第15話時間稼ぎ

 俺とオウキはかつてないほどの緊張感に身を包まれていた。今まで闘ってきた邪神群の中で段違いの強さを持っているように感じる相手に震えが止まらなかった。それは横にいる、オウキも同じであり彼もこれほどまでの威圧感を感じたことはなかったのだろうと思う。


 (「どちらにしても、先に動いた方が不利になるしな、このまま俺達に釘付けでいてくれたらアストロがいち早く新しい身体に切り替わる事ができ三体一にできる。それまで耐える事ができれば俺達の勝ちだ」)


勝利条件、それは極めてシンプルであり簡単なのだが故に難しいかもしれない何故なら。


 (「問題は俺達が三分間立っていられるかだな」)


そんな懸念を考えていると邪神群が動き出した。目にも止まらないスピードで俺に襲い掛かってきたのだ。どうやらこちらの出方を見るのは諦めたらしく速攻で俺達を倒してアストロの方に向かうことに決めたらしい。


 「ぐっ」


 目にも止まらない動きをする。邪神群の動きをなんとか目で捉える事ができた俺は奴の暴力的な右腕を魔界の秘宝である、魔界剣天衣で受け止めにかかる。


 ガギィン!!っと鈍い音と同時に火花を撒き散らしながら奴の一撃を受け止める。どうやら奴の腕には細かい刃が仕込まれていてそれを魔術で回しながら敵を切り刻むのが奴の近接戦での戦い方らしい。


 「思ったより、かなり重いなこちらは魔剣の力を解放しているのにな!!」


 なんとかして受け止め、そのまま押し戻ししてカウンターの一撃をお見舞いしてやろうかと思ったが済んでのところで避けられてしまう。


 「思ったより早いじゃないかならこのまま一気に!?」


 避けられたが、このまま引くわけにはいかずそのまま動こうとした時ガクッと膝から崩れ落ちてしまう。一体何が起きたのか、崩れた足の方を確認するとそこには鋼鉄の長い千本が思い切り突き刺さっていたのだ。


 「くそっ!?いつの間に!」


 瞬時に気付いた俺はすぐに足から千本を無理矢理引き抜く、こうでもしないと痛みによる隙が


生じてしまう為に手早く引っこ抜くほどがまただめやったらて。邪神群ははそこまでよんでいたらし

い。


 ゴゥと俺の方に近づいてきてそのままおれに対してお返しとばかりに横腹にけりをいれてくる。


 「なっ!?クソはやいじゃ無いか!こいつ!?」


 間一髪のところで間に剣を入れる事にしたが奴の蹴りは凄まじくそのまま俺は吹き飛ばされてしまうのであった。


 剣は折れる事は無かったが俺の握力は限界で魔剣は手から落ちてしまいそのまま地面と激突してしまう。


  身体中に衝撃が走り、俺は体を抑えながらなんとか立ちあがろうとするがどうやら打ちどころが悪かったらしくしばらく動く事ができないようだ。


 (「マズイな、骨は折れてはいないがあまりの衝撃に頭がダメになってしまっているようだなこりゃ、回復するまで動けないな」)


 動けるようになるまで回復するまではオウキに耐えてもらうしか無い。それまでの間見守ることしか俺にはできない。


 そして邪神群は俺がしばらく動けないのが分かると標的をオウキに変えた。


 「やはり、こちらに向きましたか。ならばこちらも切り札を出すしかありませんね」


 自分が標的になった事に気づいたオウキは覚悟を決めたのか最初からつけていたが今まで使っていなかった黄金の剣を左手に持つ。


 その黄金の剣はオウキの王国では国宝とも言われているものであり、使用するものにある程度の力を与える言い伝えがあるらしい。ちなみに鎧、槍もあるため現在のオウキの強さはこの異世界での人類にとって最強と呼べる力を持ち合わせている。


 「ここまでしてまだ足りないとは……、しかしこの私にも人類としての意地があります。さぁ行きますよ!!」


 覚悟を決めた、オウキは一瞬の内に邪神群に近づくだが奴はその動きに気づいておりすぐに迎撃の構えをとる。


 「ふん!」


 だがそれをわかっていながらオウキは止まる事なく槍の横についてる檄を奴の頭の上に落とす。


 鈍い金属音と共に難なく受け止める邪神群だがその直後に嫌な予感がしたのか、一気に後ろに下がる。


 「アレを避けますか」


 少し、苦虫を潰したような顔をしたオウキだったがすぐに態勢を立て直す。


 オウキは奴が槍を受けるのを承知であえて放ち本命の剣での横なぎで決めるつもりであったがやはりそう簡単にはいかなかった。


 「ならこのまま攻めるだけだな」


 時間にして約二分、ベルゼが動けるようになるかは分からないがこの際考えていられない。オウキはコートの中に隠していた投げナイフを三本掴み邪神群にめがけて連続で投げつけ、そのまま横に飛び続けて三本また投げナイフを飛ばす。


 邪神群は、それを難なく弾くが流石に時間差で飛んでくるナイフには対処できなかったようだが、既にナイフが自分の身体を貫く事ができない事がわかった奴はそのまま食らう事を選んだ。


 キィーンとオウキの投げたナイフが奴の硬い身体にあたり跳ね返る、だが俺もこの少しの間一緒にいたからわかるがあいつがこの程度の小細工で終わる事がない事を知っていた。


 「やはり油断しましたね……ならこれならどうですか?」


 オウキの言葉が言い終わると同時に激しい光があたりを照らし出す。ナイフの一本にあらかじめ光を放つように仕込んでおいたのだ。


 何も言わない邪神群であったが見えないのか少しの間動きが鈍くなる。


 「(行け!オウキ!奴が視界を取り戻す前に奴を仕留めるんだ」)


俺は心の中で叫ぶことしかできなかったが既にオウキは奴の懐に入っていた。既に目で見えるほどの魔力を剣の刀身と槍に込めてさらに黄金に輝き国宝の武器を奴の核めがけて突き刺しにいく。


 だが、核に刺さる一歩手前でオウキの動きが止まりそのまま横薙ぎににあいつは三回転しながら吹き飛ばされる。


 「オ、オウ!?」

 

 やっと動けるようになった体を必死に動かしオウキの元に向かおうとするが一瞬眩しい光が俺を包み込んだ。


 なんとか防御魔術やら翼で身体を覆いなんとか凌いだがどうやらかなりのダメージを負ったらしく立っているのがやっとであった。


 「ぐっ、しまった。油断してしまったようだな」


 一瞬オウキに気を取られた隙を疲れたらしい奴の戦闘センスもかなりのものだという事はわかったがまだ三分経ってはいないかもしれない。


 「へっ、まだまだ俺はヤレるぜこいよ怪物。魔族の底力見せてやるよ!!」


 なけなしの魔力を総動員させてなんとか立ち上がり悪あがきをする為に立ち上がり立ち向かおうとした時。


 不意に何かが炸裂するような音と共に何か得体の知れない巨大な何かが出てきたのだ。


 「すまない、少しばかり時間がかかってしまったがもう安心だ。あとは私に任せてくれ」


 「フッ、やっとかよ」


  俺達はなんとか耐え切った事に力が抜けそうになるがまだ俺は眠るわけにはいかなかった。この二人の闘いを見届ける必要があるからだ。


 「さて、千年ぶりぐらいかな邪神群よ。積もる話もあるかもしれないが借りは返させてもらおう」


 アストロが構えると、邪神群はさっきまでとは違い目を赤く光らせ当たりを焼き尽くす勢いで炎を上げ始める。

  

 「やはり、これは少し一筋縄ではいかないかもしれないな。だが私も負けるつもりはさらさら無いのでな」



 奴の変化に並々ならぬ魔力を感じた、アストロはさらに強く拳を握りしめる。




 かつて滅ぼした側と滅ぼされた側千年の時を越えた闘いが今始まろうとしていた。


 

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