夏休み、学校帰りに遊びに行ったら穴に落ちた話

親ばかなパパ

第1話 穴なんてなかったのに

8月16日、お盆休みが終わり親が2人とも仕事のため荒木 優斗(あらき ゆうと)は学校で母が用意してくれたお弁当を食べていた時、連絡用にと持たされたスマホに遊びの誘いが友達からかかってきた。


家族のLINEに遊びに行っていいか確認を取り、許可が貰えたので先生に早帰りの報告をしてから帰路につく。


待ち合わせは学校と自宅の間にある割と大きな公園にあるアスレチック、花壇の中の道を抜け木々の中の小道を抜ける近道を通る。


公園で遊ぶときによく通る木々に囲まれた道を半ば過ぎた頃、優斗は浮遊感に襲われる。


光が遠ざかり暗い暗い穴の中へと落ちていく、長い間かもしれない、あっという間だったかもしれない地底へと落ちていく。


子供なりにダメだと感じていたのに転んで尻もちをついたくらいの衝撃だった。

何が起きたかわからないまま視界に入ったのは明らかに異質な作りの洞窟。


いつからかは知らないけど、生まれたときにはダンジョンが当たり前の世界だった。

お留守番をしてる時に自分のスマホで見た動画や写真で、そこがダンジョンだと直ぐに理解できた。

動画の中で聞く夢物語、気になりいくつかの掲示板などを見たこともあり、とても危険な場所だということも知っている。

だけど、そこに入ったら何をしたらいいのかがわからない。

大好きなお父さんとお母さんにまた会いたい。生きて帰りたいと願う。


周りを見る。


出来たばかりのダンジョンはモンスターの発生まで時間があるとお母さんとみたテレビで言っていた。


落ちた場所から動いていないのに出口が見当たらない。

上を見ても洞窟の壁があるだけ。


再度、周りを見る。


今まで無かった黒い靄が視界に入る。それがとても危険なものだと直感し目を背ける。


そむけた先、少し距離がありハッキリとわからないが壁に小さな穴があるように見えた。


一縷の望みで走り出す。


確かに穴があった。自分がかがんでやっと入れるほどの穴に滑り込むように入る、

自分の身の丈より少し深いくらいの穴の一番奥までたどり着き息が漏れる。


助かったわけではないと何となく理解しながらも、さっきよりもましだと期待できる状態。

あのままだったら為すすべもなく死んでいただろう。


足元を見ると滑り込んだ時に引っ掛けたのかバッグの中身が散らばっていた。


スマホに気付き父に電話するが出ない、母に電話するが出ない。

テレビで緊急連絡先と電話番号が出ていたのを思い出したが、番号がわからない。

アプリを開き検索する。何度か見たことがある掲示板が表示され、助けてほしいと書き込みをするが『釣り乙』などの返信ばかり、同様の掲示板で書き込みをするが同じような反応ばかり、心配する書き込みもされるが、どうしたらいいか尋ねても明確な答えが返ってこない。


涙やら鼻水やらで大変なことになりながら検索と書き込みを続けていた時、今までと違った反応が返ってきた。


小鉄『助けてってどうした?』

「ダンジョンに落ちた」

小鉄『落ちたって?ダンジョンにか?』

「テレビでやってたのを見たことある。出来たばっかりのダンジョンだと思う」

陣『狭間に落ちたのか』

小鉄『自分がどこにいるかわかるか?』

「洞窟の中」

小鉄『そうじゃない。場所だよ。場所。住所とか』

「学校の近くの公園」

小鉄『どこの学校だよ』

「九洲(ここのす)小学校」

陣『遠いな』

小鉄『もしかして、お前小学生か?』

「うん、三年生」

小鉄『はぁ?出来たばかりのダンジョンって言っても落ちて大分時間がたってるだろ?よく生きてたな』

「うん、壁の下のほうに穴があった」

小鉄『とりあえず学校に今向かっているが、公園といっても、どの公園かも正確な場所もわからねうぇ。もう少し詳しく教えてくれ』

「学校の近くの大きな公園」

陣『それは今調べている。さすがに深度までは無理だが、もう少しで特定できる』

小鉄『陣、助かる。わかったら送ってくれ』

桃『おや、今来たら大変なことになっているねぇ。それも家の近所かい』

「近くに住んでるの?」

桃『大きな公園って、遊歩道や広いアスレチックがあるとこかい?』

「うん、アスレチックの森の中の道」

桃『安心をおし。すぐ行ってあげるよ』

「ありがとう」


親からの折り返しは無いまま不安でしかたなかったが、希望が見えた気がした。

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