第4話 力比べ 視点竜胆

時の声が聞こえ、敵軍の突撃が始まった。


初戦の矢合わせはこちらの圧勝。

クロスボウは強力だが、向こうが一射する間にこちらは最低でも三射はする。

四半刻もしないうちに、敵クロスボウ隊は霧散した。


そして今、敵は諸王国連合を前面に押したて突撃をしてくる。

もし、敵の指揮官が有能で我々を半包囲、もしくは左右から挟撃を持って擦り潰しに来たならば我々の負けだ。


だが、敵はゴブリン達に造らせた陣地に誘導され正面からのみ突撃してくる。

しかも突撃タイミングがバラバラだ。


「爺に伝令出すんだよ。弓兵が削り取るまで耐えるんだよ。」

使い番を呼び陛下の命を伝えた。


四半の旗に六を描いた伝令騎馬が走る。

竜人族の祖が徳川とかいう将が使っていた使い番の旗を流用したと伝えられている。

戦場での音声魔術は盗聴の可能性があるから、使用が難しいと聞いた。

魔術の原理は分からないので、そういう物だと理解するしかない。


陛下は輿に乗り戦況を見つめているが、何かを呟いている。

そして、その様子は敵からも見えているだろう。

数で勝り、魔王の首が手の届く位置にある。

敵将たる諸王達は突撃をするしかあるまい。

それが陛下の罠だと知らぬなら……。



2度、3度と波の様に敵の突撃が続く。

しかし、大半が弓兵の操る長弓の矢の餌食になり、辿り着いた者も前方に引いた陣に吸収され本陣には届かない。


本陣には陛下と100程の馬廻り衆、3000のケンタウロス騎兵に高機動ゴーレムが2体が時を待っている。


「竜胆、どうなんだよ」

陛下が私に問われる。

視線は高機動ゴーレムに向けらている。


「いつでも行けます」

サブロス、シロスの起動準備は出来ている。

本部で組み立てたシロスの方には弱冠不安が残ったが、戦場に投入するには多分問題ない。


「次を退けると同時に投入するんだよ。人間との力比べは、これからなんだよ」

取り急ぎ諸王国軍は退けつつある。


陛下の紫青の瞳が鈍く光った気がした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る