第7話一時の癒やしその2

 あの後学校を出て街に向かっていく。

 今もなお。片目は治っておらず、片目だけ暗くなっていた。

 正直片目だけで歩くのは、慣れないと手こずる。

 しばらくゆっくり歩いていると住宅地からビルや商店が多くなっており、進むにつれて人が多くなっていた。

 スーツ姿のサラリーマンや学校帰りに寄り道をしている女子高校生達。

 他にも道端にメイド喫茶という女の子がメイド服に着替えて、お客にご奉仕するという俺にとってはいかがわしいそうなお店だ。

 その前にメイドが店の宣伝の為、びらを通りすぎていく人に配っていた。

 なかなかもらってくれず、立ちっぱなしなのか、メイドの足は震えていた。

 貰っていく人はいるが、半分はそういう類が好きな奴と貰っても見えない所で捨てている奴。

 あいにく俺はそういうのにはあまり興味がない。

 時々思う事が合う何が楽しいのか。

 だってメイドなんて所詮幻想の塊、それなのにガチ恋して堕としに行ったり、告白したり、訳がわからない。


「……これだから人間クズ共は……」


 ボソッと口から漏れてしまい咄嗟に片手で自分の口を塞ぐ。

 幸い人は周りにいなく、聞かれていなかった。

 別に聞かれててもいいのだが、これだけで喧嘩をふっかけてくる輩がいる為、一応警戒していた。

 気を取り直し、素通りし、人混みに紛れ、散策していると、スクランブル交差点のような場所に着くと、街頭テレビからニュースが流れてくる。

 内容は希望の島「オワシス」にて、モノレールの脱線事故が起きたというちょっと珍しい事件が起きていた。

 ちなみにオワシスとは、数年前、立花グループが建設会社「椿井建設」に依頼し、造らせたいって仕舞えば、一つの都市である。

 そこでは、非合法のカジノや闇格闘技から、合法なものが揃った建造物があり、そこで皆一攫千金のチャンスを勝ち取る為、毎日人が来る。

 他にも住宅街、ホテル街や商店街と計六区の六角系の巨大な島となっている。


「事故の原因は現在判明しておらず、唯一わかっているのは、機械の故障では、と聞かされており……」


 最新鋭の機械でも故障が起きるって……本当珍しい事があるものだ。

 そのまま歩き始め、スクランブル交差点を通り抜け、ビル街に入り込む。

 若干人通りが減り、少し息苦しくなくなった。

 昔から、人が多い場所に行くと、気持ち息苦しくなる。

 まぁ抜ければすぐ治るから、あまり気にしていないが……。

 そうこうしているうちに目的の場所へと着く。


「……治るといいなぁ」


 そう言い、壊れたスマホを手に持ち、目の前にある扉を開ける。

 すると、開けたと同時に少し激しめの音楽が鼓膜を刺激する。


「うるっさ」


 流石にうるさすぎた為もっていたイヤホンを耳に装着する。

 さっきよりマシになり、ゆっくり店内を見渡す。

 店内は結構広く、木材風の壁と床を使っており、辺りは携帯やアクセサリー、果ては、色々な商品がある。

 店長の趣味なのか商品は全部整理されているが、携帯があるかと思うとゲームやCDがあり、その隣は女性に人気なコスメとかになっている。

 いつ来てもこの店はよくわからない。

店内BGMも店長の好みなのか、絶対に店内に合わなく、違和感を覚えている。

 少し店内を見るが店員がいなかった。


「あれ?……いないのかな……」

 

 ちょっとすぐに直して欲しかった俺は、入ってきて、すぐ隣に階段に向かう。

 この店は上の階に住んでおり、いつもここに来て人がいなかったら、ここから叫んで呼んでいるのだ。

 

「すみませーん」

「はーい、いらっしゃいしかっち〜」

「え」


 上の階に叫ぶと、なんと真後ろから返事が返ってきた。

 そのまま反射的に振り返ると、そこには両手にゴム手袋をした店員こと陽月ひつき 洋介ようすけが仁王立ちで構えていた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る