第5話 モンスターがいない綺麗な洞窟の中、僕は
「さっきは巻き込むなと言わんばかりの態度だったが」
おじいちゃんのツッコミに小鉄さんがキョロキョロし始める。
「お、俺が来てからも大分時間がたったから、どこまで広がったか、わかんねぇじゃねえか。戻るより進んだほうが確実だろ」
「確かにねぇ、どちらが近いかわからないわね」
「え、外に行かないの?」
「ああ、一番下まで行くとな、地上に戻れるようになっとるんだ」
「そうと決まれば行きましょうか」
おばあちゃんが僕の手を取り歩き始めるが、足に力が入らず座り込んでしまった。
「おい、10歳かそこらのガキの体力考えろよ」
呆れながら小鉄さんが優しく抱っこしてくれる。
「抱っこなら儂が、」
「後だ、後。じじいはチャッチャと働け」
「久しぶりの孫との語らいが・・・」
「じじいの孫はたしか高校生だろ。人様の子供に手を出すなよ」
「最近は家に来んどころか、電話もしてくれん」
「ど、ドンマイ。そういえば優斗は荷物は無いのか?」
言われてスマホも持っていないことに気付き、小さな穴の方をみる。
「荷物はあそこか?」
「たぶん・・・」
「これで全部かい?」
おばあちゃんが僕のにそっくりなバッグとスマホを持っていた。
「え?僕の?どうして?」
「取って来たのよ。」
「???ずっと、一緒にいたのに、どうやって?」
「そこまで行ってね。穴の中にあったもの全部あるはずだけど、確認をおし」
言われたままスマホを受け取りバッグの中を見る
「ありがとう、大丈夫」
「じゃあ行こうかね」
僕は抱っこされたままおじいちゃとおばあちゃんに挟まれる感じで歩き始める
さっきほどではないが、なんだか空気が重たくなったみたいで、近くか遠くかわからない不思議な音が強さを増したような気がする。
けど怖い感じはもうしない。みんながいてくれるからかな。すごく安心できる感じがする。
歩き始めてから大して変わらない洞窟の中なんだと思うけど、綺麗な夜空の空中散歩みたいで楽しい。
抱っこされているからかふわふわした感じもする。
「モンスターが全然いないね?」
「ああ、優斗に悪さするようなモンスターなんぞおらんから安心しろ」
おじいちゃんに頭を撫でられる。
「そうじゃ、頑張った優斗にご褒美をあげんとな」
「お菓子ならさっき貰ったよ?」
口を開けてさっき貰った飴がまだあることを教える。
「おい、やめろ。それこそ余計なことだろ」
小鉄さんが一生懸命に止めようとしているがおじいちゃんは聞いていないようだ。
「どうせ、儂には誤差のようなもんじゃ。全部優斗にやろう」
「あら、それじゃあ。私もかわいい孫にプレゼントしようかね」
途端に風邪をひいた時みたいに体が熱くなりぼぉとした感じになった。
周りがぼやっとして、ふわっとした感じになる。小鉄さんに抱っこされている感覚も朧気になる。
本当に空中に浮いている感じ。最初は本当に風邪をひいたかなって嫌な感じがしたけど、慣れてくるとなんだか気持ちい。
「ほら、見ろ。どうすんだ」
小鉄さんがギュッと抱きしめる。
「まだ時間はかかる。疲れただろうから、しばらくおやすみ」
飛んでいかない、しっかりつかまえてくれている安心感とふわっとした不思議な感じだけが残る
モンスターがいない綺麗な洞窟の中、僕は目を閉じた。
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