第24話実家からの脱走劇


 あれからなんとかした脱走しようとしたが、あまりの警備の守りが強固過ぎる。約数十日ぐらいの冒険かと思っていたが、こちらの魔界の世界では数十年と時が過ぎていたらしく、父は怒るよりも見つかった事に喜び過ぎて気絶したらしい。


 あれだけ威厳があった親父が倒れてしまうとは思いもしなかったが、俺はそのあと親父と何度か話しをしに城に向かい事の全てを説明した。


 異世界の話に周りの臣下はあまり信じなかったが父と数名の将軍は聞き入れてくれた。


 父曰く「魔界で息子の剣技に敵う奴はほぼいないであろう、それがこうも一人では勝てないとなれば魔界始まって以来の大事になるだろうな……ベルゼもしばらく休んだら己の剣術を鍛えておくのだ。それまでは異世界に行く事は禁ずる」


 父の決定に歯向かおうとしたのだが実力不足なのは認めるしか無く、俺は父に従う形で数日間剣の修行を続けている。


 時折、異世界からの配達でオウキからの手紙がよくくるようになった。幸い時間の流れは魔界とは変わらない事を知って安心した。


 それから約数十年たったある日オウキから届いた手紙の内容に俺は驚く。

 

 「邪神群襲来」と一文だけ書かれていた。


 俺はすぐに、異世界に行く準備を始める。あれから数十年経っているからオウキもそれなりに準備はしてきているだろうと思うが何か嫌な予感がしてならない。


 一刻も早く駆けつけてやりたいのだが、まず俺はこの魔王城から出なければならない。


 (「幸い、警備もここ数年でだいぶ緩くなってきている…簡単とまではいかないだろうがそれでもやるしか無いだろうな」)


俺は警備が緩くなる深夜を選び、窓からこっそり飛び出し一気に召喚陣の元に向かう。


 (「多分、追っ手ほ少なからずくるかもしれないが俺でも対処できる筈だ。それに召喚陣に触れてしまえばオウキのいる世界にはすぐに行けるようにしてある」)


今まで魔界の将軍などが警護にいた事は無く、大量の警備兵を配備していたに過ぎなかった。それもすぐに見つかれば魔王である父がすぐにくる手筈になっていたらしいが、それも時と共に形骸化してしまい俺が簡単に出ていける程にまで警備が脆弱になってしまったのだ。



 (「よし、これならばすぐにでもつけるな、それに追っ手何きている気配すらしていない。これなら簡単に辿り着ける気がする」)


フルスピードで飛ばして、召喚陣のサークルに着く後はこれに触れてしまえばすぐにでもオウキ達がいる世界に飛ぶ事ができる。


 (「あんな、簡素な形の手紙しか送れなかったところを見ると結構切迫しているかもしれないな、早くいかないと待っていてくれみんな!」)


焦る気持ちを抑えつつ、召喚陣に触れようとした瞬間、まるで落雷が落ちたかのような轟音と共に俺の近くで何かが落ちたのだ。


 「ぐっ!!」


 俺は数メートル程飛ばされ、落下した方に視線を向ける。


 そこにいたのは黒い皮膚に覆われたリザードマンであっただがリザードまんにしては顔は少しドラゴンのようにおもわせる顔付きをしていた。その他には刃先が丸い大刀を二振りもちこちらをただジッと見ている。


 「動くならばこの時期だと思っていましたよ若」



 リザードマンの声を聞いた、俺は震えが止まらなかった。よりにもよって彼がここにくるとは思ってもいなかったからだ。



 「まさか、君がここにくるとは思ってもいなかったよザギル大将軍」


 「いえ、これも努めですので」


 ベルゼの、言葉に対して一言だけ告げた、ザギルと呼ばれたリザードマンは持っていた大刀を構えこちらに近づいてくる。


 一歩、一歩と彼が近づく度にベルゼは体に重りでも付けられたかのような圧に襲われてしまう。


 (「やはり、かつて魔界三神将と言われただけの事はある、なんて威圧感だ」)


ベルゼはさらに距離を取るために一気に後退するそれはいつもの彼からは想像もつかないほどの消極的な姿勢であり、いつの間にか自分が震えてしまっている事に気付く。


 「あの、魔力量俺が戦ってきた邪神群より遥かに強いかもしれんな」


 ベルゼほどの強者でも震えてしまうのは仕方のない事なのだ。ザギル、現魔界大将軍であり、ベルゼの父と無二の親友でその魔力量と剣技に置いて魔界で彼に敵うものなどはおらず、もっとも次の魔王に近いものと言われいる程伝説的な将なのだ。彼の戦績の中でベルゼの父に負けたぐらいしか無くほぼ個人戦に置いて無敗を誇る武人なのだ。


 「ここにきて最大の試練て訳か」


 震える体でベルゼは一歩前に出ようとするが足がすくんで半歩で止まってしまう。


 それほどまでにかの将軍が放つ凄まじい闘気には流石のベルゼも尻込みしてしまう。


 「だけどな、ここで止まるわけにはいかないんだよな!」


 震えながらもさらに半歩と前に進み、剣を構え立ちはだかる壁に立ち向かう。例えそれが他の人から見ても敵わない敵に立ち向かう哀れな奴だと思われてもそれでもベルゼにはやらなければならない事がある。


 「それに困っている仲間を助けに行くのも勇者の使命だと俺は思っているからな、悪いがそこを退いてもらおうか、ザギル」


 なけなしの勇気を振り絞り、覚悟を決めたベルゼに対してザギルは何も言わず大刀を構える。


 そして音もなく、ベルゼの目の前に現れる。


 「えっ!?」


 ゾクッとただならぬ、悪寒を感じた、ベルゼは感で剣でガードの耐性に入り、体に防御の魔力を流し始めた時には、数百メートルまで吹き飛ばされていた後であった。



 「若はやはり、あいつと似ているようだな、友のためならば自分も犠牲にする。だが、わたしに一撃もとい出し抜いて召喚陣を触る事ができないようではただの足手まとい。さぁ、大人しくついてこなかった。子供に少しばかり痛い目を見てもらいましょうか」


 満面の笑みを浮かべる、ザギル。彼はこの数百年程畏敬の念で崇められていた。故に彼は闘えなかった。今彼が望むのは本気で戦わなくてもいい。だがもし敵うのならば勝てないとわかっていてもこの自分に立ち向かう。若い魔族と闘いと常日頃から思っていた。それで今日叶うかもしれないとザギルは考えてしまう。


 「ふん、そうかよ、ご丁寧にこちらの勝利条件まで説明してくれるとはな。つまりアンタに一撃入れる事ができれば俺の一つの勝利条件、もうひとつは召喚陣に触れればいいと。言葉にすれば簡単そうだが、それの番人がアンタだとできる自信がないな」


 「なら、やめられますか?」



 「いいや、やらさ!!後で後悔するなよ爺さんここで俺はアンタという壁を越えて強くなった姿をあいつらにみせてやるんだ!!」


 吹き飛ばされ血だらけになりながらもその目に闘志を宿しながらベルゼは宣言する。ここを突破すると。


 ここに、魔界最強の武人と魔界の王子による大決闘が行われる。





 


 


  

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