運命に抗える可能性

「まず、シンフォニーは組織だということを頭に入れておいてくれ。それでだ、戦争を操る者とシンフォニーの組織の者とシュメルツ部隊おまえたちを誘導した者は――同一人物かもしれん」


(なるほど、かなり大きな話になるのか)「その人物は完成体と言えますか……」


「そうかもしれぬ、正確には判断できんがな。秘密権力中枢わしたちが正確に言えることは――<シンフォニーと裏の政府シークレット・ガバメントは協力関係にあるということ>」


 聴いたわたしは驚愕のあまり言葉もでなかった。


 裏社会やイヴィル・ハンティングを仕切る裏の政府が素性も明かさない組織と協力していた。それをただ観ているだけの組織――秘密権力――は何のためにあるの。


 わたしは爺さんを睨みつけた。その直後に引き起こった突発的な頭痛のせいで、わたしの目つきは疑いの目つきではなく威嚇する目つきになっているはずだ。


「そんなに睨まんでくれ。秘密権力なんて大層な名前の組織を構成したところで、裏の政府にはまだ勝てんのだ。それに、シュメルツ部隊を誘導した者もシンフォニーのメンバーかもしれんし……つまりわしが言いたいのは、完成体にも上には上がいる」


「――ばかばかしい!」とわたしはテーブルを叩いて、「秘密権力はかなり大きい組織でしょ。そのコミュニティを利用して裏の政府シークレット・ガバメントやシンフォニーの連中を殺せばいいじゃない! 邪魔する奴らも殺して、裏社会を少しでも良くするのよ」


「そう熱くなるな、わしらの見ているセカイが裏社会だとしても、ただの虐殺なんぞ倫理的に許されないだろう……わしらには意識があるのだぞ。それに数の暴力なんぞで勝てる組織でもない、加えてシンフォニーの構成員すら未知だ。今は事を荒立てずイヴィル・ハンティングをこなすしかない」


 爺さんは困ったような顔でブレインを見る。ブレインは苦笑いで応答した。


(教育者がイェーガーでは裏社会から逃げたくなるだろう?)(いえいえ、もう慣れました)と、会話しているような気がしたわたしは、イライラしながら足を組んで、


「質問を変えます――CECOがやらせているエニグマ・ミッションはただの遊びってことですか? 金なんかのために冷静な判断力までも失ったということですか?」


「違うな。今のお前では到底理解できん話になる」


「はあ? 決めつけないで話してください」


<project>

「<運命に抗える可能性>――選ばれた者とその協力者を…………」

</project>


 と爺さんはそこで話すのを止めて、<何か>を見つめていた。


 わたしは爺さんの視線を辿る――


 そこにいた銃を構える人物を見て、わたしの知る男たちだと気づいた瞬間……トリガーが引かれ、二発の弾丸は爺さん目掛けて飛んでいた。

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