第11話 謎の男明石が話しかけてきた
そのあとも朝市の屋台でもみくちゃにされながら情報収集をしたのだが、何故か買う前に味見してよ攻撃が激しく思うように進まなかった。
情報料代わりに何か買ったのは、調理に時間のかかる海鮮釜飯位だった。
釜飯が炊き上がるまで約三十分。
料理を待ちながら、いただいたイカ串を食べつつ聞いたことを思い出しつつメモしていく。
・幾谷店長の前の彼氏は、一緒にカフェ経営をしていたが、釣具屋に転身した
・カフェの経営がワンオペに近かったので新しい従業員を探していた
・柏木がため池で身投げしようとしたが一命をとりとめたこと
・他にも似たような同性カップルの店は多いこと
・島独自の同性パートナーシップ制度があり町役場で申請できること
「いや、情報量多すぎだろ……」
ひたすらにめんどくさい調査になった。
浮気相手の女性みたいなのが見つかれば、それを元に依頼主に報告を上げて納まるはずだったのだ。
いや、柏木の恋人なんて幾谷でもいい。
単純な浮気であればその証拠さえつかめば帰れた調査なのだ。
「柏木の自殺未遂か……そうなると、そこを突き詰めていかないといけなくなるな」
となると、こっちだけの調査では無理だ。
写楽に追加依頼を出さないといけない。
念のため整理しよう。
元々の調査依頼の内容は、柏木の身辺調査だ。
少なくとも新しい恋人を作って幸せそうだという証拠は出来た。
あとは、自殺の理由だけなのだが……。
一応の調査方針として、自分がこちらで柏木または幾谷にそれとなく話を聞いてみること、写楽に元の勤め先と元カノの近辺を調べさせることのいずれかで証拠をつかめれば何とかなる。
そんなことを考えていると釜飯が届いたのだが……。
「あの、店員さん。
お料理は頂いたのでもうお帰りいただいて結構ですよ?」
「いやぁ、一生懸命幾谷さんとこの情報聞きまわってるから、なんかお手伝いできへんかなって
小さな探偵さん」
怪しい糸目の男に目を付けられた……。
「あぁ、警戒せんでもええよ。別に幾谷にばらしたりせえへんし、スカしたあいつがちょっと鼻についてるだけやねん」
使えるものは何でも使うのが自分の探偵道、怪しい情報なら捨ててしまえばいいだけだな。
「それじゃあお願いしちゃおっかな」
「お、話し分かるやん。ワイは明石や。気軽に明石家さんって呼んでええで」
「いや、それじゃ大物司会者やないかい」
こうして怪しげな男、明石から幾谷の過去について話をされるのだった。
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