献身メイド ミス・ルイーズ

 ニナを探し回っていた年若いメイドとは、その後すぐに合流できた。


 途方に暮れていた使用人に幼い主人が駆け寄るやいなや、おいおいと大きな声で泣きながら縋りついて離さない。


 その気持ちは痛いほど分かる。カロンは茶化さず黙っていた。水桶に隠れた生首の方はなにか言いたげだったが、こちらもやはり黙っていた。


「ルイーズ、ごめんね。急にいなくなって」

「おじょ、おじょ、お嬢様がご無事ならぁぁ、わたくし、わたくしぃ!」

「うんうん、落ち着いてね。一緒にお母様への言い訳を考えてほしいな」

「お嬢様ぁ! ごい、ご一緒に考えますともぉ……」


 顔から出る液体が全て出ている。


 まだ幼い主人が突然いなくなって、どれほど心配しただろうか。カロンはやはり黙っていた。(まったく、どちらが大人か分からんな)ピーコックのほうは辛抱たまらず呟いている。


「この人が迷子のわたしを見つけて、連れてきてくれたの」

「おせわ゙に゙ぃ゙! なりまじだぁ゙! どうお礼をしたらいいやら……どうしましょう、どうしましょう!」


 夜中でなくて本当によかった、とカロンは胸の内で呟いた。もしもそうだったら、周囲五軒は騒音で叩き起こされていただろう。


 と、ピーコックがボソボソと何やら伝えたがった。泣き声に阻まれながらもなんとか拾い取る。


「ええと……『レイ、ワ、イラン、ゴキゲンヨウサヨナラ』?」

「まあ、なんて謙虚な方! そんなこと仰らずに……」

「いえいえ、急いでいるんです!」


 嘘ではない。森から歩き通しでヘトヘト、一刻も早く眠りたかったし、何よりピーコックの我慢の限界が近づいていた。(なんでもいいからこの泣き虫を黙らせろ)言われずとも察せられる苛立ちが水桶から立ち上ってきている。


「ルイーズ、今日はもう遅いから」


 ニナがしぃ、と指を立てた。


「きっと、また来てくれるわ」


 ね? いたずらっぽく微笑む年下の女の子。カロンはたじろぎ、小さな声で首肯した。

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