第50話夜叉王の涙

 「ここは………」


 「ようやく、お目覚めか?ったく久しぶりの再会がこれではな。まったく…お前はもう少しマシな方だとは思っていたんだがな」


 ベルゼとの死闘の末、致命傷を負った、ハーディアスは自分が気絶したいことに今更気づく。そして目の前にいる、ベルゼと同じく青い肌の色をもつ魔族の男に対してハーディアスは懐かしさを覚えた。


 「まさか……お前がここにまでくるとは思ってはいなかったぞ……神魔界の王、いや元魔元帥であった我が友ベリアーデよ」


 立ちあがろうとハーディアスは力を入れようとしたがどうやら立つことができない。すでに神核にダメージを負ったことにより、今では立つことでさえままらわない。


 「多分、これがアストロの最後の切り札であったのだろう。初めから奴はこうなることをよそうしていたのだろう。おかげで最悪の同窓会とやらになってしまったのが悔しい」


 「…………」


 「そしてもう一人の死を見届けてしまうとはな」


 「フン、もうあの頃のようには戻れまいよ…俺が選んだ道だ、悔いは無い」


 「何故、アストロの文明を滅ぼしたってのは大方嫌がらせの類であろうが……今ある、文明を滅ぼそうとしたのは何故だ?」


  ベリアーデの問いに対してハーディアスは少しだけ厳しい顔つきになる。


 「国が栄えるのはとても良いことである。ワシのかつては人々共に暮らしたことがあった。だが所詮地上界と天界の人間では寿命が違い過ぎた……そしてかつての友は不老不死になるために非人道な実験に手を染め挙句の果てに国を滅ぼす結果になってしまった……ワシが見守ってきた国は栄えれば栄えるほどにより人を越えた力を手に入れようとする。まるで自分達が神でもなったかのように……」


 彼は、自分の持っている大刀に視線を移す。大刀の銘の場所に沢山の名前が刻まれていた。おそらくはかつての友人たちの名がそこに刻まれているのだろう。


 「ワシは、考えた末ある考えに至った。どうせ滅びるなら自らの手で潰すのが良いかと……だが滅ぼすことは……彼等を根絶やしにすることは出来なかった。その為あるルールを自分の中で作った。壊すのは人では無く、設備を重点的に、殺すのは文明の発展に貢献している者をターゲットにするように邪神群たちにはそう刷り込んである」


 「それが、理由か……だがそれならこの世界に来たアストロにした事は一体?」


 「あれは単なる、事故みたいな者だ……おそらくは排除すべきものと刷り込まれていたことが暴走したのだろう?ワシが気づいて駆けつけた頃には滅んでいたからな。まさか生きているとは思いもしなかった」


 喋り疲れたのか、ハーディアスの呼吸が少し穏やかになるが、それは彼の体が限界に近づきゆっくりと生命活動を停止させようとしていたのだ。


 「最後に……また……」


 最後の言葉を言えることなく、彼は事切れてしまう、最後に一雫の涙を流して。

 

  だが最後彼が何を言おうとしていたのかベリアーデにはなんとなくわかった。


  「あぁ…また三人で昔みたいにバカなことをして…逃げ回る日々にな」


 彼の涙を拭ってから、ベリアーデはしばらく彼の死に対して受け入れるのに時間がかかった。


 

 しばらく時間がたつと彼の遺体を回収しに天界からの使者がくる。


 軽く会釈だけして彼等はハーディアスの遺体を持ち帰った。


 天界から来た彼等を送ってからベリアーデはオウキとベルゼそしてアストロを抱え静かに抜け出す。


 ここに一連の邪神群による、事件は幕を閉じるのだあった。



 

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