第35話邪神王「ダグウォール」
砦に侵入してから、あらかじめオウキに言われていた説明を俺はゆっくり思い出す。
今の邪神群は序列の階級は無くなってしまっており、数人の王と呼ばれる指揮官によって率いられている。現在確認されているのは四体。その一体、一体がかつて俺達が協力して倒した、序列四位よりもかなりの強さを持っていると聞いている。
(「確か、魔王とオウキの二人がかりでやっても退けるのがやっとであったらしいな。しかも魔王は瀕死の重症を負ってしまう始末、そして撤退した場所がこの、場所ゴウン砦あるしいと言う事を」)
オウキ話では奴が傷いてからまだ二、三日ぐらいしか経ってはおらずかなり弱体化していると。
追撃できる人材をオウキが探している中で俺が到着、これはチャンスと思ったオウキにより討伐隊として派遣された。
(「で、確かやつの名前は「ダグウォール」って言う奴らしいな。使う魔術も見たことがない威力を誇っているのと後は奴等は基本一匹狼で一体で行動するか……」)
チラッと自分の横腹を軽くなぞってみる。ズキっと染みるような痛みと包帯の上から違う滲んできているようだ。
(「やはりか……この世界はやはり魔族にとって必要な魔素量が不足してしまっているようだな。逆転に自然エネルギーから分けてもらえば考えたのだが邪神群によって森はかなり無くなってしまったと聞くからあまり貰いたくないな」)
前から思っていた事が確信になると少し焦りが出てきてしまう。どうやら本当にこの世界では弱体化してしまうらしい、本来の力の半分も出せていないような感じがする。
それに傷の治りも遅く、魔術を放つ速度も遅くなっている、この状態で手負いではあるが邪神群の王を倒せるとはあまり思えない。
(「仕方ないが、奥の手を使うしか無さそうだがこればかりはいきなり実戦で使うからな。まぁこの二人に期待するしかないか」)
ふと、俺の後ろから付いてきている二人のロボットを凝視する。ブロギロンの方はこの世界にての俺と互角に近い実力をを持っている。それも何も装備をつけていない状態でだ。
だが装備を付けると俺を上回る火力を持つが代わりに燃費が悪く長期戦には向いていない。
ジンバルの方は全く実力はわからない、だがブロギロンと互角かそれ以上だとアストロから聞いているからあまり問題にはしていない。
「あの、ジーと僕達の事見ていますが、何か僕達なついていますか?」
「いや、別に何もついてはいないさ。ただこれから初陣だから二人とも緊張はしてないだろうかと思ってな」
俺は少しだけ興味で聞いてしまう、彼等はロボットであるのだが感情豊かで純粋無垢な子供のような性格をしている。だからか少し心配になってしまう。
「それなら、大丈夫ですよ。僕達は戦う為に作られた。戦闘型ロボットなんですか!恐怖心はあまりないのですが………」
明るく話をするブロギロンがそこで口ごもりジンバルと顔を見合わせる。何か言いにくい事があるらしく、同族のジンバルに確認しようとしているようなのだ。
「なんだ、別にいいぞ。アストロには黙っておくよ、別にあいつが怖いわけではないのだろう?」
「そうです!、我が王が怖いとは思ってはおりません。それより僕達まだ恐怖がどんなものか経験をしておりませんので、もしかしたらそれを経験したら足がすくんでしまうかもしれないと思いましてそれでベルゼ様に迷惑をかけてしまうかと……」
自信なさげにブロギロンは視線を俺に向ける、彼等の顔では表情ではわからない。だが声だけでなんとなく彼等の不安がわかってしまう。そこにあったのは外見だけがロボットの心はまさに一人のそれもあまりにも幼い子供が二人いるように俺の目には写ってしまった。
「なんだ、そんな事か、なら俺に任せればいいじゃねぇか!」
「「えっ」」
「確かに初陣、しかも君達は生まれたばかりだしな。あいつも人が悪い、こんな子供二人にこんな大役任せるとはな。仕方ないさ、足がすくんでいい迷惑をかけてもいいさ、初めてなら仕方ない。
それに君達二人の気持ちを、気づかなかった、俺達大人の責任だ。だからもし動かなくなったら二人とも逃げるだぞそれが約束できるならーー」
いきなり横殴りの殺気を感じ俺は一気に飛び下がる。同時にレーザーのような魔力の塊が俺とブロギロンの間を通り抜けていく。
振り返り、無機質な殺気がする方に振り向く、そこにいたのは巨大なロボットがいた。人のふた周りはありそうな大きさでそれににず体型はスリムな人間型でこちらの様子を伺うように見ている。
「そいつです!!この前アストロ様が見せていただいた映像で邪神王「ダグウォール」です!!」
ジンバルが叫びながら指を指す。
「貴様、ダレニムカッテ、ユビヲサシテイル」
「えっ」
(「こいつ、言葉を喋るのか?それに理解してジンバルを、標的に変えやがった!」
「マズハ、オマエカラ!!」
ゴゥ!!と分厚い床が削れると同時に奴は一気に距離を詰め巨大な拳をジンバルに叩きつけようとする。
「ジンバル!にげろ!
先程の爆風で数メートル飛ばされたばかりの俺はまだ態勢を、立て直すのに精一杯でダメ元で叫ぶ。
だが、ジンバルは身構えて防御の構えに入ってしまう。システムの誤作動かそれとも咄嗟の行動かわからないが、あんなのまともに受けたら無事ではすまないだろう。
(「今から、向かっても間に合わないクソ!」)
だが、確実にジンバルに当たると思われていた、拳は一瞬の内に無くなっていた。
そこにあったのは無事なジンバルと片手を失った奴だけだ。
「一体、何が……まさか!!」
この場でもう一人動ける奴がいた事を俺は思い出した。
「キ、キサマヨクモウデヲ……」
忌々しげに目を光らせながら奴は一人のロボットを睨んでいた。
そこにいたのは人間では扱えないほどの、大きさの大剣を肩に担いでジンバルとダグウォールの間に立つ。勇気を出して行動した戦士がそこにいた。
「僕の、仲間を傷つけようとした君は許さないぞ覚悟してもらうよ!!」
少し、迫力には欠けるがそこには勇者と呼ぶべき戦士が目の前に輝いていたのだ。
「よく言った!ブロギロン!」
なんとか態勢を立て直した、俺はすぐにブロギロン達に合流する。
「さぁ、ここからが本番だ!!、ジンバル!行けそうか?」
「えぇ、行けますとも!さっきは油断したけどもう油断しない!!」
「へぇーー、そうかならいいんだけどね」
「ブロギロン!、後で覚えときなよ!!」
「さて、二人ともおしゃべりはそこまでだ。やるぞこの任務を、終わらせてから喧嘩の続きはしてくれよ!」
「「はい!」」
仕切り直しができ、再び戦闘態勢に入る。
ここからが本番であり、生きて帰って来れるかはわからないだが俺達なら大丈夫そんな気がするほど少し安心感が湧く、まるでかつてのオウキとアストロと共に闘ったあの頃の様に。
後に、このゴウン砦が有名になる決戦、「ダグウォール討伐戦」が始まる。
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