第7話やつらの名は……
俺達は、すぐに調査に乗り出すことにした。本当はもう少しゆっくりしたかったのだが、ここに止まっている研究職の方々の獲物を見るような目に耐えられずに逃げるように出てきたのであったのだ。
最初は、他人事だったために笑っていたオウキであったが自分も対象になっていた事を聞かされ顔を真っ青にして急いで調査の為の準備をし始めいていたのだ。ちなみにオウキが研究対象になっている理由を聞く限り、どうやらオウキ自身の出自が気になるらしく急遽新たに研究対象になってしまったのだ。
「まさか、私がなるとは思いもしませんでしたですが、あまり我々は目立ってしまってはこちらにとっては不利にしかなりません」
そうあくまで俺達は勅命を受けたことは秘密なのである。なので俺達がここにいる事、何をしているかは知られてはならない。
(「一応、潜入調査も兼ねての任務だとオウキは言ってはいたがそんな重要な事を見ず知らずの俺に任すのはどうかと思うけどなあの王様は、まぁそれでオウキは補佐役でいるのには納得がいっていまうのだがな」)
宿屋から少し離れた所でオウキは少し狭い路地に入る。そこで俺に黒い外套を渡してきたのだ。
「これは一体何だ?」
「まさか、ここがそこまで研究欲に飢えているとは思いませんでした。なんか凄い視線感じませんでしたか?」
「あ〜、なんかこっちを見ているなのは感じだが悪意は感じなかったから無視はしていたが」
時折感じる視線にもようやく慣れてきた為、あまり気にかけなくなってはいたのだがそれを聞いたオウキは額に手を当て俯いてしまう。
「いいですか?ここの人達は、今あなたに興味があるらしいです。ですのでこの外套を着てください多少は偽装の魔術ガーゼ施してありましてあなたを人間として見てくれると思います」
「おぉ、ありがとう。てかマジでここが怖く感じるだがもしかして過去になんかあったのか?」
強さとは違う得体の知れない恐怖を再び感じたベルゼは恐る恐る昨日聞かないことにしていた事をうっかり聞いてしまう。
「この街は一度だけ魔族を誘拐したことがあるんですよ。なんでもお忍びで来ていた。しかも相手がまさかの魔王だったらしくですね。あの時は本当に大変だったですよ。だからこの街は「忘れ去られた街」から「頭のおかしい奴らの街」に改名させられるそうになるほどのことがあったんですよ。本当は研究がしたいだけの人達なのだけど暴走すると魔王まで捕まえてしまうほどに強い。なので警戒は解かないで下さいねベルゼさん、ここはあなたや私にとって敵地みたいな物ですからね」
オウキは当時の事を思い出していたのか、少し疲れた顔で少し足取りが重くなっていた。俺は貰った外套を必要以上に深く被り、この街はでは油断しない事を誓ったのだ。
「話はだいぶ脱線してしまったのだが、この街で目立たないようにするのは少し難しいかも知れないぞ」
「確かにそうですね、もうかなり目立ってしまったのかも知れません。もしかしたらここに潜んでいるかも知れない魔術師はもう何処かにいなくなっているでしょうね」
「?、結局あいつらの正体は、魔術師による使い魔なのか?」
「いえ、そう決まったわけではないのですがね。あくまで可能性ですね。もしそうだった場合はもう居なくなっていると思います。彼らはの危機管理能力はずば抜けていますからね、それに私個人の見解ではあれは人工的に作られた生物だと思ったので彼等が怪しいたら思ったのですけど、そんな魔物を召喚できる魔術師はこの世界ではほんのわずかしか居ないのであまり自信がないんですけどな」
(「この世界の魔術師はそんな事もできてしまうのか?こちらの世界ではそんなことができる奴はいなかったんだがな」)
ベルゼのいた世界では魔術師はほぼ居なくなっていたのだ。代わりに魔族の魔術師が代わりに台頭し始めており、人間の代わりに魔術の研究などをしているような状況だった。
かなりの数の魔族が人間の職業を代わりにやり始めた為に人間のやることが減ってしまったらしい。
このことに憂慮した彼の父親である。魔王は人間にも職を与え共に共存する道を模索したのだ。魔族が側が人類に対して与えるなんとも奇妙な関係性が出来上がってしまった。
彼の父親はただ外敵を排除したつもりでいたのにその外敵の国を統治することになるとは思いもしなかっただろう。
(「まぁ、魔族との戦争を起こしたのが人間側であるのだから仕方ないかも知れないのだが、この世界ではやはり人間はまだ強い立場を維持しているそのおかげで奴等は争いが絶えないが争いの中で奴等は俺達の世界では知らない成長を遂げている。やっぱり異世界に来るのは正解だったようだ」)
事実、この世界に来てからベルゼは退屈では無くなっていた。むしろ今まで感じたことのなかった刺激に昂揚している。彼にとって平和より闘争に明け暮れているのが幸せなのかも知れない。
「仮説を並べていても埒が無いのでここは専門家の手を借りましょう」
「?、専門家って一体誰のことなんだ?」
ベルゼの問いに対してオウキは静かに指を指す、そこにあるのは少し煤けた建物が建っていて立て看板には古代文明研究所と書いてある。
「ここは昔から古代文明について何年も研究している場所なんですよ、もしかしたらここなら奴らについてわかるかも知れません」
俺達はそのまま研究所の中へ入っていく外の煤けた感じとは違い施設内はかなり綺麗でよく整理されているようだ。
辺りには何名かの研究者がおり何やら話をしているようだ。そんな中一人の老人が近づいてくる。
「ようこそ、おいでくださいました。私はこの研究所の所長を務めております。ムゥと言います。ここには一体どのようなご用件ですかね?」
ムゥと名乗った老人はいかにも研究職とわかる白衣を身につけこちらに訪ねてきた。
「いえ、ここにきたのは他でもありません。少しお尋ねしたいことがありましてですね」
「ほう、こんな研究所に聞きたいこととは一体どんなことですかな?」
ムゥは頬に手を当てながらこちらを品定めをするかのように俺達二人を見る。どうやら少し警戒をしているようであった。
「いえ、別に。唯我々が聞きたいのは古代機械文明についてお話を知りたいと思いまして」
オウキの「機械文明」という言葉にムゥはビクッと反応を示す。
「あなた、その名を一体どこで聞きましたか?、その「名称」でさえ我が国には伝わらないようにしているんですよ。彼等の文明については知らないことが多すぎる為にまだ発表はできないでいてですな。まだ彼等の国名や彼等の指導者さえわからないんです。彼等がどのように暮らして何故滅んだのかそこまでわからないととても国には伝えることができないのです」
一度話を区切り、ムゥは俺達についてくるように促す。どうやら見せたいものでもあるらしい。
「 彼等の文明はあまりにも高度すぎて我々では理解できないのです。もし理解できたとしても周りから変人扱いされてしまう。故に私はここで日夜研究と彼等の文字を解読するのに心血を注いできました」
そこには無数の石板と絵が描かれており最後の絵には何かに追われているように見える。
「!?ベルゼさん。ここに書かれている彼等を追っている奴等」
「マジかよ、こんなことがあり得るのか?」
そこに描かれていたのは俺達が闘っていた機械のような魔物と似ていたのだ。
「彼等は、確かに存在しており我々人類より先に発展していましたが、ある日を境にいなくなってしまいました。その原因は彼等がこの生物に滅ぼされてしまったからだという事がこの石板から得られた情報なのですが、まだ確証ができた訳では無いのです」
「所長さん、彼等は一体何者なんですか?」
オウキの質問に老人は短く答えた。
「彼等は邪神群かも知れない、発展しすぎた文明を滅ぼす為の装置なのか?それとも自然現象なのか人工なのかはわからない。だが今各地で起こっている未確認生物についての情報を合わせると奴らが復活したのかも知れない」
どうやら既に俺達が知りたい事をわかっていたらしくここに連れてきたのだろうと思う。
そして彼は最後にこう告げた。
「もし、この石板に描かれている事が事実だとしたらこの国はいや人類と魔王が協力しないと我々は滅ぶしかないのであろう」
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