第8話機械文明について

 衝撃的な話を聞き動揺してしまう、いきなり人類の危機を聞かされてしまうとは思いもしなかった。


 「それほどまでに奴等は人類の脅威になってしまうほど強いのですか?」


 あまりのことにオウキはムゥに訪ねてしまう。どうやら想像していた状況より深刻なようだ。


 「あぁ「邪神群」の強さについてはあまり私も分からないが、唯一わかった事は「機械文明」の彼等は我々人類より優れていた。その彼等を簡単に滅ぼしてしまったあの「邪神群」にとって我々人類などなんの障害にもならないだろう」


 「では、奴等はなん為にこんな事をするんですか?一体なんの恨みがあって」


 「いや、恨みがある訳では無いのだよ。私はある一種から仮説を立てたのだよ。だがこれはあまりにも理不尽すぎるものでね、当然納得できるものでは無いのだよ」


 少しだけ、短い沈黙が生まれた後ムゥはやっと口を動かす。彼にとってもあまり言いたく無いのだろうが研究者として例え仮説でも人に伝えたい欲求には抗えなかったようだ。


 「彼等は、自然現象なら近いのかも知れない。台風や地震あるいは津波といった。我々の力ではどうにもできない、その類のものであるだろう。我々ができるのは奴らが去るのを待つだけだ。立ち向かう事は許されないだろう」


 「それは奴等に怯えて唯逃げるしかないと仰りたいのですか?」


 丁寧な口調の中に怒りを潜ませながらオウキはムゥを睨む。

  

 目の前にいる戦士に殺気を向けられていてもムゥは怯えたらせずそれどころかため息をついてしまうのであった。

 

 「最初にも言ったがこれはあくまで仮説だと、現にこの石板にはこれ以上の続きが無いのだよ。結局機械文明はどうなったのか?その後邪神群はどこに消えたのかさえわからない。だがわかることは機械文明は既に滅んでいるかも知れない。もしくはひっそりとどこかで続いているのかも知れない。だがそれはわからないと言うのが今の現状なのだよ」


 「それがわかる場所は機械文明の首都があったと思われる。この先にかなり進んだ場所にかなりの規模の遺跡がある。あそこまでの道のりを教えてくれたら我々はそこにいくつもりなのだが。どうですかな?」


 「そうだな、あそこはきっと素晴らしいものが眠っている筈なのだが同時にあそこには凶暴なモンスターがいる為に研究ができなくてな………まさかあなた達本気であそこに向かうって言うの?」


 「元々、そこに向かうことは決まっていましたので私達が調査しに行きましょう。そのかわり知っている情報は教えてください」


 「それは有難い。だが私の知っている情報はほとんど話してしまったからな。あと知っている事はそうだな」


 少し考え込んだ後ムゥは、おもむろに近くの机の中を探り始め一つの資料を渡してきた。そこには機械文明の壁画の写真が貼ってある。そこには玉座のようなものに座る人型の機械と周りには整列している、違う個体の機械人形が並んでいたのだ。


 「この写真は、一度お前たちが向かう場所である機械文明の首都らしき場所で唯一撮れた貴重な資料でなどうやら奴等は私達と同じ社会性を持っており彼等の中にも指導者見たいのがいたらしい。ようは機械の王様がいたことになるんだよ。だがそれ以上の情報は得られなかったのは虚しいがもし可能ならば近くに彼等の王の墓があるかも知れないからそれを探してきてほしいのだがな。もちろんそれなりのお礼はするつもりだ」


 「わかりました。でしたら私からもお願いがあります」


 オウキも数枚の紙束をムゥに渡す。彼は一目見た瞬間、驚きオウキの顔を見る。


 「これは!?この資料をどこで!?これは「邪神群」に関する機密資料一体どこから?」


 「今回の任務に必要だと思いまして一応もらってきたんですけど私にはあまり理解ができないものなのであなたに渡して調べてもらうのが適切かと思いまして」


 「あぁ、それで私のところにわざわざきたと言う訳だな?王は息災か?」


 何かが納得がいったのか、ムゥは懐かしそうに尋ねる。その顔にはやはり彼なりの事情がある事が伺いしれてしまう。


 「えぇ、息災です。それに伝言を預かっておりますので伝えておきます。「たまには顔を見せにきてくれ。もうお前ぐらいしか当時を知るものは居なくなってしまった。このしがない老いぼれの戯言に付き合ってほしい」だそうですよ」


「ふん、死ぬまでには他は思ってはいたのだがどうやらあちら側が限界らしい。わかった近いうちには行くとするよ、もちろん約束は破ったりはしないさ必ずいく」


 それを聞いて安心したのかオウキはムゥに笑顔を向け、一度頭を下げ研究所を後にした。


 バタンと扉の閉まる音を確認してからムゥは一枚の写真を取り出す、そこに映っていたのは若かりし頃の自分が仲間と共に写っている写真だ。


「あれから三十年弱かぁ、時の流れは残酷過ぎるなもうワシとお前しかあの頃の仲間はいないとは」


彼は写真に向けて語りかけしばらくのあいだ懐かしい思い出に浸るのであった。


 「あの、おっさん急に黙ったけど一体何があったんだ?」


 「そうですね、昔彼と国王は旧知の仲でありまして元々あの場所で研究ができるように配慮してくれたのも国王陛下がどうにかしたようなものなんですよ。ですがあの方は長い事研究にのめり込み過ぎて陛下に合おうとしなかったので少しだけ言いたい事を言ってしまいました。まったくあの方ほど陛下に気に入られている方は知りませんから」


 「いつになく饒舌に喋るな」


 ベルゼの一言に動きを止めた、オウキはすぐに振り返り研究所に視線をうつす。


 「まぁ、元は私達の、「先生」でしたからねあんな態度になりますよ。まったく「機械文明の研究がしたい」からと全ての地位を捨てていく人でしたからね残された者の気持ちをあの人は知った方がいいですよ」


 文句を言いながらもオウキは名残惜しそうにもう一度研究所を見てから次の行き先を告げた。


 「ベルゼ殿、次は機械文明の首都に向かいますよ」

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