第32話VG計画

 ブロギロンとの模擬戦(半分殺し合いに近い)を終えた俺達は劇場をあとにした。

 

 「あれだけ、暴れたのに誰も来ないとは珍しい事もあるんですね」

 

 オウキが不思議そうに言うとアストロが振り返り。


 「そりゃ、そうじゃ。ここの劇場には特殊な結界と人払いをしておいたからな。あの程度では誰も騒ぎには気付きはしないぞ」


 「本当にお前、機界の王なんか辞めて、魔術師か研究者になった方がいいんじゃないの?」


 とうとう、オウキから敬語が無くなり、呆れたようにアストロに対してため息をつく。


 「いや、それは嫌じゃ!王たるワシがいなくなれば機界の文明は滅んでしまうそれだけは避けたいのじゃ」


 「いや、既に機界の技術を王国に教えている時点でもはや王国の文明になりつつありますし、いっそブロギロンに王位を譲ったどうですか?」


 「嫌、それは……ブロギロンはまだ生まれて間もない色々と経験を積ませてから考えさせてくれ」


 一瞬考えたアストロに対して俺まで呆れそうになってしまうのだが、それよりも聞きたい事がこの副業が本業になりそうな王の肩を掴む。


 「アストロさん、あのブロギロンの装備はなんなんだ?」


 「あぁ、あれはまだ試作段階でな、汎用性を重視してな。奴等と闘うにあたって局地的な戦いになるのを想定してそれに適した装備を開発している最中なのじゃよ。まぁ、仮に奴らが学習する場合の事を考えてこちらの装備を増やして置いた方が他の装備が奴等に攻略されたとしても別の装備で闘うことができるようにする」


 ふいに俺達はブロギロンを見る。先程見せた巨大な大砲とムチしかまだ見せていない、まだ何か他にも装備があるとだとするとこのロボットの能力は計り知れないのだろう。


 「だが、本当の目的は兵士達にパワードスーツを着てもらいブロギロンの装備を装着して戦ってもらうようにするのが目的でな。名付けてVG計画というものじゃ。これで邪神群に対抗できる力を手に入れられるつもりでいたのじゃがな」


 だんだん口調が爺さんになっていく、アストロに対してなんとも言えない気持ちになりつつも彼の話を俺達は何も言わず聞き役な徹することにした。



 「だが、どうにも奴らが現れるのが早過ぎたようだ。今あるのはどれも試作段階のものばかりでとても一般兵士が耐えられない代物ばかりでなとりあえずブロギロンでどうにかするしかないのが現状だ」


 「それなら、まだ他に大丈夫な遺跡を見つけて必要な部品集めをしていくしかないという事になりますね。」


 オウキは少し、暗い顔になりつつアストロに指摘をする。その理由はオウキ自身が一番わかっているために本人にとって辛いのだろう。


 「あぁ、だが現在、ベルゼが来るまでの間我が「同盟国」はあまりにも人材が不足してしまったからな、指揮官クラスで経験豊富な貴族が軒並み殺されてしまったからな。唯一生き残っていたのがオウキしかいない状態からよくここまで持ち堪えたものだ。普通ならとっくに滅んでいる。機界文明のように」


  オウキは崩れて見る影もない王城の方を後悔の念を込めて見つめている。


 もしも、自分がいれば何人かは救えてもう少しマシな状況にはなっていたのではないかと考えているのかもしれない。


 「………すまん、考えがたらなんだ。別にお前を責めているわけではないのだ許してくれ」


 「あぁ、それはわかっているから大丈夫です」


 そんなオウキの気持ちを察したのか、アストロは気を使うのだが、返ってくる返事はどこか心がこもっていないようであった。


 「…………で、今回ワシから提案するのはベルゼがおり、ブロギロンが実戦で使える事も証明できたからなんじゃがな」


 しばしの沈黙の後アストロは二人に向けて語りかける。

 

 「魔王の娘がいないのが戦力不足だが仕方ないがワシはこのメンバーで奴らに対して反抗作戦をしたいと思っている場所は……」

 

 二人は固唾を飲んでアストロに耳を、傾ける。


 「オストリア平原あの場所でこの戦い、人類側を優勢にしたい!」




 

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