ファースト新聞社,号外(1454/09/08)

・1面見出し

「前王の逝去」


・1面,挿入写真

(1区の元王の棺とその周りで悼み悲しむ人々と身辺兵が立ち、花束を添えている)


・1面,本文

 このニュースが我が新聞社に至ったのは今朝、皆がコーヒーを飲んでいた時であった。1人の放浪者と思しき者が門を叩きながら大声で叫んだ。「王が死んだってよ!」と。勿論、我々はこのような男の発言を考え無しに掲載したわけではなく、これはこの土地が1区となってから最大の危機である。その警鐘を鳴らしたのが彼であるから、不敬ながら序文とさせて頂く。


(中略)


 王の葬儀は取り急がれた。それぞれの関係者の代表、上級貴族による献花は、暴徒が懸念されたため早々に城内にて行われ、正午には城の門は閉ざされた。一般人の立ち入りは普段禁止されているが、シンパシーによる検査を経て見学を許される場合もあった。

 王の死因は未だ判明していないが、恐らく持病の肺の病が急速に進行したことによる死だと噂されている。


(中略)


 我々はこの王の後継は誰となるのかを考えた。王の子は2人の娘とされ、1人は留学しているとのこと。つまりこれまでの慣わしで進行するのであれば末娘に冠が渡されることとなる。しかし、それに異議を唱えたのが王の側近の家系であったニュサ家であり、関係者によれば、ニュサ家は彼女が区を統べる立場になる事に反対しており、後継に次期当主を充てようとしているらしい。


(中略)


 政治関係者(匿名希望)によれば、今後1区の情勢は大きくバランスを崩すことになるという。王に忠誠を誓っていたもの、もしくは王によって今まで行動を押さえていたものが動き出す。それによって貴族社会に打倒勢力が誕生し、今までのような1区の振る舞いは可能ではなくなると。それを防ぐためには次の王がそのような勢力に対してどう対応していくかが鍵になる。貴族の方々にはくれぐれも従者を目の下から離さないようにしてほしい。

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