第2話 いざ島へ

 LCCで関西まで飛んだ俺は、そのままビジネスホテルに部屋を取り、近くの二十四時間営業のディスカウントストアを訪れる。


 ボストンバッグと新品の衣装を数点、それと釣り道具一式を購入してからホテルに荷物を置いて、牛丼店に向かった。


「食費も経費として落とせるが、そうとは言えなるべく安く済ませなければならないのだ」


 これは先代所長からの教えでもあった。

「張り込み中の食事は、どこでもすぐに食べられて何日食べても飽きない黄金の組み合わせを探せ。アンパンと牛乳のような奴をな」

 との教えを守り、張り込み中はハンバーガーとコーラ。それ以外は牛丼と決めていたのだ。


 また、可能な限り調査費を優先すべしと言う教えともマッチする安くて速い飯はありがたかったのだ。


 さて、明日は現地に赴くのだから、早めに休んでしまおう。

 と思ったが、普段夜型の彼はどうしても眠れずバインダーに領収書をまとめながら島の情報を調べているのだった。



 翌朝、本当は朝一で島に行って調査をする予定だったのだが、眠れなかったために昼前に出発することになってしまった。

 島へ向かう船の中で昨日まとめた情報を読み返し、島の中で調査しておきたい場所を洗い出しておく。

「と言っても、バイト先であるカフェ兼ペンションに宿泊するから、カフェでの彼の様子くらいなんだけどな」


 理祖島──人口五〇〇〇人くらい、自転車でも三時間くらいで一周できる島だ。

 主な産業は漁業と観光業。

 と言っても、観光で稼げるのは主に夏のリゾート需要だけで、それ以外の時期は釣り客がたまに来る程度だ。


 今はオフシーズンだから、釣り人のフリをして乗り込んでいくことになる。

 まぁ、餌とか仕掛けとかわからないけど、竿を見せておけば何とかなるだろう。


「さて、島に着くな。そろそろ荷物を片付けておくか」


 港に着いたところで、宿の主人が迎えに来ているということはない。

 いや、本当は来てくれる予定だったのだが、釣りをしてから向かうと言って断ったのだ。


 まぁ、寝坊したから、来てもらってたら半日近く待たせることになってたんだよな。

 来てもらわないのが正解だっただろう。


 島を一周してから地理を頭に叩き込みながら、二時間ほどして宿に向かったのだった。


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