第7話 大きな扉の前でご飯を食べる
ブーブー、ブーブー、揺すられて目を覚ます。
ポケットの中で揺れていたスマホを取り出す。
「お父さんからだ!!」
「あら、ちょうどよかったね」
声がした方を見るとおばあちゃんとおじいちゃんがとてもとても大きな扉の前に立っていた。
「起こすかどうするか悩んどったが、本当にちょうどよかったわい」
「少し休憩しようかね。準備するからその間に電話にお出」
「うん」
レジャーシートをどこからか出してごそごそしているおじいちゃんとおばあちゃんを見ながら、スマホの着信履歴を開いてお父さんにかけ直す。
「入れっぱなしにしてたレジャーシート出したけど優斗ちゃんには座りにくいかしら」
「座布団ならあるが、椅子はあったかの」
「昔使ってたキャンプセットがあったはずだけど、どこかしら」
『もしもし、優斗か』
「あ、お父さん。お仕事なのに電話してごめんね」
『ああ、出れなくてすまんな。それでどうした』
「あのね、ダンジョンの穴に落ちたの」
ガンとどこかにぶつけたような凄い音がスマホから聞こえビックリして一瞬耳から離してしまった。
言葉にならない声が聞こえてくる。
「お父さん大丈夫」
『だ、大丈夫。いや大丈夫じゃない。ああそうじゃない。ダンジョンが落ちたのか?』
「ちょっと代われるか?」
「え、うん?はい」
「もしもし、優斗君のお父さんですか」
『あ、はい。先生ですか?』
「いえ、探究者をしている田中 小鉄(たなか こてつ)という者です」
『あ、初めまして。探究者ですか?』
「ええ、探究者です。優斗君からの救難信号を受け取りまして、発見して今外へと向かっているところです」
『本当ですか。ありがとうございます。それで、あの』
「初めてのことでどうしたらいいか、わからないかと思いますので、今からいうことをメモに取ることはできますか」
『ちょ、ちょっと待ってください。はい、大丈夫です、お願いします』
「優斗ちゃん。準備できたからこちらへおいで」
いつも間にか置かれていたソファーに小鉄さんが座らせてくれる。
小鉄さんがお父さんと電話をしながら別のスマホを扱い始めた。
「公園は封鎖されて入れないと思うので、今からお伝えすることを市役所の探究者協会に照会して担当者の指示に従ってください。私の探索者IDが7910564で案件番号がks-230816054です」
『ありがとうございます。確認してみます。優斗をお願いします』
「ええ、大丈夫ですよ。もう出口の近くですから」
「優斗君にかわり」
小鉄さんからスマホを受け取り、画面を見たら通話が切れていた。
「すまん、代ろうとしたが、その前に切れた」
「大丈夫です、心配かけちゃったから」
小鉄さんが優しく頭を撫でてくれる。
グーと小鉄さんのお腹の音が鳴り、ビックリしてしまう。
「お昼を食べ損ねてな」
「僕のせいで、ごめんなさい」
「そうじゃない、気にするな」
小鉄さんがしまったという顔をして、またごめんなさいと謝ってしまった。
おばあちゃんが「しょうがないわね、何かあったかしら」と手を動かし始める。
「肉と野菜ならあるぞ」
おじいちゃんがテーブルの上にお肉と見たことが無い野菜?を出す。
大きな扉の前でご飯を食べることになったみたいです
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