第22話まさかの竜退治
彼等、邪神群の、中で特に優れている序列のクラス水のセラフはたしかに一番下ではあるのだがその強さは序列の名に恥じない強さを示してきた。その為に彼を襲おうとする奴等はおらず、この数千年の間何事もなく過ごしていた。だが彼等にも使命がある、それは高度な文明は滅ぼす事。
無論彼等が意味や何故滅ぼすのかは分かってはいない。ただやらなければならないというちょっとした使命感に駆られているのだ。
そうして彼は千年振りに動き始めた。だが今回も彼にとっては流れ作業なのであろう、抵抗する人々など目的を妨げるだけの障害物だと思い何の感情も無く潰していく、例えそれが泣き叫ぼうが悲鳴をあげようが命乞いをしようが彼には知った事が無かった。
唯の喋るだけの物体として彼は処理をしてきた。今回もそれで終わると思っていたのだが。
初めて、自分の体の一部が無くなったことに衝撃を受けた。ただの障害物だと思っていた奴等がこの自分に二度も傷を入れてきたのだ。
彼は少し興奮していた。邪神群でありながら感情があることに驚きつつも彼は思ったのだ。「本気出せるかもしれない」と自分の命を奪える敵が現れたのだと。与えられた水の称号とは違って彼の闘争心は炎のように燃え上がり、彼を動かす。
そして彼は本来の姿へと変貌を遂げるのであった。
「おい、この姿はまさか!」
俺は、奴の変貌した姿に興奮を隠せなかった。それは何度も本で見た事がある、勇者などの物語に出てくる。伝説の生物にそっくりであったのだから。
体の色は青色で鱗は見た感じ先程の装甲よりも強固に作られているように感じる。まるで本の世界から出てきたような、圧倒的な威圧感を感じてしまう。
「これは、驚きです。まさか邪神群の、正体があの伝説の竜種ドラゴンだったなんて」
オウキも奴を見上げながら呆然と立ち尽くしてしまう。勇者を昔目指していたものならば奴の姿を見れば感動しないやつなんていない筈だ。
「何故、奴等が生物のような動きを、していたのかやっとその謎がわかった。だけど何故彼等は私達を、滅ぼそうとしたのだ?」
疑問が残ってしまうがそんなことを考える暇は無かった。奴はアストロから奪った大剣をこちらに向けて飛ばしてできた。
「マズイ!!、一旦後ろに飛ぶぞ!」
飛んでくる。大剣のスピードに、危機感を感じたアストロが叫びそのまま全員が一気に後ろに飛ぶ。
その数秒後大剣が地面に刺さり数メートルにわたり陥没してしまう。素早く避けることに成功した。
俺達だったがあれを受けていたら全員が終わっていたことに気づき、冷たい汗が静かに流れ落ちる。
「あれで序列四位とはな、どうするあれに勝つにはこちらも相当な覚悟が必要になるがどうする?」
アストロの声に緊張で少し震えているように聞こえた。そこまで感情がでてしまうのかと機界文明に対して驚きしか無いが俺はとっくに答えは決まっている。
「何を今更、俺はこの世界で勇者ななる為に来たんだ。その前座にドラゴン退治くらいできないと勇者になる資格はないだろう?それに俺はドラゴン退治に対して憧れていたんでな!!」
全身の血が沸騰しそうな程に俺は眼前にいるドラゴンに対して闘志を燃やしている。
それは横にいるオウキも同じ気持ちであったようだ。
「そうですね、ベルゼさんの言うとおり私も人類の代表というよりか、この世界での代表みたいですからね逃げるような事はしませんよ。それにベルゼさん程ではないですがドラゴン退治に興味がありますしね。どうです?どちらの一撃で倒せるか競ってみるのもいいかもしれませんよ?」
「珍しいなぁ、オウキ。君がそんな事を言うとは思ってはいなかったが、そうだな……その話乗ることにしよう」
「ありがとうございます。で私は左足で行くので右足をお願いしますね!!」
笑顔でそう言い残しオウキが全速力で水のドラゴンの左足めがけて走り去ってしまう。
「何、勝手に決めてくれたんだ!右足だったな」
少し遅れて俺はドラゴンの右足へと向かう、翼を使い全力で飛んだ為かオウキが左足を斬る前に着く事ができたがもう奴は斬る寸前であった為に慌てて俺もあいつの呼吸に合わせる形でほぼ同時で左右の足を斬る。
その一撃は奴の足首を抉るほどの一撃であり、奴はそのままゆっくりと地面へと倒れ込んでしまうのであったのだ。
「グォォォォォォオゥ」
苦痛に苦しむような叫び声を上げながら奴は倒れた体を必死に起こそうとするが。
突如両手に杭が突き刺さり、起き上がる事ができなくなったしまった。
どうやらオウキがすぐさま魔術をかけたらしくこのまま俺達は連続で奴に攻撃を畳みかけようとした時。
ブン!と何か振り回すような音が聞こえたと思ったら俺とオウキは近くの壁に激突していたのだ。
「チィ!?、一体何があったんだ?」
すぐに立ち上がり状況を確認するとどうやら奴の尻尾によってここまで吹き飛ばされてしまったようだ。
さて、どうやって奴の尻尾を斬ろうかと悩んでいたところで奴の尻尾は糸も容易く斬られてしまう。
片手で大剣を携えた、アストロによって。
「さてこれで大分やり易くはなった筈だ。それに相手は動けない。またとない好機このまま攻めかかるとしよう!!」
一気に俺達、三人の士気が上がりドラゴンに息の根を止めようと動いた矢先、絶対絶命であるドラゴンが思い切った行動をとった。
なんと自らのブレスで自分の両腕を切り落とし、その反動で無理やり立ち上がる。そのまま俺達めがけてブレスでを放つのであったのだ。
「いや、こんな時の為にこの肩の装置が役に立つんだよ!」
アストロは得意げに言うと肩に隠していたある装備を腕に付け、目の前に掲げる。
「本来は対ビーム兵器と魔力での攻撃に対してだったんだがな。こうなっては一か八かだ、魔力阻害装置展開!」
手に覆うグローブみたいなそれは展開してこちらに降り掛かってくるブレスを中和し堰き止めてくれている。
「よし、このまま押し返すぞ!!後の事は任したぞ!」
「あぁ!!」
一気にアストロは前進を始めて一気に奴の顔のところまでいく。その間から俺とオウキは奴の首元めがけて剣で突き刺すのだが決定打には行かなかった。
「これを使え!!ベルゼ!」
今もブレスを抑えてているアストロから渡された大剣を突き刺し、魔力のブレードを展開させる。
「ギシャァァァァ!!」
ビームによって喉が焼かれた痛みで奴は仰け反り跳ね返されたブレスを口に含んでいた為かそのまま奴の顔は爆発し奴はそのまま動かなくなった。
「おい!もしかして俺達やったのか?!ドラゴン退治をしてしまったのか!!やったー!!」
いつのまにか集まっていた魔族の人々と喜びを分かち合いながら俺達は勝利の余韻に浸かるのであった。
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