第1話 万能の転校生

 澄実ヶ原きよみがはら小学校に、その子どもが転校してから早一ヶ月。

 腰まで届く長い黒髪に、子どもながらに完成された美しい顔立ち。

 よく通る声は耳に心地良く、授業態度も成績もトップレベル。

 かといって、運動に難がある訳でもない身体は、すらりと伸びた手足が見た目よりも力強く動き、体育の授業ではクラブ活動の運動部員の目を釘付けにするほど。

 ――科音しなね御影みかげ

 謎の転校生という表現が、これほどまでに似合う子どもがかつていただろうか、と評判の御影は、ついでに性格も優しく、人当たりにも垣根がない。

 だからこそ、男女問わずモテた。

 見た目の性別がどちらにも通用しそうなところも、拍車をかけたと言って良い。

 何かとうるさい昨今、わざわざ性別を確認することもない大人に倣った同級生たちの功績も大きいだろう。


 ただ、人の好き好きには個々人の好みというのも当然あるもので。


(……まただ。また、誰かに見られている)

 体育の授業中、チクチク刺してくる視線に気づいたのは、いつの頃だったか。

 回を重ねて御影が更に気づいたのは、それが現れるのは決まってこういう時。

 チームワークで勝利を手にして喜び合うクラスメートの、中でも高橋たかはししょうが御影の近くに来た時だ、と。

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