第5話 風情のある夏の騒音 前編
夏と言えば蝉、西瓜、花火等色々なものがある。
僕は花火は実際に見たことはないが漢字からして美しいものなのだろう。
僕は四季の中では夏が好きだ。
ジメジメしていて暑いがそれ以上に風情を感じるものが多くある。
例えば、店の窓にあるガラスに短冊がついている風鈴と呼ばれるもの、これは風が吹くと音が鳴り、気持ち的に涼しさを出してくれる暑い夏ならではの風情を感じるものだ。
暑い店内で1人、夏の魅力について心の中で語る。
少しでも暑さから気を紛らわせる為だ。
今日はまったくと言っていいほど風が吹かない。
お陰で風鈴も鳴らない。
このままだと店が燃えてしまうんではないか……
無論、そんな事は起こり得ないが……
こうも暑いと流石に蝉も五月蝿く感じてきた。
いくら風情があっても大量の蝉が一斉に鳴いていると騒音でしか無いのだ。
いっその事全部追い払ってしまおうか……
そう思った刹那、森で爆発が起きた。
この時、今日初めて風鈴が鳴った。
「痛いな……ちょっと火力を間違えてしまったな……やっぱり火力が全てじゃないんだな。」
爆発地の辺りから人間らしき声がした。
まだ土煙が舞っていて姿はよく見えない。
「というかここ、何処なんだ?見慣れない場所だな。おや?あそこに家がある。行ってみるか……」
ようやく土煙が晴れて姿が見えるようになった。
あれは……魔法使いか?
そこには、白色の長い髪をした如何にも魔法使いといった少女が居た。
「凄く古くて小さい家だ。こんな所に誰か住んでたら驚きだな。」
少女は店の目の前で言った。
わざわざ口に出して言う必要は無いんじゃないかと僕は思った。
「とりあえず入ってみるか……」
少女はドアを開けて店内に入って来た。
「いらっしゃい。」
一応僕は挨拶をしておく事にした。
すると、少女は少し驚いた表情をした後、すぐに表情を戻し言った。
「ここは何処なんだ?」
「ここは見ての通り店だよ。帰りたいんだったらあの森を真っ直ぐ進んだら良い。」
僕は少女の質問に答えた。
この少女に敬語を使う必要は無い。
そもそも敬語とは相手に敬意を表すために使う言葉遣いなのだ。
今の僕はこの少女に敬意なんてものは1ミリも抱いていない。
「そうか……店か……折角だし何か買っていくか……」
「僕としては店を爆破される前に出ていって欲しいんだが……この凄く古くて小さい店には良い物は何も売ってないんじゃないか?」
「魔法使いって言うのは好奇心旺盛なんだ。だからこの凄く古くて小さい店に何が売っているのか気になってな。」
「好奇心は猫をも殺すって言うが……」
「1つ教えてやろう。」
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