第5話 理祖島について調査せよ

「お、所長からの指示メールっす」


 アタシ、コードネーム写楽っす。

 この探偵事務所で猫捜索のチラシやホームページの作成保守などのデザイン系の仕事をしている事務職っす。

 しかし、本職はインターネットでの情報収集と、調査地域の商店街などを駆け巡りながら細かな情報を拾う情報収集のエキスパートっす。


「さてさて、今回の指令はっと……理祖島りそじまのについての噂やリゾートバイトに行ってから帰ってこなくなった男が柏木以外にもいないかを探れ……っすか」


 あまりにも漠然とした指示だが、あの所長はできないことは指示してこないっす。


「これがアタシに来たってことは、インターネットの海から情報をさらえって事っすね。燃えてきたっすよ」


 写楽は愛用のパソコンを再起動した。

 要らないソフトとバックグラウンドで動いているものを停止させるためだ。


 そして、サインインするアカウントも変更して、仕事用のソフトの入ったデスクトップを起動した。

 うちの事務所からのアクセスであることがバレないように、彼女の自宅にあるタワー型パソコンを経由してVPN接続させることでIPアドレスを偽装していた。


 接続を確認すると、画面分割が可能なブラウザで主要なSNSに同時にアクセスする。


 そして「島の名前 彼氏」「リゾート 帰ってこない」など、考え付く限りの検索ワードを打ち込んで調べていく。

 そして、お手製の収集ソフトによって、必要と思われる情報を自動でExcelに保存するプログラムを走らせた。

 数時間検索した後にと、似たような書き込みがリストアップされた。


 ある程度情報が絞り込まれた時点で、調べ上げた情報の中で信頼出来るデータを、我流で学習モデルを構築したAIで推測する。

 数分立つと頻出ワードと呟かれた時期などを表にまとめてくれた。

 元は既製品の集計用AIの改造品だが、割と役に立つので気に入っていた。


 その中からいらない情報を削除して、必要な情報のURL、スクリーンショットを別のExcelに貼り付けていく。


 そして、その島に失踪した彼氏のものと思われるSNSアカウントなどの情報をさかのぼり始めた。


「一人もいない年もあるっすけど、失踪時期は夏の終わりに集中してるんすね」


 人数は一人から多い年で十名ほど島から帰ってこないらしい。


 帰ってこない人のSNSは稼働していたりいなかったりだが、稼働しているアカウントでは男同士でマリンスポーツを楽しむ写真や、漁に出ている仲間との写真が多かった。


 その他に理祖島の情報をブログサイトなども含めてさらにディープに検索していく。


「おかしいっすね……島公式のブログに男性島民の写真は見つかるっすけど……女性が一件もヒットしないっす」


 写真を撮ったりブログを更新したりするのは、男性以上に女性がマメに行ってくれるので、役所や漁港の女性職員の任せていることが多い。

 いくら離島とは言え若い女性が一人もいないということはないだろうし、観光誘致のためにある程度検索しやすいようにブログを出しているという自治体もある。

 イケメンで女性の観光を釣る戦略は分かるが、写真に一人も女性がいないというのは不気味さを感じた。

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