抜粋,ユレ・マルエ著『電話』1456/07/11発行

|七日

二区は公表されていない暗号化技術を用いてキーボードの種類を三十二種に抑えたと発表。しかし、製品化はされていない。


|十日

電話が盛況であったことを受け、一区は二区〜六区に、少なくとも中心部での電線と電話の配給は絶対とする締約を交わした。


|十七日

三区は二区と同じように暗号化技術を用いてさらに簡略化し、十七種のキーボードを持った電話の販売を決定した。


|二十日

六区は別の視点からアプローチを始めた。固定電話と接続できる形にした上でもう一つの独立したデバイスを発明した。これによって、もし電話の取れない状況があったとしても対応することができる。しかしそれを六区は十三台しか販売しなかった。


|二十一日

二区は新たな暗号化技術と六区との協力を用いて、キーボードの種類を十種類に、打ち込む桁を十七桁とした、独立デバイス付きの電話を発明。これが今では最もメジャーな電話となっている。


|四十六日

五区が新たに電話を発明。電線がなくとも接続できると銘打った商品を発表したが、これは特別許可類改善案に違反するため、停止させられた。


|五十日

二区は全ての区民に電話を贈呈すると発表した。また、電線の敷設もその年中に完成させるとも。


|五十二日

六区は全ての運送関係者、または独立した副都市で複数の店舗を持つ店に対して電話の独立デバイスを配給すると発表した。二区とシステムは異なり、運送業の会社一つに電話番号は集約され、従業員に番号を付与することによって、組織的な運用が可能になった。


|五十七日

二区の区長の声明「電話は声のみを送るものであって、それ以外の用途に使うことはできない」との喚起。


(中略)


 現在では様々な手段を用いてはいるものの、全ての区の都市に電話は普及しているし、七区にも電話の波が到来している。あと二年もすれば電話のない生活はあり得なくなっているだろう。


 シンパシーないしはシナジーの利用に関する全区共通の規制は未だ定まった形を持っていない。そのため、一刻も早い整備と、それまでにシナジーを利用した施設や機械がある場合はそれも規制の範囲内に含めるべきである。電話に関しても同様に、違法なシンパシー、シナジーの利用が解明された場合、いくら我々の生活が不便になったとしても規制は実行されるべきである。

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