第38話二人の誓い

  あの後、俺は少しばかり眠っていたらしく気づいた時には王国でまだ残っている。小さい病院のベッドの上にいた。


 「あ〜、まずったなぁ。ここまで体に反動がくるとは思ってもいなかったな」


 少し体を起こそうとしてみるがまったく力が入らない。どうやら固有結界という大魔術を使ったからなのか動こうにもまったく動かせない。


 (「それに、いきなり魔界の空気を吸ってからの異世界……魔素の多いところと少ないところを行ったり来たりしたせいか、体にかなりの負担に……それに魔力の消費も重なっている様だ。次使うときは、できるだけ相手の主力を巻き込まなければならないな」)


邪神群の指揮官クラスを瞬殺できる程に俺自身の力がある事に少し驚きを欠かせなかったがそれよりもこれからどうするべきか、少し考える必要があるかも知れない。


 少し物思いにふけっているとガタンととびらを開ける音がした。ふと視線を向けるとそこには見舞いの品を持ったオウキが入ってきたのだ。


 「お、やっとお目覚めですか?復帰戦で、敵指揮官を倒すとは……流石としか言いようがありませんよ」


 「フン、あの程度を倒すのに寝込んでしまっていてはあまり意味がないだろうよ。それにこの世界では俺はかなり弱体化していてな、万全の状態でもあの指揮官には勝てていなかったんだぜ?」


  少し自虐気味に俺は少し不機嫌気味にオウキに告げると彼は首を横に振った。


 「いえ、それでも充分すぎるほどの功績です。私や魔王さんと二人がかりで敵わなかった相手を倒してくれたのです。あなたのおかげで皆の士気が上がりました。あの魔王の部隊も前よりもやる気が出始めているのですよ」


 「………そうか、そこまでの影響があるとはな」


 「はい、そのおかげで奴らの指揮系統に綻びが出ると思うのでこのチャンスは逃す気はありません」


 「どうやら、腹を括ったのだな?」


 「はい」


 短い返事だがそれだけで俺にはわかる。


 「彼等の一角がいなくなったおかげでこちらとしても戦いやすくなりました。それに、アストロさんがまた新しい新兵器を作ったらしいので勝負は今しかないと思っています」


 「そうか、いつ決戦を始めるつもりだ、今の現状俺は動けないからな」


 「大丈夫です、今治療班が数十名ほどこちらに向かっていますので今日か明日には全快できると思います。それに可能な限り魔素を補給できるアイテムをアストロさんに預かっていますので今までより数段楽になると思いますよ」


 にこりと笑う、オウキにどこか懐かしさを感じてしまう。いくつかの冒険の中で彼の笑顔に俺達は助けれた事がある。


 「まぁ、お前がそう言うんだ。多分大丈夫なんだろ?」


 「はい、これが私達の最後の決戦となるでしょう。ここで勝たなければ後はありません」


 不意にオウキがこちらの手を掴んでくる、少し驚いてしまうが彼の手が少し震えていることに気付く。


 「ベルゼさん!必ず勝ちましょう!」


 ガシッと強く握られる。今までに無い力強さで。


 「あぁ」


 俺は答える様にオウキの手を握り返し答える。


 

  「勝って!この国に平和を、もたらそう!」


 その日俺達は、固く誓い合う。だがオウキにもベルゼも知っていた。既にこの王国には力がない事をそれに対して誰かが先頭に立って立て直す様な人物がいない事に……だがそれでもオウキは、ベルゼは国の平和なんかよりもこの場所、初めてオウキにあった。「思い出の場所」を守りたいという思いが彼等二人が動く原動力になっているのだろう。

  

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