第18話しばしの休息
「なんとか勝つことができましたね、まさかここまで強いとは知りませんでした」
「あぁ、全くだ。もう少し教えて欲しかっただがな。はっきり言うがあんな化け物だとは俺は聞いていなかったぞ」
「すまない、私もあんな奴が出てくるとは予想していなかった。申し訳ないと思っているんだ」
あれから二日ほど俺達はこの施設の中にいた。三人ともすぐに動ける状態ではなかった。特にアストロは全ての武器を失っており、片足と片腕を失っていた為、新しく作り直す必要があったのだ。
オウキも数箇所骨が折れており、立ち上がることもできない状態であった。ある程度治癒魔法と科学技術の治療用の液体の中に入りわずか一日で歩けるようになるまで回復した。
俺は、外傷はあまりなかった、だが奴のビームを防御魔術で防いだのだがあまり効果は無く、全身火傷になってしまった。そのあとの渾身の一撃を放ったことによる魔力切れも重なり、オウキと同じくしばらくここで回復するのを待つことにしたのだ。
「ひとつ聞きたいのだが、アストロさん?」
「どうしたのですか?、改まって」
「ここの施設って見たところ人間用に作られたような設備がたくさんあるように見えるのだがもしかして前もって準備していたのか?」
俺は、ふと疑問に思った事をアストロに尋ねた。あまりにも状況が都合良すぎてしまうからだ。本来ならここまでの傷を負った場合は救援に来てもらえるように連絡するしかないのだ。幸い魔術による通信は使える為なるべく早くきてもらえるかもしれないがそれも状況次第なところが大きいだろう。最悪ここで二人で死ぬかもしれないと覚悟していたのだがアストロのおかげでこうして死なずに済んでいるのだ。
たがあまりにも設備の充実さについ疑いを向けてしまう。あまりにも俺達に都合が良すぎるのだが今までのアストロを見ていて彼が野心の為に動くような人ではない事は充分にわかっている。彼は俺達みたいなのがくるのを信じてここの設備を作っていたのかもしれないとふと思ってしまう。
俺の問いかけに対してアストロは頭を掻く仕草をする。こういうところが人間らしくて彼に好感を持ててしまう所なんだ。
「まぁ、君達みたいな知的生命体が現れることはこの星に来た時点できないわかっていたんだ。でも我々は調査にきたからそこまで関心を持ってはいなかった」
懐かしそうに語るアストロは近くにあった医療設備に対して優しく触れていた。
「だがあの邪神群と戦うには君達のような存在が必要になる。既に生き残りは私しかいなかったからね。だからそれまでの間に君達が生まれるまでの間、ここを訪ねてくる強者が現れるまで施設の増設など医療機器などやれる事はやってきたんだ。おかげで今、君達の役に立っているのは非常に嬉しいんだよ。私のやってきた事が無駄では無かったんだね」
言い終わるとアストロは少し目元を抑え、少し俯き始める。彼等ロボットには涙は出ないがもし彼が人間なら声を上げて泣いていたと思う。約千年間来るかわからない俺達の為に設備を作ったり、外に出る事なく待ち続けるそれも千年間、もし同じ立場なら俺は耐えれることができたのかと言われると無理だと思う。
「あぁ、無駄ではなかったぜ、お前のやったことは少なくとも俺達の命を繋いでくれた。ありがとう、アストロ……異世界からきた俺がいうのもなんだが地上界を代表してもう一度だけ言わせてもらう」
一度そこで言葉を区切り、オウキの方を見る。この世界の住人ではない俺が代表してもいうべきか判断に迷ったからだ。だがオウキは無言でうなづいてくれた。改めてアストロに向き直り俺は伝える。
「機界王アストロ、ありがとう。そしてようこそ千年ぶりの地上へこれから我々は同じ仲間だ」
仲間、その言葉は千年もの間一人孤独であった彼にとって深く突き刺さる言葉であり、彼が一人ぼっちの世界から解放されるの意味でもあったからだ。
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