第2話 来てくれた

助けが来る!!

心に余裕ができ、喉がカラカラなことに気付き、水筒のお茶を飲む。

安心したら周りの音が聞こえてき始めた。


大きな何かが地面を踏みしめ歩く音。犬や猫とは違う明らかに恐ろしいものだと感じられるうなり声。

穴の先を見ると時折、影が差す。


穴の入口よりまだ先だと思うが声を聞き、影が差す度に安心感と余裕は消え恐怖が押し寄せてくる。


無意識に逃避するための何かを探し周りを見る。

いつの間に手元から落ちていたスマホを取るがまだ着信は無い。


桃さんのことを思い出し掲示板を開くと数分前の書き込みが目に入る。

桃『見つけたよダンジョンの入口。通知送っといたからね。』

桃『坊はいるかい?』

小鉄『坊って呼ぶんじゃない。通知は確認した。さっき陣からもデータを貰って向かっているところだ』

桃『相変わらず愚図だねぇ』

「いるよ」

小鉄『うるさいよ。予定外のことなんだから仕方ないだろ』

桃『おや?お子は男の子かい?』

「え?うん、男だよ?」

小鉄『ああ、さっきの"坊"はおまえのことじゃなくて俺のことだ』

小鉄『そういえばお前の名前は?』

「優斗」

陣『優斗か、とりあえず、登録しといた』

桃『入ってみたが厄介だね。いつ開いたかはわからないが、広がるのが速そうだよ』

小鉄『ばばあが厄介っていうってことは相当だな』

優斗「来れないの?ダメなの?」

桃『このくらいなら大丈夫さ。すぐ見つけてあげるよ』

優斗「ありがとう」

桃『集中するから落ちるよ。何かあたら直で頼むよ』


本当のことかはわからない。だけど誰かが来てくれる、だれかが傍にいるかもしれないと思えることが心強いということを初めて知った。


余裕が出てくるとまた周りの音が気になり始める。

さっきまでとは違う何かを威嚇する声と何処かへ向かい遠ざかっていく音がしている。


来てくれた?と期待が膨らむ。

助けに来てくれた人が酷い目に合うかもしれないということに気付いてしまう。

何も知らない自分でも、その姿を実際に見ていなくてもとても危険な存在だと直感でわかる。

”ごめんなさい”心から出てきた言葉を呟いていた。


何かが聞こえた気がした。何かはわからない。

できるだけ何も聞こえないようにしていたが、耳を澄ましてみる。

初めに聞いた恐怖を感じる声でも、先ほどの何かを威嚇する声でもなく、抗おうとするうなり声が聞こえる。


「確かにこの辺のはずなんだけど、気配が希薄すぎてわかりにくいねぇ」


踏みしめる音ではなく、何かを叩きつけるような明らかに異質な音が聞こえる。


「坊や、いるかい?いるなら返事をおし」


来てくれた!!


光が差し込んだような気がした。

「いるよ~ここだよ~」

口が乾き、カラカラの喉で一生懸命声を出し穴の外へと進みだす。


そこに居たのは恐竜の鼻頭を鷲掴みし歩く、着物を着たとても綺麗なおばあちゃんだった。

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