第5話まず最初に向かう場所は……

 翌日、近くの宿に泊まり朝食を食べているとドアを叩く音が聞こえ急いで出るとそこにはもう準備を済ませたオウキが立っていたのだ。


 「おや、まだでしたか?すみません、いつもの癖でしてお気になさらず私はここで待っていますから」


 彼は申し訳なさそうにそう言うとゆっくりと扉を閉めた。


 (「なんだ?あの態度は全くこの前と違いすぎるのと少し気まずいのだが!?」)


突然の来訪者に困惑しながら俺は急いで準備に取り掛かった。


 「すまない、待たせてしまったな」


 「いえ、そんな事はありませんむしろ早く来てしまった私が悪いのですから」


 そんな気まずいやり取りをしながら俺達は王都から出る。一応極秘任務という事になってはいるらしく、見送る者は誰もいなかった。


 (「そういや、昔はよく妹と幼馴染のあいつよく冒険とかいって魔界の森に行っていた気がするな。そのあとバレて怒られていたりしたけど、まさか本当に冒険者みたいな事するとは思ってもいなかったしな。これが終わったら帰ってあいつらに自慢でもしてやるかな」)


少し昔のことを思い出して笑いそうになるのを抑えながら俺はオウキと共に初めての冒険に出る。


 「で、結局最初はどこに向かうんですか?」


 「そうですね、この先にある村で機械の魔物を目撃した話がありますのでまずそちらにより、可能な限りの調査してから次の目的地に向かいましょう」


 地図を指しながら言うオウキをに近づいて見てみると、どうやら第一目標は古代機械文明のある、遺跡の調査をしてから、魔王に会いにいくのだがそこまでの道筋にある村々に泊まりながら奴等の情報集めもしていくのが今回の任務のながれらしい。



 「結構その機械の魔物みたいな奴は強いのか?俺とやり合った時の奴はそこまで強くなかったのだがな?」


 「強いですね、最初は我々もそこまでは警戒はしていなかったのですが、あの街が消滅する事件が起こるまではですね」


 「消滅か?、それってどんな感じなんだ?焼け野原的な感じなのか?」


 俺の質問にオウキは短くうなづく。


 「はい、それにあそこにいた守備隊五百の兵も一緒に全滅になるほどの被害を出しましたね、精鋭中の精鋭がたった一体の魔物にやられてしまったのです」


 ギュッと地図を持つ手に力が入ったのか少し地図

が破れそうになってしまう。


 「事態を重く見た王はすぐさま討伐軍を編成し軍を向かわせましたが結果は倒す事が出来ましたがこちらにも多数の死傷者を出してしまう被害が出てしまぁした。その後にたくさんの同一個体がたくさんいる事がわかり、王は慌てて奥方…もとい魔王に確かめようとしたのですが、まさか魔王側でも似たような事が起きており」


 「なるほど、つまるところどちらも疑心暗鬼に陥っており、このままでは共倒れになるとそうならないようにする為に俺達が原因を調査し確かめてから魔王の誤解を解き、協力してもらう。簡単に言うと共同戦線をはるということかなオウキ」


 「その通りなんですが、魔王に会うまでに我々は奴らと我々が全く関係ない事を説明する為にも調査するしか無いのですよ。私達もあまり時間がないのですよ、一応各地の村には泊まりますが、必ず奴等がいるかどうかわかりません」


 そこまで説明しながら彼の表情は曇っていく、何故そんな顔になるのかをベルゼはわかっていた為に先回りして口を開く。


 「奴等は倒した後、まるで砂みたいに崩れ去る為に調査しようにもできないし、それで口頭説明ではあまりにも信憑性が欠けてしまうからだろ。ようは証拠さえあればいいのだけどなみたいな事だろう」


ベルゼの指摘にオウキは目を見開く。


 「そうでしたね、ベルゼ殿は一度戦って勝っておられるのでした。それも一人でよくあんな化け物を倒せましたな。私から言わしたらあなたは充分勇者ですよ尊敬に値します」


 「そ、そうか」


 尊敬の眼差しで見てくる。オウキに少し困惑してしまう。彼が何故か敬語で話してくるのか、少しだけその理由がわかったところでようやく調査する村に着いたらしい。


 「ここは、「ルネ」村と言いましてね。王都から一番近い村なんです。その為に様々な王都からの商品がたくさんあり、ほぼ街みたいなものですが規模としては村程度しかない為この名で呼ばれております」



 オウキの説明を聞きながらこの村の様子を見てみる。確かに言われてみると畑の数より商人の家の数が多いような気がする。賑わいも街には負けないぐらいにはあるのだがそれもごく一部だけで全体的に人の少なさを感じてしまう。


 (「これは確かに村と言われても仕方ない気がするなだけどのどかさと華やかさが一緒になっているのは少し魅力的には感じてしまうな」)


来て早々、この村が好きになったベルゼはもう少し見て回ろうとしたが誰かがこちらに向かってくるのがわかる。


 歳はかなり若く、服装は少し豪華な感じの男がオウキに対して頭を下げていたのだ。

彼がこの村を治めている村長らしい話を聞くと代々村長を継ぐ家らしく先代が急死した為に彼が村長になったらしい。


 俺達は、少し話してから彼の家に案内された。先程まで見ていた家とは少しだけ造りが違うのがわかる。


 「恥ずかしい限りですが、父が元王国の兵士だったのもありましてね。それで少し改築をしたんですよ。元々は他の家と同じだったんですけどね」


 若い村長は照れながら改築の理由を話す。彼にとっても客人は久しぶりなようで少しぎこちない気がした。


 「では、すみませんが単刀直入に聞きますが?ここで機械の魔物を見たのは確かなのですか?」


 オウキはいきなり本題に入る。俺も珍しい物に気を取られていた為、オウキの声に対して村長と同じように振り向いてしまう。


 「はい、ここ最近変な音が聞こえると話がありましてそこで私が代表として音が聞こえた場所に向かったのです。もちろん一人では怖くて無理だったので唯一この村にある駐屯している騎士団の方を連れてむかいました」


 「で、そこで何か得体の知れない物を見たのですか?」


 オウキの言葉に若い村長はコクコクと頷き、何か恐ろしい事を思い出したのか震える口をゆっくり動かす。


 「その後、我々が見たのは恐ろしくて黒い一つ目をした化け物でした。身体は機械の装甲のように硬くて騎士の剣はまるで歯が立たず、そのまま兵士達は吹き飛ばされてしまいました。何人か吹き飛ばして気が済んだのか?また恐ろしい機械音を上げながらどこかへ去って行きました。我々はそのあと負傷した仲間を抱き抱えながら命からがら逃げ帰ってこれたのです。あんな化け物に人間が敵うのかわからないくらい恐ろしく強かったです」


 村長は、思い出してしまったのか?身体を震わせながら絞るような声で俺達なら話してくれた。

 

 「その後、奴がどこに行ったのかわかりますか?」


  「分からないです、あのあと一瞬にして姿を消してしまいましたのでもしかしたら何かの転移魔法でも使えたのかも知れませんがそれ以上は私は知りません。お役に立てなくて申し訳ないですね」


 「いえ、大丈夫です。ご協力感謝致します」


 もうこれ以上、話してもトラウマが蘇ってしまうだろうと思い俺達は早々に話を切り上げ村長の家から出る事にした。


 一応他のところで宿はとってあるから心配する事は無いがこれからどうするか少し難しくなる。


 「結局、村長の言っていた場所に向かうしか手立てはないのか?」


 「それしか方法がないですけどやはり敵の強さがわからないのが厳しいですな。駐屯している兵士を吹き飛ばせる程の力と硬い装甲、並の騎士では太刀打ちできない事はわかったのですが、奴が出現する時間帯は夜かも知れないがそうとも決まった訳ではない。だとすると何者かが召喚している可能性もあるのだろう」


 オウキの言う事は納得できるのだがそれは奴等に本当に召喚者がいて初めて成立する話。今の段階では信憑性に乏しすぎるそれに仮にあの魔物が転移魔法だけ使える可能性もある。


 「だがオウキ、奴等が転移魔法を使えた場合は話が変わってくるぞ。その場合はどうする?」


 「うーん。結局待ち伏せして叩くしか方法は無さそうだな。だいぶ賭けにはなるが仕方ない、この作戦でやるしか無いな!」


 どちらにしろ信憑性がない為、俺達は待ち伏せにする事に決めた。そしてすぐに準備をしてそのまま村長が話していた場所まで向かうのであった。


 俺達は深夜になるまで村長達が襲われた村のはずれにいた。


  「なぁ、オウキ彼等が襲われたのはまさかこれが関係していたのかも知れないのか?」


 俺は何かが見えた方向に指を指す。その方向にオウキは視線を向けると驚いた表情になる。

 

 そこにあったのは古代の遺物である石碑がたくさん建っていたのだ。


 「どうやら、ここの調査は当たりかも知れませんな。こんなにもたくさんの遺物があったと言う報告は聞いてなかったですけどこれは思わぬ収穫をしました」


 もうひとつ俺達には頼まれていた事があるそれは遺跡の調査だ。数年前からこの遺跡達は見つかったのだが何の為に作られたのかさせわかっていなかったのだが今回の調査で何かわかるかも知れない。


 思わぬ発見に俺達が少し盛り上がっていると不意に近くで魔物が現れる程の魔力を感じた。


 (「なんだ!?この魔力量は魔界の上級魔族達よりも上だと!?」


 いきなり現れた何かに対してゾクッと寒気がくるのがわかる魔界では全く感じる事がなかったのだがどうやらこれが初めて感じる恐怖だとベルゼは思った。



 オウキはこちらに目をくれず獲物を手にしていたのだ。どうやら王が言っていた、黄金の槍を携え既に戦闘態勢に入っている。それにコートの下に黄金の鎧を中に装備していて万全の準備はできているようだ。


 俺達は動ける準備ができると近づいてくる何かにさらに警戒する。少ししたらそれはゆったりと出てきたのだ。

 


 そいつは、初めにベルゼがあった奴と同じような個体ではあったが、その機械の魔物は腕が非常に長く太く作られていた。


 そして、近くにあった遺跡を壊し始めたのだ。


 「まさか、あいつらの目的は遺跡を破壊する事なのか!」


 相手の行動に驚いた、オウキは何も考えずに前に出てしまう。すると魔物は対象をオウキに変えて襲い掛かってくるのだ。


 「どうやら、遺跡の遺物より人間を優先するらしいな」


 オウキはさっきまで手入れをしていた黄金の槍を構え相手の出方を伺う。対する、魔物はその特徴的である長い腕をムチのようにしならせながらオウキに向けて放つ。


 オウキは、腕の挙動を読み流れるようにかわしながら相手の胸めがけて一撃を加える。


 ガギィン!!とやはり金属めいた音が響くがそのまま槍は奴の胸を深く貫いていた。


 オウキはそのまま槍を引き抜き後ろに下がって様子を見る。まだ相手は機械じみた一つ目がまだ光っておりまだ生きているのであった。


 奴は、胸に空いた。傷など気にせずに大量の火球をつくりオウキに向けて飛ばしてくる。


 「くっ、その傷で動けるとは!?」


 本来なら重症で動けないのだが相手は倒れる気配もなく、魔法を使ってくる、何なと火球をいなしたオウキが反撃に出ようとした瞬間、突然奴の魔力が跳ね上がる。


 「オウキ!!、何か飛んでくるぞ!!」


 異様な魔力の増え方に違和感を感じた俺は叫んでいた。それと同時に何か熱線みたいなのがオウキに向けて飛んだのだ。


 「!!」


すんでのところでかわす事ができた。オウキの頬を少し抉ったようで鮮血が飛び散る。


 かわした熱線は地面に着弾すると同時に激しい火柱を上げ始め、大きなクレーターを作ると同時に恐ろし風圧が襲い掛かる。


 「くっ、しまった!!」


 風圧により、バランスを崩したオウキはその場に倒れ込んでしまう。それを狙っていたのか、魔物は一気に近づいてオウキの首を掴む。


 「ぐわっ!?、なんという力だ」


 掴まれたオウキは必死に振り解こうとしたが奴の装甲並みの腕を引き剥がす事はできない。続けて奴がオウキの腹を貫こうとするが不思議にも奴の視界はそこで途絶えてしまう。


 奴は忘れていたのだ、オウキにしか集中していなかった為に俺の存在を忘れていたのだ。


 「全く、やっとわかったぜ。お前等目で魔力を溜めているようだな、さっきの熱線も目から出していただろう?てことはここが弱点らしいな」


 目を貫かれた機械の魔物はそのまま動かなくなりオウキの首を掴んでいた手も力無く離れてしまう。


「ゴホッゴホ、ありがとうございます、助けていただいて」

 

 「いいってことよ、それにあの時お前大分手を抜いていたのだな?こりゃ再戦が楽しみ過ぎるぜ」


 「それはお互い様ですね」


咳き込む、オウキに手を貸し俺達は魔物のだ遺体を見る、不思議な事に奴は消えずに残っているのだ。初めてベルゼが倒した時は遺体も消えていたのに。


 「おい、こいつの体見てみろよ」


 俺は、奴が機械なのか生物なのか確かめる為に奴の体を裂いてみた。奴の体からは血は流れず、やはり機械生命体かなと思ったが違っていた。


 確かに、血は流れなかった。だが中身はあった人間と同じように臓器がある。だが血は流れていないのだ。それに機械で補助している訳でもなくだ。


 「どうやら、謎が深まるばかりですね」


 オウキの言葉に同意するしかなかった。結局俺達は村長に村が安全になった事を伝えてからこの村を去る事を決める。


 魔物の死体は一応、俺達よりも詳しい専門家に渡す事にし俺達の長い夜は終わりを告げたのだ。


 



 

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