第3話
メインクエスト?
私がキョトンとしていたら、拾肆ちゃんはタクミさんに詰め寄る。手には拳銃。
なんで拳銃!? 銃刀法違反じゃなーい? あ、ここゲームの世界か。ついつい。
「あたしは世界を救わなきゃなんねェんだよ」
「その話にも関わってくるんで、説明します」
タクミさんはその辺の木の枝を拾ってきて、地面に図を描き始める。
「ここは俺たちの元いた世界から考えると過去の世界、に存在していたMMORPG『Transport Gaming Xanadu』の世界じゃあないですか」
丸を二つ描く。ひとつの中にTGX、もうひとつは〝20XX年〟と書かれた。
「お二人って未来人?」
過去の世界なんて言うから、私が聞いてみれば「今のユニから見るとね。俺は大人になったユニの彼氏ってところ」と縁起でもないセリフを返された。
「私の彼氏は京壱くん一択なの! そのユニちゃんはニ・セ・モ・ノでーす!」
ありえない。冗談じゃないよ。嘘つけぇ。なんでタクミさんと付き合ってんのさーあ。
「そう言ってくれるところが余計に本物らしいよ」
「なんだって!?」
「今からでも俺と付き合わない?」
そのオレンジ色の瞳を煌めかせて、タクミさんは私に手を伸ばしてくる。
薄ら笑いはこれから起こる出来事を把握しているからこその余裕かな?
「私は『都市対抗バトルロイヤル』に勝ち残って、京壱くんと一緒に現実世界に生き返って、そこで恋人になるの! だーかーらー、付き合いませーん! お断りでーす!」
断固拒否なのだわ。差し出された手を跳ね除ける。京壱くんのために、私は戦うんだから。戦う前から京壱くんと付き合うのを諦めちゃったらこの世界に転生してきた意味がないじゃーん?
「生き返る?」
ムスッとした顔の拾肆ちゃん。
「お前も転生してきたってことか」
「そうだよーん」
「なら、現実世界では死んでいるんだよな? ……でも、参宮は会ってるって」
拾肆ちゃんはタクミさんのことを参宮って呼ぶのねん。お互いを苗字で呼び合ってるのかな。TGXの丸の下にもうひとつ丸を描いて、そこには〝現実世界〟と記入するタクミさん。その丸から矢印を生やして〝20XX年〟の丸に矢印の先を合わせる。
「ユニが優勝して、生き返った先の未来が俺たちのいた〝20XX年〟の世界。もしユニが優勝しなければ、四方谷さんは生まれてこない。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』観たでしょう?」
「拾肆ちゃんって私の娘!?」
映画を引き合いに出されて驚いているとタクミさんは「物の例えだってば……ユニの存在なしに『ピースメーカー』計画は生まれてないからさ……血のつながった娘じゃあないよ」と否定してくれた。ちょっと安心。京壱くんの名字は一色だもの。
「わァかったよ」
拾肆ちゃんはめんどくさそうに鼻を鳴らして、拳銃をホルスターにしまう。やったねユニちゃん。これで三人!
「組んでくれるのね! やったー!」
娘ではないかもしれないけど、ちっちゃいのにずっと不機嫌そうな表情の紫ツインテールな拾肆ちゃんって妹みたいで可愛く見えてきた。なんかマスコットキャラみたいじゃなーい?
「さっさとその都市対抗なんとかってイベントを終わらせんからな。大天才のあたしが参加するからには、徹底的にぶちのめしてやる」
うーん物騒!
そこがまたかわいい。ぎゅっとしちゃお。いいよね?
「なんだよ!」
あら!
反抗期!
「かわいいー! お持ち帰りしたーい!」
「どこに!?」
「弐瓶家の子にならない?」
「ならねェわ!」
妹にしたい。ダメかな。ダメなのかー?
本人なぜか嫌がっているし、チラッと目線をタクミさんのほうに向けてみる。
「なっちゃえばいいんじゃあないですか? そのほうが20XX年に帰るより幸せでしょう」
「また言うのかよそれ」
タクミさんはスニーカーで丸を消しながら「……まあ、引っかかるのは、成長したユニが俺と初対面みたいな反応をしていたことですね」とこぼす。
「うぬぼれんな」
「相変わらずぐさっとくる言い方しますね。誰に似たんですか」
私も助けてもらってるんなら覚えてそうなもんだけどなーあ。気になるところ。今の私には答えられない。
これだけ特徴的な二人組だもん。これだけ会話していて関係性見えてきてないけど、聞いちゃっていいのかな。複雑な事情があったりしないかな。地雷を踏んだらさようなら。
「確認しておきたいことが一点」
仲良くなったから聞いておこう。
「イベントは四人一組でチームだし、あともう一人は京壱くんでいいかな?」
私は拾肆ちゃんを解放する。同じパーティーメンバーだもの。いやって言っても京壱くんは入れたい。
それに、転生者って超スーパーアルティメットつよつよネオチートなんでしょう? レベル500になっているタクミさんはヤバヤバのやばそう。拾肆ちゃんのレベルが上がっていないのはさっきの拳銃でバッタバッタと瞬殺してきたからと想像しよう。一年前に転生してきている京壱くんが入れば百戦危うからずってもんよ。勝ち確ってかーんじ?
「その京壱ってやつはどこにいんだよ」
「これから捜すよーん」
「は?」
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