第4話 冒険が始まる

小鉄さんが顔に手を当て肩を落としてうなだれる


「そうか、綺麗か」

おばあちゃんが楽しそうに、嬉しそうな顔をして、おじいちゃんが嬉しそうに頭を撫でてくる。


「おい、やめろよ」

小鉄さんが諦めたような顔をしながら手を差し出してくる。

「何のことだい?」

「この坊主が決めることだろ」

おばあちゃんが揶揄うような顔で小鉄さんを見て、おじいちゃんは僕の頭をポンポンと叩く。


頭を撫でられて初めて違和感を感じた。おばあちゃんと小鉄さんをジッと見つめる。

やっぱり何か変な気がする。

「ねぇ、何かしてる?」

僕の問いかけにみんながビックリしている。

「見えるのか?」

「ううん、何かわからないけど、何か変」

何が見えるんだろ?

「モンスターがいると怖いだろ?危ないし」

「そうじゃ、煩くされると落ち着いて話もできんからな。大人しくさせとるだけじゃ」

3人の隙間から後ろを覗いてみる。

前を囲むように立っていたから気付かなかったけど、向こう側からとても大きな猿が近づいてきていたけど奥の法へ飛んで戻っていった。

「魔法?」

「手で払うだけで事足りるし、魔法は面倒じゃからのう。使っとらんよ」


「さて、坊主も見つけたことだし帰るか」

おじいちゃんが手を引いて歩き出す。


「いや、待て待て。ここはどうすんだよ。公園の真ん中に風船型なんか放置できないだろ」

「そうねぇ、危ないわねぇ」

「危ないの?」

「おお、そうじゃった。役所に電話せんとな」

「それはやった。入る前に九洲のダンジョン課に確認したら何の連絡も来てないっていわれてな」

小鉄さんがジト目で2人を睨む。


「公園で遊べなくなるの?」

寂しくて泣きそうになる。

「そうねぇ、ダンジョンがなくなるか落ち着くまでは公園に入れなくなると思うわ」

おばあちゃんが頬に手を当て困ったような顔をする。

「遊べないのイヤだ。ダンジョン無くしちゃダメなの?」

「無くせんこともないが、のう」

おじいちゃんが困ったような顔でおばあちゃんを見る。

おばあちゃんが小鉄さんを見つめ一言、「お願いね」

「何で俺一人?」

「事足りるじゃろ?」

「そうよ。この子を連れて帰ってあげないといけないでしょ」


「小鉄さん、どこか行くの?」

「なんで、お前だけ名前で呼んでもらえるんじゃ」

「そうよ、何で?」

「???桃さん?」

「まぁ、何?」

おばあちゃんに嬉しそうにギュッと抱き着かれる

「桃まで名前呼び!?儂は?」

「陣さん?」

「違う!なんで陣なんじゃ」

膝から崩れ落ち地面に手をつく。おばあちゃんと小鉄さんが噴き出す。

「え?名前知らない・・・」

「何で2人の名前は知っとるんじゃ?」

「掲示板に書いてあったから?」


「善治、綱井 善治(つない ぜんじ)じゃ」

「ぜ、ぜんじさん?」

不安になりながらも名前を呼ぶ。


「おぉ、なんじゃ?飴でも食べるか?」

嬉しそうにするおじいちゃんがどこからか取り出した黒糖飴を渡してくる。

「う、うん。ありがとう」

おばあちゃんが慌てて何かを取り出す。

「ま、丸ぼうろもお食べ」

「あ、ありがとう」

「ちゃんとお礼を言えるってえらいねぇ」

おばあちゃんに頭を撫でられる。


「話がそれてるって」

「まだおったんか。さっさと逝け」

「だから、何で俺一人なんだ。何か漢字も違った気がするし」

「気のせいじゃ」

小鉄さんが僕をみる

「優斗?ダンジョン綺麗だろ?もっと見るか?おにいさんと冒険行こうぜ」

「え?もっとダンジョン見れるの?冒険行く!!」


「よし!」小鉄さんがガッツポーズをする「行こうぜ」


冒険が始まるみたいです。

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