第20話魔王との交渉
「前に出てきた人間よ、なんの為にこんな大胆な真似をしたのか述べよ」
玉座に座る魔王は、淡々とした口調でオウキに告げる、その氷のような眼差しにかつての戦場にでる時の俺の母さんに似ているような気がした。
オウキはすぐに頭を下げ、彼女に視線を向ける。
「発言の許しを頂きありがとうございます。私は王国騎士団長を努めております。オウキと申します。陛下、今人間界に起きている事を知っておられますか?」
オウキの問いかけに魔王は少しまゆをひそめる。
「知っている、さぞ大変そうであるが我が魔族と人類は不可侵を結んでいる。どちらも他国の領土には不干渉と約百年ほど前に結んでいる、それも外交にしてもだ。だが今回なんの断りもなくここにきたのはいくらなんでも無礼であろう。場合によっては開戦の選択をしなければならないこともわかってもらおうか?」
威圧的な態度でオウキを睨みつける。だがオウキは押される事なく、真っ直ぐに魔王をみつめる。
「その件に関しましてほ誠に申し訳ございません私達も、できるうる限りの事をしたかったのですが何分我々も必死だった為に根回しが出来なかった事は反省しております」
「うむ、分かっているならいいのだがしかしそこまでの用事とはよほどの事らしいなその生物、確か邪神群とかいう奴らであったな」
「はい、彼等はあまりにも強く、私達だけではとても勝てる見込みが無いのです」
「ふっふふふ、随分と弱気のようだな。ならばお前達がここまできた理由もわかるものだ。用は自分達ではどうにもできないから我々の力を借りたいと言いたいのだろう?」
見透かしたように告げる魔王に対してオウキは無言でうなづいた。先に本題を言われてしまえばこちらも何も言えなくなってしまう。
「だが、我々にはまだ奴等は我々を標的としていない。それに今人類と一緒に戦う事を選択すれば魔族にも標的を、変えてしまうであろう。妾も魔族という種を守らなければならない。ましてや人類と共倒れる気は無い」
「ですが、我々人類が滅びた後はあなた達が標的となります。遅かれ早かれ魔族も滅びてしまうかもしれません、ですが我々が協力する事により、勝てるかもしれないんです!、どうか考え直してくれませんか?」
「くどいぞ!若造!!、そう簡単に滅ぼされるほど魔族を舐めてもらっては困る」
どうやら怒らせてしまったようだ、だがここで引き下がってはここまできた意味がまるでなくなってしまう。
「私達は、奴等と交戦しました!そこで奴等の強さを嫌と言うほどわかっております!ですのでお願いします!手遅れになる前にどうか魔族と人類のわだかまりは無くして共に地上に、生きる者として手を取り合いましょう!」
オウキはそれでも食い下がる、だが魔王はピクリと眉を動かしただけでやはり冷めた目で俺達を見下す様に見つめていた。
「百年前と比べるとやはり人類は弱くなってしまったようだな。そちの熱意と誠実さは評価しようだが我々にも種族としての矜持がある。父達が守ってきた不可侵を、破るわけにはいかないのでな。今日のところは帰ってもらおう、誰か彼等をこの王の間から出ていかせよ!」
魔王の号令の元、魔族達が俺達を取り囲み追い出そとする、既に交渉は決裂してしまった為に俺達は抵抗する事はできない。
「(チッ、ここまできてダメだったか」)
もはやダメだと思った時、突然バタン!と後ろの扉が開きボロボロの魔族がヨロヨロと一人入ってきたのだ。
「何事か!ここは神聖な場所であるぞ勝手に入る事は許してはいないぞ!」
入ってきた者は叱責を受けていたが彼はそれを無視して魔王の前に跪く。
「申し上げます!、我々の領土に未確認の生命体が侵入しました。将軍以下数千人が防衛にあたりましたが奮闘虚しく全員戦死されました!」
「馬鹿な!領土防衛の司令官である彼が簡単に死ぬなんて!!」
兵士からの報告に魔王は狼狽していた。彼女にとって死んだ将軍はかなり信頼している人物であったのだと窺える。
「陛下、もしかしたら邪神群かもしれません、私達が調べに参ります。どうかこれ以上の被害が出ない内に!」
「あっ、そそうですね。でしたら調べて下さい防衛部隊には決して攻めるならと伝えよ!これ以上犠牲を、増やしてはならない!!」
オウキの提案に動揺しながらも受け入れてくれた。彼女にしても異常事態なのだろう、口調も、本来の年相応の女性らしいものに変わってしまっている。どうやら俺が少し予測していたがまだ経験が浅いのだろう。
俺達はすぐに飛び出して魔王城を走る。
「いいですか!、二人ともここで邪神群を倒してしまえば彼女が交渉の場に立ってくれるかもしれません!こここそ失敗するわけにはいきませんよ!!」
「そうだな!」
「私も、さっきの失敗を挽回できるように頑張ってやる!」
「なんか、お前口調が変わりすぎだと思うんだけどなアストロ?」
(「さて、一体どんなレベルの邪神群が出てくるんだろうな」)
俺は少し不安に感じながら指定された場所に向かっていく。
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