第14話 彼女のことを知るべきだろう

痛くて、苦しくて、死ぬかと思った。さすがに誤魔化せないと思ったのでジュードを頼った。


医者が言うには食中毒。

朝食の内容を伝えてると、料理長はそんなものは作っていないと言う。配膳したものもそんな料理は知らないと言う始末だ。しかもジュードに『なぜ、疑問に思わずそんなものを食った』と怒られた。


厄介な食中毒で医者の薬もなかなか効かず苦しんでいたら、ふわっと温かい何かに包まれた。すると痛んでいた腹がすっきりと治った。どうしたのかと思っていたら、契約精霊の声が聞こえた。


「コーデリアノセイレイ、ナオシタ」


そうだったのか、聞いていなかったが、コーデリアは医療系の加護をもつ精霊と契約していたのかと納得した。


私の治療をしてくれたのかと、こんな夫なのに、と反省していたら、ジュードから更に衝撃的なことを聞かされた。


どうやら彼女の言っていたことは本当で、侍女達はコーデリアの持ってきた洋服を切り裂き、更に陰湿ないじめをしていたと言う。あまりにも頭に来たので、その場で怒りと共に解雇した。紹介状も出さなかった。我が伯爵家に相応しくない人間に、働いてもらうつもりはない。


コーデリアへのお詫びとしてドレスを贈ることにした。そう言えば贅沢をさせてやると言ったがまだなにもしていなかった。まぁ、まだ嫁いで3日目なんだが……。




◇◇




「2着だけ?それだけしか頼まなかったのか?」


ジュードから受けた報告に、私は驚きを隠せない。浪費家と聞いていたから何十着も頼むのだろうと思っていたのに!


「はい、実家から5着持ってきているので、あと2着あれば十分だと」


「いや……それだと全部で7着しかないじゃないか!もしやデザイナーが気に入らなかったのか?」


「いえ、デザイナーは色々な種類のドレスを50着ほど用意していました。その場でコーデリア様にお似合いのドレスも20着ほど描きました。私が見てもどれもが素晴らしいものでした。コーデリア様も素晴らしいと仰ってました。ですが結果は2着のみです」


「どうなっているんだ……」


「ケネス様……どうかコーデリア様の父親の情報に振り回されないのでください。奥様の父親は嘘つきで有名なことはご存知でしょう」


「……そうだが、誰に聞いてもコーデリアは淫乱女だと」


「それはこの直轄領にいる貴族にしか聞いていないでしょう?彼女が住んでいた田舎には調査に行っていないでしょう?」


「確かに行っていないが、彼女を嫁にしたいと誰もが言っていた。地元でも有名なあばずれだが、それが良いと…」


「それ……本当ですか?」

「と言うと?」


「皆が彼女を妻にと切望していたのでしょう。あなたに取られたくなくて嘘をついたのでは?」


「あ……」

その考えはなかった。確かに皆が異常なほど彼女を嫁に欲しがっていた。借金は返さなくても良いからと言う者までいたのだから、驚いたものだ。だからこそ、争いをなくすために私の妻にすることで収めたのだが。


「調べて……くれるか?」

「承知しました」


私は知るべきなのだろう。彼女のことを。

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