第12話 それが何よりも大事
今日も庭園に出たがケリーはいなかった。お休みらしい。代わりに執事がいた。ケネス様の恋人候補のひとりだ。柔らかい物腰のメス顔の執事。この手の顔の人は受けっぽいけど、実はベッドでは攻めで行って欲しい。
「ケネス様が腹痛で倒れまして、夕飯はご一緒できないそうです」
「まぁ……」
《うそ?まさかアレを食べたの?》
執事の肩に乗る精霊が凄まじい勢いでコクコクと頷いている。
どうしてあれを食べる気になったのか……ケネス様はある意味勇者でいらっしゃる。
「実はケネス様は昨夜もお腹を壊していました……隠していましたが、長年仕えているのです。私には分かります」
執事さんに隠す……昨夜……、夜に?なんで?心配かけたくなかったの?恋人だから?
それとも男同士はナニでナニするから、昨夜はできなかった。だから分かったってこと?つまり毎晩ヤッてるってこと?それは大変。これからは自室じゃなくて、夫婦の部屋で寝なきゃ!扉をそっと開ければ見ることができそうだ。
「理由をご存知ないですか?」
柔らかい物腰だけど、それでもキッと睨んでくる瞳に、愛が見える。仮初の妻でも嫌よね?でも安心して?あなたたちの愛しあう姿を見たら、消えるから。
「わたくしがなぜ知っていると言うの?」
「そうですね、強いてあげればケネス様の朝食の残りを見た侍女たちが、真っ青になっていたからでしょうか?」
「侯爵家の侍女の方々は優秀ですから、わたくしには理解できない何かをご用意できるのです」
「やはりそう言うことですか。承知いたしました。ご協力感謝いたします」
深く頭をさげて執事は邸内へと戻っていく。
どうやら私の言うことを信じてくれるらしい。しかもライバルに頭を下げることができるとは……。
「ねぇ、パティ。ケネス様を治療してあげて」
《えー、やーだー!お腹壊して苦しめば良いんだ》
「お願い――ね?」
唇を尖らせても可愛いパティがケネス様の元へ向かって飛んでいく。
「治療してあげないと……恋人同士の愛しあう姿が見られないじゃない」
そう、それが大事。何よりも大事。
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