高の防衛システムになる。


「なんも思わないよ。わたしは生きるために殺すだけだもん――標的がイェーガーでもね」


「おっかな……その時は殺されないように殺さないといね」


 いつも通りマスコットは正常値、ブレインは緊張気味。白色が確認できれば問題ない。


「そうそう! イヴィル・ハンティングといえば、イェーガーチームの倍率が信用の薄い超高倍率になっているよ。まあ、あれだけのアドバンテージをもらっておきながら失敗したのはいただけないし、シュメルツ部隊での失敗も大っぴらになっちゃったからね。倍率の上昇は回避不可能、ということで物好きなヘンタイしか見向きしないらしいね」


 現状ブレインのランクは最低に位置している。そして教育者のわたしも落ちるところまで落ちそうな勢いらしい。


「ふふっ、上位のイェーガーブランドは衰退の一途をたどるか……。まあ仕方ないわね、わたしが無理にでもブレインに撃たせればよかったのだけど撃たせなかったからね」


<project>「その意識があったから、あなたが選ばれたのですよ」</project>


 とブレインに言われ、訳が分からないわたしは首を傾げた。にこにこするマスコットは、


「ふむふむ、ブレインはあれだね……不満が爆発しそうでもう一個のアレがアレしそうなんだね。でも我慢だよ、アレは今じゃない、今夜かな? それとも満月の夜?」


 ヘンタイマスコットをひっぱたきたくなったわたしだけど、ほっぺをつねる程度で我慢しておいた。

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