第9話 店長に島のことを聞いてみよう
「ずいぶん熱心にパソコンに向かっていたようですが、調べものですか?」
「いやぁ、趣味のブログですよ。
釣りで旅したところを記録に残しておくと、もう一回釣りに来るときにその情報を参照して準備できるから楽なんですよ」
「なるほど……ブログって島の観光情報とかも載せられますか?」
「えぇ、その予定なので明日くらいに観光に出る予定ですよ」
幾谷は少し考え込む様子で、こう提案してきた。
「今はリゾート時期を外れていますから、この島に伝わる遺跡でも調べてみませんか?」
「遺跡ですか……」
「えぇ、そこの裏に低い山があるでしょう。
その頂上付近に大きなため池があって、そこに慰霊碑と昔話の書いた石碑があるんですよ」
これは昨日調べてもらった最後の巫女の話かな。
場所が分かったのは僥倖だが、これが今回の調査に確実に関係しているって証拠はないんだよなぁ……。
「ありがとうございます。面白そうなので気が向いたら行ってみますね」
「はい、恐らくご興味を引ける内容かと」
あと一件聞いてみるか。
「そういえば、この島って若い男性が多いですよね。
どこに行ってもイケメンのお兄さんがいるので、ちょっとびっくりしました」
幾谷は少し言いよどむ。
何かを考えているかのように黙りこくって、しばらくしてからにっこりとほほ笑む。
「この島って、実は学校がないんですよ。
だから、子供のいる家庭は大阪とか兵庫とか東京にお母さんと子供だけ送り出して、男性はこの島で働いているんだと思います。
えぇ、それで若い男性はいるけど、若い女性と子供はあまりいないのです」
なんか怪しいがそういう事もあるだろう。
しかし、それはイケメンしかいないことへの回答にはならない。
さらに、中年以上の育児を終えた女性がいないことを一切説明できない。
質問の内容にあっていない解答であると感じた。
指摘するのも微妙に感じるため、おかわりのコーヒーを飲み干して会計を済ませて、自室に戻って今日分の盗聴音声と写真を確認する。
調査対象が昼間はほぼカフェに居るからあんまりめぼしい音声はないな。
こっちの本命は夜か。
夕方になる前に釣り道具を持って外に出る。
氷を満載したクーラーボックスに、魚屋で買ったイカを入れて、釣り道具屋へ向かい、餌木を購入する。
これで、餌木でイカを釣ったアリバイを作っておくのだ。
モチロン、寄った店での情報収集も欠かしてはいない……が、どこで聞いても判を押したように同じ回答しか得られない。
真実なら同じ言葉が紡がれてもいいだろうが、語尾以外は一言一句順番も同じなのだ。
マニュアルでもないと、ここまで同じ回答にならないんじゃないかと言うほどに不自然だった。
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