第6話 風情のある夏の騒音 後編

 「好奇心は猫をも殺すというのは元々私達魔法使いから生まれたものだ。魔法使いはよく猫と一緒に居ることが多いだろう?黒猫とかな。私達はそいつ等をただの道具としか見ていない。実験体だ。私達はそいつ等を使ってこうしたらどうなるのだろう……とかの好奇心を安全に解消しているんだ。ただの一般人は猫が自分達の好奇心に負けて死んでいっていると勘違いしたんだろうな。猫には好奇心とは何か分かって居ない。分かるわけもない。」


「猫を道具としか見ていないのか……ここはなんの道具でも売ってるよろず屋だが猫だけは売って無いね。」


「ふふっ、殺しちまったか?居たんだろう?猫が。」


「何故そう思うんだ?」


僕はいきなりの事に少し困惑したが冷静に言った。


「カマをかけたんだが……当たったみたいだな。」


しまった!まんまと嵌められた!


「あぁ居たさ。だが殺してはいない。」


「信用出来ないな。まぁどっちでも良いんだが……」


「そろそろ客として振る舞ったらどうだい。僕はお前を客として見ないがな。」


「そうだな。日が暮れてしまう。」


魔法使いは店を物色し始めた。

床に様々な商品が飛散する。

どこまでも迷惑な奴だ。


「これにする。」


「それは……ただの本じゃないか。良いのかい?魔導書や魔道具じゃなくて……」


「魔法には想像力が必須なんでな。本を読んでそれを高めるんだよ。それに……別世界の本って言うのも気になるしな。」


「じゃあそれを買うんだね?」


「あぁ、いくらだ?」


「いや……代金はもう頂いたよ。」


そう言うと魔法使いは最初は疑問の顔をしたがやがて納得したような顔をし、帰っていった。

このよろず屋は他の店とは違って、代金が通貨ではない。

じゃあ何かと言うと、輪だ。

客が道具を買うと言ったらその時点で、買うと売るの輪が出来る。

売買の輪だ。

僕はそれを代金としてもらっている。

世界は、数多の輪でできている。

それを作り、集めるとどうなるか……いずれこの無限に続くの輪でできている呪いも解けるかも知れない。

その僅かな可能性にかけて僕は輪を集めている。

魔法使いが帰って数分すると、再び騒音が戻ってきた。

その騒音が夏だと言うことを思い出させてきた。

湿度が高い空気が店を突き抜ける。

商品がカビてしまわないように注意しないとな……

後、魔法使いが散らかしていった道具の整理も……

とりあえず一旦休憩を挟もう。

休憩中、ふと窓を見ると、北東に大きな入道雲ができているのが見えた。

今日は蝉とはまた違う風情のある夏の騒音が聞けそうだな。







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