第10話機界王

 俺とオウキは遺跡内部に侵入していた。遺跡の中は全然暗くなく、昼間と対して変わらない明るさを保っていたのだ。これも彼らの技術の恩恵なのだろう。


 「俺、ダンジョンだからてっきり罠があるとは思っていたんだけどそれらしい物がまったく見当たらないな」


 「そうですね、大抵このような場所ではいくつか罠が張り巡らされているハズなんですがどうやらそんな事はないみたいですね」


 俺達は、一応は警戒しながらも先へと進んでいく。先程感じた、威圧感の正体も気になってしまうがまだ奥の方にいるみたいなのでその間にできるだけ情報を集めておきたいのだ。


 「どうやら、この辺りは怪しいかも知れないなこんなデカい扉でなんだからよ」


 俺達は遺跡を歩き回っていると不意にデカい扉に出くわしてしまったのだ。その大きさは俺達の二、三倍はあるほどの大きさであった。


 「もしかしたら、この扉が機械文明人達にとって標準サイズの大きさかも知れませんね」


 「なんだって、だったらめちゃくちゃデカいってことかよ!ますます興味が湧いてくるな」


 「えぇ、そうですね。彼等の存在を証明するにはまだ決定的な証拠とは程遠いですけど彼等の身長がわかったのはかなり評価としては良いことですからね」


 彼等について調べていたムゥでさえ知らなかったことが知れてよかったのだが先ほどオウキ自身が自分で言ってじまったのだがまだ確証は持てない。もしかしたら巨人族かも知れないという思いがあるのだ。


 「とりあえず、入って見ない事には分かりませんからここは強行突破するしかないかも知れない」


 俺達はうなづき、俺の剣で二人が通れるぐらいに扉を斬る、扉はかなり頑丈そうだったが俺の技量とかれの宝剣の前では堅牢な扉なんて関係ない、簡単に扉を斬る事ができる。幸い罠が仕掛けてある感じは無かったが一応二人は慎重に部屋の中へ侵入する。


 「ここは一体なんなんだ?」


 部屋に入った瞬間俺は困惑した声をあげてしまう。そこに広がっていたのは扉以上に広い空間と俺達の技術では理解できない機械の数々がたくさんあったのだ。


 「なんだ、これは?こんなのは魔界ですら見た事が無いぞこいつらは一体何者なんだ?」


 横にいたオウキの様子を見ると奴も同じように目を丸くしてこの光景に衝撃を受けているようだ。それも俺以上にだ。


  よく見てみると、何かを作っている最中に彼等は何者かに襲われたのがわかることだけで一体何を作っているのかまでは流石にわからなかった。


 「ど、どうやらここは彼等の工房みたいなものなんですかね。見た感じではそうとしか見えないんですけど……」


 なんとか、正気に戻ったオウキは俺と同じ事を口にする。あまりのことに頭が混乱するのはわかるがそんな事はどうでもよくなりそうだ。


 (「見たこともないのだが彼はこれほどの技術力がありながら滅んでしまったんだ。彼等の技術を持ってしても勝てなかった邪神群とは一体なんなんだ?」)


俺の疑問に対して答えるかのように近くにあった壁画のようなものを見つける。


 (「何故彼等は自分らの技術より劣っている筈の壁画を作ることにしたんだ?、歴史的な物や記録を残すには紙に書いたり、自分達の高度な技術を使えばいいのに何故?」)


そこまで考えた俺は横で何やら調べているオウキに近寄る、元はムゥの元にいた研究生でもあったからか手際よく何やら成分を分析している。


 「やはり、ベルゼさんここにある壁画の成分を調べてみるとこの壁画からは何も使われていない、つまり彼等が人力で作り出した物ですね」


 「人力?じゃあこいつらこんな技術を持っているのに全て手作業か何かでこれを作ったことになるってか?」


 「はい、さらに見ていくとあそこに置いてある彼等の作りかけの物には壊された形跡がいくつか残っていますがこの壁画達には風化している箇所はありますが壊された形跡はありません。このことから分かる事は」


 一応、研究員の卵であったオウキはある仮説を立てる。俺は固唾を飲んで結果に耳を傾ける。


 「もしかしたら、彼等邪神群は高度な文明は破壊するけど、特に高度でもない原始的な事にはまったく手を出さない事が証明されてしまう」


 「そうか、ならムゥが言っていた壁画やこの遺跡が今まで残っていたのがわかってしまうが何故この国を襲うようになったんだ?この国の文明は彼等ほど高度ではないってのによ?」


 ベルゼの発言に少しだけ傷ついてしまうが先ほどの仮説が正しいので有れば考えられるのはこの推論になるのだがこれはあまりにも絶望的すぎる為に私は一呼吸置いてから極めて平静に言葉を振り絞った。


 「考えられるのは、彼等が遺跡を破壊しようとした時に思ったのですが彼等の中で優先順位というより目標が変わったのかも知れない。例えば「高度な文明を破壊」するが目標なら人力で作ったものは破壊対象にはならないけど、「古代機械文明にかかわる物」になると破壊する対象が増えてしまう。用は彼等の中で目的が変わってしまったことになるんだけど一番怖いのはこの目的が完了するまで破壊活動はやめないだろうという事と、もう一つは目的自体が変わる事つまり、「人類を滅ぼす」みたいなのに変わってしまえばもはやどうにもできないよ」

 

 「じゃあ、何かあの機械文明はあいつらの気まぐれで滅ぼされた事になるのか?単に高度な文明を築いただけなのに」


 俺はいつのまにか拳を強く握りしめていた。あまりにも彼等が不憫でならないからだ、ただ彼等は普通に暮らしていただけなのにそれを自分等の価値観で合わないというだけで滅ぼされてしまう。まるで神のような傲慢な振る舞いをしているようにも見えてしまう。


 「だけど、まだ分からないことがあるんだ。奴らには一応知性はあるんだけど問題は俺達が会っていたのはもしかしたら下級の邪神群なのかも知れないということなんだ」

 

 「それは一体どういうことなんだ?」


  俺の疑問にオウキは壁画を軽く叩く俺は壁画をまったく見てはいなかった為初めてその全容を見る事になる。そこに書かれているおそらくは彼等が邪神群と闘う場面であろう。


 「おいおい、これは一体どういうことなんだ?」


 額から出た汗を拭いつつ俺は壁画に釘付けになる。そこに描かれていたのは、機械文明人と邪神群のが戦っている場面だが問題はそのサイズだ。大きさは俺達が闘った奴らとは違い機械文明人と同じ大きさをしているではないか。

 それより前に描かれている壁画には小さい邪神群が描かれているが奥にはやや大きめな邪神群が描かれていた。


 「おい、てことはまさか!」


俺はここに至って最悪の結論を導いてしまう。オウキも深刻そうにうなづく。


 「あぁ、おそらくですけど今まで私達が闘っていたのはおそらく奴等にとっては下位の奴らでおそらく彼等は本気で攻めてくるかも知れません。


壁画から読み取れる事実に内心俺は焦りを覚えたが同時にまだ見ぬ強敵達と戦える事に震えていたのだ。


 (「てことはあいつらよりも強いのがまだまだ出てくるってことなんだろ?それはやりがいがあるんじゃないのか」)


俺の思惑とは裏腹にオウキは短く首を振る。その理由は最後の壁画に隠されていた。そこにはたくさんの機械文明の人々が集まったてきており、邪神群に立ち向かおうとしている場面であった。だがその先の壁画は損傷が酷くあまりしっかり描かれていなかったのだが最後の壁画には最後の一機だけがえがきれておりその姿は見るも姿をしていた。


 腕は吹き飛ばされていて片足も無く、あたまも少し損傷しているらしい加えて大量の邪神群達が取り囲まれてしまっている中まだ戦意を失っていない。そこまでの意地を見せるこいつに対してかつて幼い頃、戦場に行く父を見た時と雰囲気が似ていると俺は感じた。


 「おいまさか最後まで生き残っていたのはまさか機械文明の王なのか?」


 思わず口に出してしまう、それを受けてオウキはまたうなづいた。


 「あぁ、おそらくだけどね。彼は最後まで抗ったんだろう。その後彼がどうなったかまでは分からないけど多分、死んでいるかも知れない」


 「さて、それはどうかな?地上界の勇者達よ」


 オウキと俺はすぐさま武器を構える、人の声とは違う異質な声に警戒しながら何かがこちらに近づいてくる。

 

 だがその姿に俺は、俺達は少し警戒を緩めてしまう。てっきり邪神群かと思っていたのだが違っていたようだ。その姿は俺達と大きさが変わらないロボットだった、だが所々壊れているようであまり戦闘には向いていない感じがした。

 

「後数百年程早く見つけてもらいたかったのだがまぁ仕方がない。はじめまして地上界の方々私はかつて機械文明の王を務めていた。機界王アストロ、これからは人類と共に邪神群を滅ぼすつもりだ」


 俺達はどうやらとんでもないものを見つけてしまったようだ。

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