第4話 アシスタントへの調査依頼

「さてさて、夕飯までちょっと寝ますか」


 必要そうな場所……母屋の二階や倉庫、トイレ付近、それと使われている形跡のあるペンションのコテージに盗聴器とカメラ一式を付け終わったから、一旦戻ってきたのだ。


 調査対象がカフェで働いている間は、いま仕掛けた盗聴器はあまり意味がないだろう。

 そう思って録音機器に音声を記録して、一旦寝ることにした。


 夕飯はカフェのメニューだから、もう少ししてから行けばいいのだ。

 さて、一休み一休み……。


 …………

 ……


「はっ……いま何時!?」

 急いで時計を見ると、二二時を回っていた。

「しまった、晩御飯を食べそびれた……」


 いや、そんなことを言っている場合ではない。

 録音機器の連続録音時間は約六時間。

 そろそろSDカードを入れ替えておかねばならない。


「これで良しっと……」

 さてさて、何が録れているかな……。


 これは個人的なこだわりなのだ。

 USB-Cも早くていいのだが、データ転送が終わるまで再度録音ができない。

 だからこそ、入れ替えるだけで次の録音ができるこのタイプを買い占めている。

 SDも予備含めて一五枚持ってきていた。


 この日の音声の具合によって明日からの調査方法と内容が変わるのだ。

 割と重要な音声ではある。


 非常用に買っておいた冷凍パスタを温めながら、電子タバコ型のカフェイン吸引機を口にする。

 エナドリでもいいのだが、遠方に移動するには重たくなるし、何より飲みすぎることが多いのだ。

 だから、俺はこの加熱式カフェインに出会ったときに買い占めてしまった。


「アチ、アチ……うっま……」


 パスタを食べながら、一つ目からデータをパソコンに移し、波形を検出する。

 無音の部分はカットして、音声のあるところだけ別ファイルに保存、データは仕事用のスマホに転送した。


 もちろん元ファイルを削除することはない。

 電車の音みたいに、声検出で検出されていないだけで、重要な音と言うものはあるのだ。

 切り取ったデータを再生しながら二つ目、三つ目と作業を進める。


 一つ目はハズレか……。まあいい、こういうことは多いのだから次に賭けよう。

 二つ目、三つ目と音声を確認するが、こちらも大した会話は取れていなかった。


 あと二つ……さて、鬼が出るか蛇が出るか。


「店長、おつかれさまです。お風呂いただきました」

「あぁ、今日は柏木君の日だったね……それじゃ、始めようか」

「はいっ!」


 おっと、これが当たりか。

 柏木と呼ばれた男は今回の調査対象である。


「ちょ、ちょっと待て……何だこの音声……」


 そこに収録されていたのは、男同士の性行為を記録したものであった。

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