第6話 写楽からのデータ
写楽からの返信があった。
調査内容について、簡潔な概要を記した報告書とそれに関する詳細なデータをオンラインストレージ経由で受け取る。
「なになに……男性の失踪はそこそこな頻度であるのか……」
失踪者の年齢層は主に、二十代後半から四十歳くらいまでの男性が主。
全員かは不明だが、島に移住して働いている男性も多そうだとのこと。
確認できた失踪後に移住した者のリストも添付されていた。
「見事に働き盛りのイケメンばっかりだな……この島何かあるのか」
リストをスクロールしながらカフェインを吹かしていたが、ふいに手が止まった。
とある移住者の顔写真に見覚えがあったからだ。
「この人……このカフェのオーナーじゃないか……」
そこに記載されていたのは、このカフェ兼ペンションのオーナーこと幾谷であった。
彼も八年ほど前に急に仕事と婚約者を捨てて、この島に移住した人間だというのだ。
元々外資系の商社マンでバリバリ働いていたらしいが、何故かその生活を捨てて田舎のカフェを経営しているらしい。
謎は深まるばかりであった。
他にもリストアップされた失踪人一覧には、島巡りをしていた時に漁港や商店で見たことある男達がちらほら見つかる……。
その他にも島民の女性の情報があまりにも少なく不審だとも。
「男ばかり元の生活を捨てて、集まる島なのか?」
そう言われれば島に来てから女性を見ていない。
これだけ若い男が多いのに、その彼女や家族らしき女性も見つけられなかった。
田舎町であればあるほど、おばちゃんが働いていることも多いのだが、それすら見かけないのだ。
「なんで失踪した男一人追っているだけでこんなことに」
頭を捻っているところに追加でメール着信音が鳴る。
また、写楽からであった。
「お、なになに。調べるのに時間かかってた民間の伝承を添付するっす?」
これも先代所長の教えの一つであった。
謎多き事件の場合、過去にヒントが有る場合があると。
例えばだが、過去の謎の奇病が実は風土病だったなどのヒントとなることがある。
「──ふーん、渇水対策での若い巫女を生贄にしていた。よくある話だな」
問題はその後だ。
巫女の呪いにより女の子が生まれにくくなったとの記載がある。
その他にも神隠しの話もあった。
地域は瀬戸内海広域に及ぶが、突如働き盛りの漁師が海に出て帰ってこなかったとの内容だ。
「女の子の生まれにくい島に、男だらけの神隠しねぇ。予想以上にきな臭くなってきたな」
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