第34話難攻不落のゴウン砦
「なんだって、俺達が行かなければならないんだ?」
馬に揺られながら俺は晴れ渡る空に向かって愚痴をこぼす。既に王国からはかなり離れ、周りは山岳に囲まれた険しい山道を俺達は進んでいた。
「仕方がありません、僕もこんな場所に行くなんて思ってもいませんでしたから?まったく我が王は人使いが荒いのですから」
「ブロギロン!、我があるじに対して何たる事を言うのです!今のを撤回しなさい!」
「そんなこと言われましても、ジンバル。流石に初陣が敵指揮官を奇襲で倒せなんて言うのはあまりにもおかし過ぎですよ。まだ私は納得してないのですよ。それをこうも無理矢理に行けと言われたら愚痴のひとつやふたつ言いたくなります!」
「それでも!そんな言い方はしなくても良いではないですか!例え理不尽な事でも応えるのが我々を作って頂いたことへの恩返しになると思いますよ」
「ジンバルは真面目だね、僕より後に作られたのにそこまでガミガミ言わなくても……」
「なっ!?それは言ってはいけないマウントの取り方!いいでしょうここでどちらが上か決めてやります!!」
俺の横でギャーギャー、喚いているのがアストロが作った、ブロギロンと急ピッチで作られた。後期型のジンバル二体だ。
ジンバルは、一応支援型として作ったらしいのだが性能面ではブロギロンより高いとアストロは言ってはいたが性格はかなりの真面目気質であるためか少しいい加減なところがあるブロギロンとは度々衝突をしている。既にこれで三回目になるのだが二人ともなかなか飽きずにやるもんだ。
俺がこんな山岳地帯しかも三人できているのは理由がある。それはアストロからの指令で俺達が敵指揮官を歌集し倒すことになったからだ。
決戦の地である、オストリア平原で邪神群と雌雄を決着をつける話でオウキの反対により計画が頓挫しかけた時にアストロが提案したのがこの案であった。
現状の戦略ではどうにも決戦に踏み切れないオウキを思いアストロが提案したのだが、奴等の指揮官を倒すには相当の手練れが必要となる。その為、俺に白羽の矢が刺さったのだ。
オウキは総大将なのでこの地から離れるわけにはいかない。アストロは、今のうちにある程度の武器を量産して兵士たちに訓練してもらう為に残らなければならない。更に損害が出ないようにと奇襲成功の確率を上げる為少人数で奇襲当たることになりこのメンツになったのだ。
最初、俺も反対していたがアストロから「このジンバルとアストロは一個師団ほどの兵力ぐらいの力がある。
それにこれ以上死者を出すわけにはいかんとオウキがうるさいからなぁ、早くあの嬢ちゃんが戻ってきてくれたら……まぁこの二人がいればなんとかなるだろう、がんばれ!!ベルゼ」と強引に王国から出て奴の根城に向かっているわけだ。
「お前等、もう少し静かにしろよな、もうすぐしたら奴の根城に着くから、こんなところでバレたら意味がないからよ」
「「はい」」
二人はすぐに静かになるが、また時間が空くと小競り合いが始まってしまう。俺はもう何も言う事もなく、ただ自然に静かになるだろうと思いつつ馬の足を進めていく。
結局、二人は静かになる事なく、邪神群の根城の目の前までずっと騒いでいたのだ。
「着いたぞ、ここが奴がいる砦らしい」
そこには立ちはだかるようにそびえ立つ、大きな砦がある。何十年も使われていないのか所々ひび割れがありさらには石造りの壁に大量のツルが生えていてとてももはや廃墟同然の建物と化していた。
「えっ、ここが強いっていう邪神群の根城ですか?随分と……寂しいところに住んでいるですね」
不思議そうにブロギロンは砦を眺めながら思った事を口に出していた。思った事をすぐに言ってしまうあたり人間で言うとまだ子供ぐらいの精神なのかもしれない。
「あぁ、ここはかつて王国が敵国の攻撃を何度も退けた事で有名な「ゴウン砦」と言われているらしい、険しい山岳を利用した天然の要害でな、この砦の名前にもなっている。ゴウン将軍から付けられた事がこの名が付いたようらしい」
「でもそんな由緒ある砦がなんで手入れもされずに放置されていたんですか?」
「まぁ、そうだな。この何百年間攻めてくる敵がいなかったのとここまで行くのが険しすぎた為に時の王様に放棄されてしまったらしい。俺も詳しくは知らないが、この砦はゴウン将軍ありきの砦だったらしいんだ」
「それは、どう言う事?」
首を傾げるブロギロン、黙って興味あるような素振りをするジンバルに俺は更に説明をする。
「こんな山岳に地帯な為に、水源が確保できなかったんだ。一応水は王国から運んで来られるそれも約三年分ほどな。一応籠城戦もあるかも知れないって事でな、それと食糧も一緒にくるんだけど……あまりにも遠いのとこの山岳によって死人が出てしまってね。誰も運びたらなくなった、それに元々籠城戦には向いてなかったのをゴウン将軍の才覚のせいで難攻不落の城になってしまったんだ」
「つまり、ゴウン将軍が戦上手過ぎたのが災いしてここが難攻不落の城になってしまったってことですか?」
今度はジンバルが質問をする。二人とも注意してもすぐ騒ぐのに国の歴史や戦の話を聞くときはやけに素直になるしちゃんと聞いてくれる。
「まぁ、そうなってしまうのかな?そもそも彼はこの場所の土地勘があってね。いくつかの抜け道を知っているんだ。
そのおかげで奇襲をして敵兵を、混乱させてはのゲリラ戦術が得意な人だったんだ。それに敵兵からしてもこんな険しい山岳地帯に万単位の兵力を置いてしまうのはかなりのリスクになるんだ、食糧とかな、莫大な費用がかかってくる。用は敵の最前線である場所なのだがここを落とすのにそこまでの人員と費用をかける必要があるのかと言う事で撤退していくことのほうが多かったらしい。
その為、彼が勝利した戦績は相手が撤退したことの方が多いと思う。彼がここまで有名になったのは奇襲作戦の損害がほぼ無かったことに対する賞賛であるだろうしな」
「なるほど、ならそのあと彼はどうなったんですか?奇襲作戦を成功させたのも撤退させたのも事実には違い無いから、それなりの報酬はあったんですか?」
ブロギロンは声のボリュームを、上げながら質問をする、どうやら少し興奮しているようだが、砦前ではやめて欲しかった。
「ま、まぁ彼はその功績を認められ「大将軍」の地位とゴウン砦周辺の土地を手に入れたが、その後彼は王国なら戻る事なくこの砦で生涯を終えてしまう」
「それは一体、何でですか?彼は何故帰れなかったのですか?」
次はジンバルが質問をしてきた。二人とも任務のことよりの歴史の方が気になることに対して少し額を揉みながら俺は説明を続けた。
「その理由はゴウン砦が最前線の砦な為に将軍が砦から出られなかった、これは王からの直接的な命令であってな、破れば謀反の疑いをかけられてしまう。その為彼は動かなかった。それと彼が根っからの軍人だった為に王宮の権力争いに不得手だったのが原因で左遷されてしまう、そして彼は失意の中彼は病死をしてしまう。悲劇の将軍として今も語り継がれているんだ」
「なるほど、でその彼の墓なのかも知れないこの場所に邪神群の指揮官がいるってことになりますよね、僕達はその伝説の難攻不落の砦に挑むってことですね」
ブロギロンの言葉に俺はうなづく。
「あぁ、そうだな。時代を超えて俺達はこの砦の挑戦者にならなるだろうよ。さぁ俺達で伝説を超えて行こうぜ!」
無言でうなづく、二人を見て俺はゆっくりと砦の門を開ける。今から伝説の、砦に俺達は挑戦し必ず攻略するに対して覚悟を決めて砦の中に入るのであった。
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