第31話ブロギロンの性能


 穴ぐらみたいな研究施設から俺達は王都近くにある、今は誰にも使われていない劇場跡地でブロギロンの性能を試す事になる。


 この劇場跡地は元々王都のシンボルみたいな場所であったらしいだが邪神群による、長距離攻撃で建物の全てが吹き飛ばされてしまったようだ。修復することも無く、そのままの状態で残してあるために当時の瓦礫が残っているなんとも痛ましいままである。


 「ここは、貴族達がよく劇を観にきていたところでしてね。本当はあなた達三人で観に行きたかったのですが……」


劇場の惨状を見てオウキは少し項垂れていた。


 「まぁ、戦争が終われば修復ができるさ、ワシらと違って人類は滅んではいない。そこまで落ち込む事はないさ」


 アストロは皮肉めいた慰め方をする。その言葉にオウキの顔から少しだけ笑みがこぼれていた。


 「ありがとうございます。でしたらここの修復を、アストロさんに任せても大丈夫そうですね?」


 「あぁ、暇ならやってやるよ。前よりも豪華な劇場にしてやるさ!」


 「えぇ、期待しておりますよ」


 そんな何気ない二人の会話を聞きながら俺とブロギロンは向かいあい構える。


 「本気でやってもいあのか?アストロさん」


 「あぁ、なるべく壊さない程度で頼むよ。一応お前さんぐらいの強さと互角にやり合えないと話にならんからな」


 呑気な声で手を振るアストロに対して少し不安を覚えてしまうが仕方ない。


 「なら、しょっぱなから行かせてもらうぜ!」


 俺は足に力を込め思い切り蹴り上げる、蹴り上げた時の反動で周りの地面が捲れ上がる程の衝撃を受けていたのだ。


 そしてそのままブロギロンとの距離を詰め剣を抜く、両刃になっているため、剣の刃がないひらたい場所に向きを変え、奴の横腹を思い切り叩くように刀を振るう。


 「なっ!?」


 ベルゼの渾身の一撃は当たる事は無かった。当たるギリギリのところでブロギロンはかわすのでは無く、空高く飛ぶ。


 ただのジャンプでは無く、鳥のようにだが予備動作も無く、あのロボットは曲芸師のような美しいさでベルゼの一撃をかわしてからそのまま落ちる勢いを乗せて彼に向けて拳を振り下ろす。


 ベルゼは大きく後ろに下がろうとするが先の戦いの傷がまだ残っており、半分ぐらいしか下がることができなかった。


 その為、直撃はまぬがれたが衝撃波だけ喰らう形になってしまう。


 ドゴっ!!っと地面が割れる音と同時に人を吹き飛ばせるほどの風圧と割れた時に出た破片がベルゼに向けて襲う。

 

 「ぐっ!?」


 最初は耐えようとしたが、破片がまるでナイフのようにこちらに向かうのを確認した、ベルゼは耐えるのを諦めそのまま吹き飛ばされるのを選んだ。


 「ったく、とんでもないもんを作り出したなあの天才は!!」


 なんとか破片からの攻撃を、かわすことができたが奴の一撃で土煙が舞い上がっており居場所がまったくわからなくなっている。


 (「一体、どこから来るつもりだ?上からか?、それとも真横からの殴打で決めるつもりでいるのかも知れん、とはいえあんなの食らったら俺は一発でも食らえば俺の負けは決まる。ここはいっーー」


 ギャリギャリと何かが回転しながら近づいてくる音が聞こえ、俺は考えるのをやめ、本能で一気にしゃがむ。


 一拍遅れてから近づいてくる何かの正体がわかった。しなるようにムチとその先端に付いている電動ノコギリのような刃がとてつもない勢いで空を切る。



 「鼻から殺す気できているとはな……ならばこちらも本気になる……ってーー!!」


 ムチの軌道である程度の位置がわかった俺はそのまま近距離戦に持ち込もうと考えたが多分奴がいる場所にとてつもない魔力反応と悪寒を感じた為、全力で右側に勢いよく飛ぶ。


 飛んだ瞬間、ベルゼ何いた場所はレーザーのような魔力の塊が飛んでいき、あたり一面を抉りながら消し炭にしていく。


 唖然とする、ベルゼは先程の高魔力を放った正体にめを向けるしか無かった。


 背中に大きなバックパックを装着し、細長い大筒みたいなを手に持っている。ブロギロンがそこに立っていたのだ。


 「流石です、ベルゼ様。ここまでかわしてくれるなんて、まるで我が主人と闘ってるみたい思えてきます」


 人間で言うと目を輝かせて感ているのかも知れないが、ベルゼからしたら悪夢でしか無かったのだ。


 「いや、まさかここまでやるとは思っていなかったぜ。俺の世界だったら上級クラスなら魔物ともやりあえるかも知れないな、だが!」


 あらかじめ溜めていた魔力を爆発させ、さらには地面すれすれの低空で足で走るよりも速く加速して一気に奴との距離を詰め剣に魔力を溜め斬撃として飛ばす、ゼロ距離からの一撃を放つ」


 奴は俺が一撃を放つより先に何かを拾っていたのだ。それは大きな大剣であり、奴は渾身で放った一撃を大剣で受け止める。


 「チッ!?だがこれで!」

 バックステップをしながら無数の斬撃を飛ばす、そしてベルゼ再び、刀に魔力を流す。今度は斬撃を飛ばす為では無く、長さや硬度を高めもう一度近距離戦に挑もうとした時。


 「それまでだ、二人とももう終わりにせよ」


 アストロの声により集中力が切れてしまい、闘う意志が無くなり剣をしまってしまう。


 「ブロギロン、もう少し終わりだ。既に「予備魔力」まだ使って動いてようだな。まったくしかもその状態で切り札まで出そうとしているとは「本気」でベルゼを殺す気でいただろうに」


 「はっ、すみません。つい興が乗ってしまうと周りがみえなくなってしまいまして」


 ブロギロンは反省を、受けた。


 「この戦いは双方引き分けでよろしいな」


 アストロの言葉に俺は静かにうなづいた。




 こうしてブロギロンの性能に驚愕しながら俺はオウキ達の元に向かう、あまりにも強いロボットを作ったアストロに対して俺達が言うべきことがある。


 「もういっそ、「王」やめて科学者しろ!!」



 



 





  

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