第5話 詰問 視点副騎士団

昼前

なし崩し的に始まった合戦は既に3度の突撃がかけられたにも関わらず決着がついていなかった。


魔王側はケンタウロス騎兵と魔王の馬廻りだけを丘の上に残し正面を固め、丘の左右から弓箭兵が雨の様に長弓を射てくる。


こちらのクロスボウ兵は射程と連射力の差で早々に射倒され機能していない。


指揮がしっかりしていれば、弓箭兵に突撃かけさせるなど手はあるのだが、諸将はバラバラに戦い、そして射倒されるか中央に辿りついても撃退され続けている。


どうやら戦死した王や戦場を離脱した王もいるらしい。


我々北方騎士団は最初に布陣した所々から全く動いていない。


まぁ前進しようにも、戦場が混み合い過ぎ前進出来ないのだが……。


4度目の突撃を退けられた時に敵に動きがあった。


魔王本陣に突っ立っていた2体のゴーレムが丘を駆け下り、魔王軍の陣を跳び越えて、退却する討伐軍に踊りこんだのだ。


聖神教団兵がすかさず前進し全軍の崩壊は防いだが、ゴーレムの1体が全身から可燃性の液体を噴き出し大爆発を起こして教団兵長は戦死。


その時既に諸王国軍も半分が離脱するか壊滅するかしていた。


残ったゴーレムはタイミング良く敵本陣に退却した。

魔族の魔導技術は、やはり人間を凌駕する。



突然、総大将が単騎、我々の陣を訪ねてきた。

敵陣が遠いとはいえ、総大将が護衛も連れぬとは豪胆なのか愚かなのか。

賭けをするなら後者に賭けるつもりだが……。


「北方騎士団長殿、何故戦わないのですか?」

到着早々閣下を詰問する。


「兵が渋滞しておる。前進など出来ぬ。」

ぶ然とした表情を取り繕いもせずに団長閣下が答える。


「武名で鳴らした北方騎士も腑抜けたもの。我と共に戦おうという勇気ある者は、おらぬのか?」

愚かな女が周りを見渡し挑発をする。

もちろん誰も動かない。

それを見た女は口汚く我らを罵る。


「そこまで言うなら、自らの兵のみで戦われるが良い。」

団長が怒りを噛み潰した声で告げる。

仮にも相手は総大将。

もし剣を抜く様なら止めねばならない。


「腰抜けめ!覚えておきなさい!」

捨て台詞を残し女は去った。


総大将は本陣へ戻り、決断したようだ。

その後聖神騎士団も含めた5度目の突撃が始まった。

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