第37話魔界でのとっておきの切り札
二人が、砦から脱出してから数分、既に優勢はベルゼからダグウォールに変わっていた。
奴は無数の槍を飛ばしながら思い一撃をベルゼに叩き込む、対してベルゼは飛んでくる槍を捌きながら奴の一撃を弾き返し一撃を、喰らわせていた。
「やはり、剣術の腕では貴様に敵わないな、だが手数の多い私の攻撃と持久戦に持ち込めば貴様に勝ち目はないのでは?」
「チッ、いやらしいとこをついてくるな!お前それでも邪神群の王なのかよ!もう少し王らしい闘い方をしろよ!こんなやり方王道では無いぞ!」
「挑発しても無駄だ、私達にその様な「文化」は無いからな。お前が言っていることはあまり理解が及んで無いなぁ、それより大丈夫か?何体か私の分身を作ったんだよ。うっかり私と話していると殺されてしまうぞ」
「うぉっと!?」
嫌な殺気を感じたベルゼはすんでのところでかわし切りつける。分身は真っ二つになり力無く消えていく。だが分身を倒して束の間本体の蹴りが襲いかかってくる。
「ぐっ、カハ!?」
骨の軋む音が聞こえそのまま壁に吸い込まれる様に吹き飛ぶ、幸い防御魔術を何重にもかけているおかげで骨は折れていないが少し内臓にダメージが入っているらしく、魔力が練りづらくなっている。
(「まぁ、分かってはいたことだけどな……流石にこれは厳しいかも知れないな。ここまで粘れただけでも凄い方だろうな」)
焦点があって無い目で奴を見ると奴の体には無数の切り傷がある程度。それがベルゼが全力でやった功績であった。
「よく、頑張った方だぞ魔族よ。私に傷をつけれたのはあの黄金の鎧の人間と魔王とか言う奴だったと思う。だが一人でここまで手傷を負わされたことは初めてだ。お前がこの「文明」での一番強い戦士だと私は思いたい」
これは彼なりの賞賛なのだろう、彼等は「文明」を潰すたびに理解はできなかったが彼等なりのしきたりいわば「文化」ができてしまったのかも知れないそれが自分達が認めた強者には礼を言う。彼等なりの敬意が表れたのだろう。
「フッ、文明を破壊してきたお前達が人間みたいに相手を賞賛するとはな。とんだ皮肉もあったもんだ。もしかしたらお前達は……人にいや、知的生命体になりたかったのかもしれんな」
「何?、それは一体どういうことだ?」
気に食わないとばかりにダグウォールは顔をしかめながらベルゼを睨む。
その表情を見て少しだけベルゼは笑みを浮かべたのだ。
(「よし、誘いに乗ってくれた、このまま少しでも時間を稼ぐ」)
「いや、そういうことだろう?現にお前は人の言語を理解し今話しているんだ。それも今破壊しようという文明の言葉を使っているんだ。これは矛盾しているのでは無いか?ならお前達は何故俺達を滅ぼす必要があるんだ」
「……………」
「「王」と呼ばれるお前でさえわからない、それほどまでにお前達はおかしい行動をとっている事に気づいていない。だったら、共存する道もあった筈なんだ?それをお前達は「言葉」が理解できないから無視をして今まで滅ぼしてきた。だが今は違うそのわからない「言葉」を覚えてしまい人型の形まで手に入れてしまった」
ベルゼの話を食い入る様に聞く、彼は今まで疑問に思っていなかった事を今初めて考えている様なのだ。
「なのにお前は人類の敵として闘うんだ?既にお前は「文明」を破壊するだけの機械では無く、一つの生命体つまりはお前は既に邪神群として「文明」を作り始めているんだ。人類の真似を、しているだけかも知れんがお前は人類に、興味を持ち覚えてしまったのだ。だったら争いをやめて俺達の元に来ないか?今なら間に合うさ」
時間稼ぎから、説得に切り替わっていた。この仮説はアストロが言い始めた事なのだ。最初に滅ぼされた「文明」として彼等の事を調べるうちにある仮説が浮上した。それがこの「邪神群は唯一の文明になりたいから、他の文明を滅ぼすのでは無いか」と彼は述べていた。
必死に説得をする、ベルゼは手を差し伸べてる。
もしかしたら、このまま争いをせず共存ができるので有ればその話も悪くない。
共存する事で人類は早く救われるであろう、まさに理想とするべき解決の仕方だろう。
だが事態はそんなにうまくはいかなかった。
「貴様の言う通りかもしれんが、確かに俺は人類に興味を持った、だがそれがそこまでの壮大な話にはならんぞ!!ワシを懐柔しようなぞ片腹痛い、このまま殺してやる」
思い届かず、奴が剣を振り上げた瞬間勢いよく後ろに下がる。
「残念だ、ダグウォール。そしてありがとう」
「うっ、何だ!!」
突然足元が光り始める。よく見て見てみると魔法陣が浮かんでいた。
「我が魔族の祖先達よ、自然の神々よどうか世界と世界を、一時的に繋ぐ事をお許しください」
「詠唱しながらだとまさか!!」
「気づいた様だがもう遅い!!」
ダン!!と魔法陣を叩いた、するとあたり一面光に包まれ始める。
「くそ、あれは一体ってここはどこだ?」
見渡す限り、自然の木々がたくさんあら、少し幻想的な空間がひろがっている。
(「ここは、一体どこなんだ?私は確かに奴とやり合っていた筈だ……」)
まったく、状況が掴めないダグウォールだったが少しずつ異変に気づく。
(「この世界、魔素の量が尋常では無いとなるとここはいったい」)
「どうやら、お目覚めの様だな」
「貴様、これはどういう事だ!、何故貴様の傷が治っているのだ!何故貴様の魔力量がこの「王」より上回っているのだ!答えろ!!」
先程までの余裕は無く、激昂するダグウォールを見てベルゼは少し冷たい視線を向ける。
「やはりか、体が軽いどうやら成功はした様で何よりだ」
「成功?、一体どういう意味なんだ?」
今だ、理解が追いついてない、ダグウォールに対してベルゼは剣をゆっくり抜く、それだけで空気が凍りつく様な威圧感がダグウォールにまとわり付く。
「ぐぅぅ」
魔力より放たれた威圧に対して少し膝をつきそうになるのを耐えている。
「まさか、ここまでの実力の差があるとはな。まぁいいか説明してやろう」
抜きかけた剣をしまう、それだけでダグウォールにまとわりついていた。威圧感はすぐに消える。
「「固有結界」って言うやつでな、転移魔法の応用でな。
ある場所だけ限定してこの世界にもってくるっている大技でな、今回は魔界から人気がない場所を選んで無理矢理結界の中に押し込んだ感じか」
「………」
何も言わないダグウォールだが奴なりに気づいているらしくここから逃げ出そうと後退りをし始めている。
「どこにいくつもりか、わからないが……もうお前の勝ちは無い」
「グッグガァァァァ!!」
叫びながら突進してくるダグウォールに対して剣を抜き構える。
「黒死葬流」
「黒龍一閃」
ベルゼの横なぎの一閃を放つ、それだけでダグウォールは真っ二つになら吹き飛ばされ塵も残らないほどに。
「お前は確かにあの世界では強いだろぜ」
消え去った敵に対してベルゼは魔界の空を見上げる。
「けどな、お前ぐらいの強さは魔界ではたくさんいるんだぜ」
それだけ告げるとベルゼは結界を解き、異世界のゴウン砦に戻ってくるのだがそのまま意識を失ってしまう。
後に残るのは半壊したゴウン砦が残り光が差し込み倒れたベルゼを優しく包みこんでいる。
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