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1区工業都市「ファイアーワーク」

 ノイズの発症が最初に確認された、工業区を内包する労働者を主体とした垂直型の工業都市。様々な会社が結託して管理していた。

 健康被害はノイズ発生まで確認されておらず良質な職場と見受けられ、定期的に行われる調査にも合格している。


|上層部

地上部の純鉱石生成工場群にて売買用、工業用に分けて加工する。

居住域も存在し、労働者や労働者の関係者が住むために必要な設備が整っている。

月に3回の補給や娯楽施設の建設が邁進され、観光客を迎えるツアーの入り口となっている。また、上層部から下部へ移動するためにはエレベーターを用いることが推奨されている。


|中層部

金を多く含んだ採掘域が存在し、労働者が完全にマニュアル化された労働を行なっている。居住域があるものの、それは身寄りの無い労働者に限られる。

6区によるツアー者の宿泊施設が建設されている途中であった。


|下層部

中層部、下層部にて掘削された鉱石を粗鉱生成工場群に投入し、粗鉱に加工した上でエレベーターを用いて上層部に運搬する。

ツアー参加者は工場に入ることはできない。


 ノイズ発生前は1区における重要な観光資源且つ最も巨大な工業区であったために人口が集中していた。ツアーはノイズ発生日の4日後に解消され、同時にファイアーワークにおける1区と6区の関係は取り消された。


 1455/07/14にノイズが発生したことを受け、殆どの会社がこの工業都市から撤退した。労働者が星の唸りと月光を同時に浴びたため、他よりノイズの進行が早かったのである。ノイズの発生原因が判明したため、工業都市「ファイアーワーク」は正式に1区から隔離された。

 バベルの調査員の1人であるドロローサが隔離後に調査したところ、数十人のノイズ感染者及び「アンカー社」に所属している労働者が住んでおり、不法に工場群を使用している。(ドロローサによる個人調査は後述)


 現在、金などの希少金属の生産は1区は3位となっている。7区に建前上新たな鉱脈を求め、本音としては監視の目が届かない場所で採掘をするために1区の会社が進出しているものの、難航している。

 ノイズの発生源ということもあってか陰謀論の的にされることが多いが、論拠のないことが証明されている。


|ドロローサによる個人調査

日時:1455/11/22

天候:晴れ

 「ファイアーワーク」へ辿り着いた。バベルのような薄い灰色の靄が散見され、視界は悪い。建物は劣化というより破壊されたような跡があり、補給車がそのまま放棄されている。この場合人間が住んでいることを考慮する。

 中層部から工場の動く音がするので覗こうとしたところ住民を発見。尋問したところ「アンカー社」という会社の職員らしく、前と同じように金を掘っているとのこと。

 今夜は新月であるので行動を続行する。工場に入るとやはり動いている。私のことに気づいた職員が歩み寄り、敵意を持ったまま私に詰め寄った。「自分らは上によって動いているから文句があるなら上に言ってくれ。1区の行政担当でないなら帰れ。」と。私はそのまま立ち去った。


日時:1455/11/23

天候:曇り

 下層部はより一層靄が濃く、地鳴りも聞こえるため早めに引き上げることにしたが、この場所の特異な所はファイアーワーク特有の規則的な掘り方が見当たらなかったことだ。沸騰石のように泡がそのままくり抜かれたかのようなただの穴であった。その点に関してはまた改めて調査が必要だと考える。

 6区のツアー会社は撤退しているというのは本当であったらしい。現に建物は中層部・上層部ともに放棄されている。上層部にはその「アンカー社」の社員の関係者が住んでいた。補給は郊外の貴族から密かに買っているとのことであり、「なぜそのような自身を磨耗させるような手段を取るのだ」と聞けば、「そうしなければならないから」と帰ってきた。曰く、労働している者こそ家を率い得るとのことで、拒否権がないらしい。1区にはそのような従い、率いる考え方は深く根付いているのだ。ただ、その価値観は後に遅れた物となるだろう。

 次の日には引き上げるつもりでいる。追加調査は少なくともノイズの感染が落ち着いて、月を寝かしつけてからになるだろう。それがいつになるかは分からないが。

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