第8話 恋人が見つかった!(たぶん)
《コーデリア、滅ぼしちゃだめなら、別の国に行こうよ》
さっきまで魔王顔だったのに、今は不満顔に変わったパティへ私は笑顔を向ける。
「もう少しいましょうよ。悪い人ばかりじゃないかもよ?」
《コーデリアはなんでいつも呑気なの〜》
困った顔のパティもかわいい。
でも、ごめんね、パティ。
私は純粋に男性同士の恋愛をリアルで見たいの。
なぜなら今回の結婚は、前世で腐女子だった私に与えられた神の恩恵だと思っている。
旦那様の性癖がなければ、祖母のドレスを裂かれた時点で、ここからおさらばしていただろう。
アベーレ、アデーレ様はこの国だけじゃない、この世界の神だから、序列第一位の精霊を相棒にもつ私はどこでも生きていける。魔物が出ようが、魔王が出ようが、関係ない。あっという間に倒せる自信もある。
でもそんな私の心の内を知らないパティは、ウンザリしているようだ。だから私は渋るパティの気分転換に庭園を見にきた。侯爵邸を出ては駄目とは聞いてないし、公爵邸を見て回っても駄目とも言われていない。家から持ってきたドレスだって、パティから直してもらったから着ることができる!気分直しは必要だ。
「見て!確かにすごい庭園ね!」
《庭師の精霊は植物の加護を持っているからね》
「そうなのね。だからかぁ」
よしよし、どうやらパティのご機嫌も治ったみたいだ。
侯爵邸から広がる庭園は低木が整然と並べられ、その間に美しい花々が咲いている。前世と違ってこの世界の娯楽は少ない。となると庭園をながめることは、貴族の娯楽のひとつだ。
東京ドーム何個分かな?なんて思いながら庭園を歩いていく。るんるん気分で歩いていくと、庭師がいた。私の姿を見て、慌てて膝を降り、地面に伏せる。
「ちょ……ちょっと待ってください。そんなに畏まるのはやめてください!」
びっくりした!そう言えば、田舎にいたから身分なんて気にしなかったけど、そうだった。身分が明確な世界だった。だったら侍女達の態度はなんだ!ってなるけど、そこは一応侯爵家の侍女。みんなそれぞれ貴族の娘なのよね。そして庭師はたぶん平民。うーん、祖父母も身分は気にしていなかったから、そこは失念していたわ。
「あ……ですが、その侯爵婦人様でいっらしゃられおられますし」
おおう、敬語が崩壊しているわ。普段、貴族から話しかけられることはないのね。嫌な世界だわ。本当に!
「それよりも美しい庭園ね。あなたひとりで管理しているの?」
「まさかです。私以外にも5人ほどいます。交代で休んでいます。今日は私ともうふたりが」
良かった。一応この世界にも労働基準法があるのね。適度な休みは必要。それが分かっているケネス様は中々良い雇い主のようだ。
「パンジーがかわいいわ。とても美しく咲いているのね」
「パンジーは長く咲く花ですから、管理も楽なんです。ですが、地味すぎて貴族の方には好まれないことが多くて」
「私は好きよ」
「ケネス様と同じことを仰るのですね」
「……ケネス様はあなたに話しかけるの?」
「へい……お優しい方です」
庭師の目が緩やかにカーブするわ。これは……きっと恋する目!私の目に間違いはないわ!たぶん!
よく見ると庭師は可愛い顔をしているわ。しかも思ったより華奢な身体。歳は20歳前後かしら?ケネス様より少しくすんだブロンドの髪。ケネス様より少しだけ濃い青い色の目のメス顔の青年。
やだ――雇用主と庭師の身分差を超えた愛!それはそれで良いわ!むしろありよ!となると、ケネス様が上かしら?雇い主の特権で責めるケネス様!悪くないわ!それでもってこの庭師は『だ……だめです。ケネス様、俺は従業員です…………』って目を伏せながら言うのね。そんでもってケネス様が『雇用主の言うことを聞くべきだろう?お前は俺のものだ。その身体も心も全て……』とか言って――――!!!
やだ!最高じゃない!これに決まりよ!ケネス様のお相手候補第一号!庭師!名前は……。
「あなたお名前は?」
「テリーです。奥様……」
「そう!」
私は破顔する。ケネス×テリー。これは良い!
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