第8話一時の癒やしと◼️◼️◼️前触れ

「よっ……陽介」

「こんばんはしかっち……そしてさよなら」


 そう言い出すと、陽介はどこからか、デザートイーグルを取り出すと、その銃口を俺に向ける。

 流石の驚きで思考が停止した俺は石のように体が固まってしまった。

なんとか声を出そうと、必死に頑張ってみる。


「あ?」


 一言発する事ができたが、少々ドスの効いた低音が溢れ落ちる。

 しかし……個人的にはモデルガンやエアガンを向けるのはとても危険なので良い子のみんなは真似しないように……って誰に向けてんだ。

 

「しかっちヘル⚪︎⚪︎グ知らない?」

 

 少々低すぎたのか、流石の陽介も少しビクッと体を浮かせた。

 

「知らない……なんかの本か何かか?」

「そうだよ〜と言っても昔のやつだけどね……しかっちは本とかテレビ見ないのか?」

「あいにく……そういうのは見ない」


 昔からそういうのは縁がなく、唯一知っているのは、頭があんぱんのヒーローと仮面をつけて悪と戦う物しか知らない。

 何度か、見ようとは思つたが、テレビなんて見れず、いつも屋根裏で難しい小説を読んでいた。

 そう言うと、陽介の顔がまるで、この世の者とは思えないといった感じの顔をしながら二、三歩後退りする。

 驚きすぎたのか、ずっと口をパクパクさせていた。

 いや……驚きすぎだろ。


「しかっち……お前……まさか……エヴァ⚪︎⚪︎⚪︎オン知らない?」

「……しらん」

「な……まさか……そんな人間がいる訳……」

「いるんだよ目の前に」

「あ、そっか〜あはは〜」


 この男……テンション高いパリピな奴だと、誰しも思う。

 しかし本性はドが着くほどのアニメやゲームが好きな男である。

 最初知った時、正直びっくりした。

 何せこんなにも容姿が整っている奴が……性格は癖が強いが。

 俺はそう言うのを見たりしない為、毎回俺と一緒にいる時、容赦無くボケてくる……いつも冷たい返しをしてしまうが、本心はとても和む。

 何も知らないからか、知らない物を知れると同時に陽介こいつの好きな物をしれるから……こいつらといると、安心できるから、和むんだと思う。

 だが、一つ疑問もある。

 陽介はいつも俺の目の前ではやってくれるんだが、一樹いつきがいる前では、アニメネタをしてこないんだよな……一度理由を聞いたんだが、はぐらかされてしまった。

 その時、いつもわかりやすい陽介だが、その時に限っては、わからなかった。


「そういや……何しにきたんだ、しかっち?」

「あ、えっと……これ直して欲しいんだが……」


 ついつい陽介ワールドに踏み入れて、本題を忘れていた。

 思い出した俺は、陽介に壊れたスマホを渡した。

 陽介が働いているこの店は修理もやっており、町ではなんでも売ってる修理もできる何でも屋……と巷ではちょっとした有名である。

 

「うわぁ……これ俺じゃ直せないよ……店長も今いないし」


 修理のほとんどはここの店長が直しているのだが、辺りを見渡しても陽介以外見当たらなかった。

 何でもその店長の修理能力は高く、どんなものも新品同様……いやそれ以上となるらしい。

 失敗すらなく、全て成功している為か、いつからか、周りからは「ドクター⚪︎の再現」っと呼ばれている。

 というか……なんだよドクター⚪︎の再現って……。


「そういや……店長は今どこに……」

「えっと……これ……」


 そぅぃぅと、陽介は片手を何か掴むような形にすると手首を回していた。

 その行動で俺は一瞬にして察し、同時に呆れていた。

 

「普通、バイト置いていくか?パチンコに……」

「いやぁ〜新台入ったらしくてさ……」


 まぁいつもの事だし、別にいいか……まぁもし今常連の人じゃなかったら、やばいだろうな。


「とりあえず……お前に預けるわ……店長帰ってきたら渡してくれ」

「あいよ〜」


 その日は陽介に携帯電話を預け、その場を去ると同時に一つ決意する。

 それは……いつか店長を殴ってしまおうと、固く握った拳を見つめる。

 そして俺は知るよしもなかった。

 僕が店を出た瞬間、三つ編みをした人物と制服の男に見られていた事で僕のこの変わらない地獄のような出来事を生み出され、その地獄から救ってくれるなんて知るよしはない。

 

 


 


 

 



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