第19話 とりあえずここで終わり。

鍵はパティに開けてもらったんです。なんて言っている暇はない。


どういうこと?ケネス様が男性をお好きでないなら、ここにいる意味がない!


「コーデリア様……今のお話を聞いていらっしゃったのですか?」


「ええ、聞いていました。ケリーとアレンを私にあてがうとかなんとか。ケリーとアレンはケネス様の恋人ではないのですか?」


「は?そんなわけないだろう!男同士など気持ち悪い!」


はぁ?何を言ってんだ、このすっとこどっこいケネスめ!お前が男が好きだって言ってたから、こっちはここにいてやったんだよ!そうじゃなければとっととおさらばしてんだよ!


「申し訳ございません。コーデリア様、まさか聞かれているとは」


平謝りするジュードは、悪くない!悪いのはケネスだ!たとえその肩にのる精霊が土下座して泣いても許してやんない!


「つまり、ケネス様は同性愛者ではなく、私に適当な男をあてがって子供を作らせようとしていた…ってわけですね?私をなんだと思っているんですか⁉」


「女のできることなど、子供を産むことだけだろう!」


「なんてこと!あなたのおなかを治すんじゃなかった!」


《もとの状態に戻す?》

「良いわね!パティやっちゃって!」


途端にケネス様の顔は真っ青になる。さらに前かがみだ!


「ぐぅ――ぐぐぐう」

そして慌ててトイレに行くケネス様。ざまーみろ!


部屋に残ったのは私とジュード。ジュードの視線は私にくぎ付けだ


「コーデリア様……どなたとお話になったのですか?パティとは?」


「わたくしの精霊の名前です」


「なんと!精霊とお話が?」


「ええ、私の精霊は序列一位ですから」


「一位⁉他国にもそんな方はいない!いいえ、きっと嘘ではないのでしょうね。先ほどの趣味の話といい、今までの経緯といい得心いたしました」


ジュードが深く首を垂れる。

ここはおいしいご飯があるけれどBLはないし、男をあてがわれるだけなら、さっさと他国へと行きましょう。


「コーデリア様……もしかして男性同士の恋愛の興味が?」


頭を上げたジュードの目がキランと光っているわ。策士の顔。そうでしょうね。彼の精霊が持つ加護は計略。精霊もこんな状況なのに悪い顔をしているわ。パティにもひるんでないのが素晴らしいわね。


「そうね。だから我慢してここにいようと思ったの。でもないならもう良いわ。ここからいなくなるけど、追いかけないでね?」


ジュードの口の端が持ち上がった。悪い顔ね。やっぱりSね。


「古来より禁断の恋を描き、趣味とする乙女がいることは存じ上げております。コーデリア様も同じご趣味というわけですね」


なんと!やはりこの世界にも禁断の世界があったとは!そうだよね。やはりBLは世界を超えて愛されるもの!至宝のお宝だもの!


「私はケネス様をお慕いしています。ご協力していただけないでしょうか?」


「え……嘘……ほんとうに?」


「私が嘘をついているというなら、殺しても良いですよ?それほどまでに私はケネス様を愛しているのです。ちなみにコーデリア様の精霊の加護は?」


「加護は万能です。パティは序列一位の精霊だから」


「――――!ほ――ほほう、それはなんと素晴らしい!」


「あ……もしよければケネス様をジュードに惚れさせましょうか?」


「い――いやいや、その、ゴホン、恋は自分で手に入れるものでしょう?」


なんだかジュードが焦ってるみたい。なにかしら?その理由は分からないけど、確かに愛は自分で手に入れるものよね。納得するわ。めちゃくちゃ悪い顔してるし、きっとケネス様を手に入れる策略を練っているのね?


「どうか、私とケネス様の恋を応援するために、ここに残っていただけませんか?」


つまり生BLを見るチャンスはあるわけだ。


「アレンの食事は美味しかったでしょう?明日は食卓に蟹料理が並びますよ」


まじか、カニ食べたい。しかも極上の腕前のアレンの作ったカニ料理。食べたいに決まっている。


「私にあてがう男をなくしてくれる?」

「もちろんですとも!」


ジュードが破顔する。なんとなく怪しいけど、でも条件としては悪くない。


《コーデリアは単純なんだから》


パティのあきれた声は無視して、私はここに残ることとした。


男性同士の恋愛を見るために。

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ご馳走様です、旦那様‼︎ 〜嫁いだら旦那様は同性愛者でした。でも問題ありません。むしろご褒美です!旦那様と恋人の愛を応援します!〜 清水柚木 @yuzuki_shimizu

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