第3話魔族が王に会えるのか?

 「どうしましたか?勇者様何やらお辛そうですが昨日はあまり眠れなかったのです?」


 「いや、まぁだが何も問題は無いから気にするな」


 結局、あのあと寝る事ができず朝を迎えてしまったのだ。朝起きたらでっかいクマができていた為それに皆気付いているようで警戒しながらも心配そうに俺の事を見てきた。


 (「まぁ、仮にもここの領主の娘を助けたのだから少しは情みたいなものが湧くようだが、それでもここまで魔族に対して警戒がある事を踏まえて次からは行動しないとな」)


俺は昨日世話になった領主の元に感謝と別れの挨拶をしに行く。すでに王都までの道のりは聞いており飛んですぐに向かうつもりでいた。


 「そうですか?、娘はあなたのこと大変気に入っていたのですが、確かにこの街はあなたにとって住みにくい環境ですから仕方ありません。本当は娘の護衛をしてもらいたかったのですがね」


 残念そうに領主は目を伏せる。一応俺も魔族だから人が嘘をついているかどうかは感覚で分かるがこの領主は度が超えるお人好しらしい。


 「まぁな、正直に言えば居心地は悪かったなからはどうやら俺はあまり歓迎されていないらしいからな」


 「これは手厳しい事をおっしやいますな。もし今度来られる事がありましたら次こそは「勇者様」の期待に応えれるようにしときますので楽しみにしといてくださいね」


 「フッあぁわかったよ。あまり期待はしてないが楽しみにしておくよ」


 彼の勇者の言い方が他の奴らとは違う事に気づいたベルゼは少し期待をしながらこの街に別れを告げて王都に向かう。


 あの領主の話では王都は今、優秀な人材特に剣技に長けた者などを募集しているらしい。どうやら俺がアリアを助ける時にであったあの機械みたいな魔物がよく王都に出現するらしくその度に被害に遭っているようなのだ。


 とりわけ兵士の被害が甚大なのとあまり敵が強い為腕に覚えがある者を即戦力として加えたいとのことらしい。


 「まったく、ついて早々あまりついてないと思ったが王都も同じような感じだったら俺警戒されるだけでは済まないだろうな。よくて捕まるか、もしくはその場で殺されてしまうかもしれんな。それに時期が悪過ぎるな」


 魔族と魔物には違いがあるのだがそんな事が人間にわかる筈が無い。俺はトラブルに巻き込まれる事なく普通に勇者になって純粋に困っている人を助けたいかつあわよくば強い敵と闘いたいだけなのだ。

 

 不安共にどうやら、王都が見えてきたらしく俺は目を細めて見つめて見る。


 「ヘェ〜、これが人間の城かぁ案外狭そうだし街並みも大して俺達と変わらないんだな」


 見えてきたのは、かなり広い土地を分厚い城壁が囲っており、その中央に城がある感じなのだがどうにも魔王城みたいな豪華な飾りとかはなく、ただシンプルに作られた感じであった。


 (「どうやって入るか考えていたが空から普通に侵入できるようだな、だが誰にもバレないようにしないと面倒だな」)


俺は近場でバレずに降りられる場所を探してみたがそんなところは見つかる事は無かった。


 「ハァー、やっぱり正面から入るしかないのかさて王都の人間はどんな反応をするか確認も兼ねてだな」


 この世界きて二日目で敵認定されるわけにはいかなかった。とりあえず城門から数メートル離れたところに降りてから、遠くから歩いたふりをしながら城門へと近づく。


 「止まれ。貴様魔族だろう?一体何しにここに来たんだ?答えろ」

 

 当然門番二人は警戒してベルゼに槍を向ける。


 (「やっぱり歓迎はされてないようだな。まぁ予想はしていたがなだがそんな事だろうと思ってある秘策を持ってきているんだな」)


俺は門番の一人にある手紙を渡した。


 すると、読んだ門番の額に大粒の汗が流れ。


 「これは!!失礼しました!!どうぞ中にお入り下さい」


 同僚の変わりようについていけてない、もう一人の問題は流れに流されるままに道を開けた。


 「では入らせてもらうが、その手紙に書いてある事をこの国の王に伝えてほしいのだが頼めるか?」


 「もちろん!!大丈夫です!すぐに使いのものを送ります!!」


 門番の返答に気を良くした。ベルゼはそのまま城門に入っていったのだ。


 ベルゼの姿が消えると、滝のようにかいていた額の汗をハンカチで拭っていた。


 「先輩、一体何故あんな奴を入れたんですか!?あいつ魔族なんだぞ?このまま放っておいたら何をするかわかりません、自分止めに行きましょうか?今ならまだ間に合うかも知れない」


 納得が言っていない若い門番が向かおうとした時

もう一人の門番が彼を止める。


 「いや、あれは倒すしか無いこの方の紹介状だからな」


 言いながら、さっき彼からもらった一枚の封筒を同僚に渡す。同僚も同じように額なな汗が滲み出てきたのだ。


 「先輩これ!?」


 手紙の内容と差出人に二人して固まってしまう。

 

「あぁ、まさか紹介状まであっては無下にはできない特にあの方の紹介なら尚更な」


 「あの街を治めておられるのは、もう引退されたが元王国騎士団団長のカルネ様がだからな、その方の娘を助けて頂いたのだ、いくら魔族だからってさらに直筆の手紙まであると信憑性のある」


 「先輩は、一度お会いした事がまたあるんですか?カルネ様に?」


 興味が出てきたのか、後輩が尋ねると先輩は短くうなづく。


 「あぁ、そもそも同じ騎士団にいた事もあったからな。それに何度か手紙も見た事があったからこそわかったってだからな。本当は引退するには早すぎたんだよな」


 少しだけ寂しそうに呟く先輩に対して後輩は気の利いた言葉が見つからず黙ってしまう。


 「すまんな、どうしてもあの人と共にいた時を思い出すとな。それより、一刻も早くこの手紙を届け無いと王宮が大混乱になるかも知れんからな」


 困った様子の後輩を見てすぐに感傷に浸るのをやめた先輩は普段の職務に戻るのであった。


 

 「さてと、ここから真っ直ぐ歩いたら城に着くらしいんだがこのまま何事もなく行けるのか不安になるな」


 なんとか王都に入ることはできたのだがそこではやはり魔族は魔物と同じ扱いらしく出会う人々逃げるか、目を合わせようとはせず離れていくいつしかベルゼの通る道には誰もおらず人々は隅で誰も顔を合わせず出来るだけ近づかないように通り過ぎていく。


 (「飛んで行くのは流石に目立つと思ったのだが歩いていくのも大して変わらなかったな。ここで今更飛ぶと余計警戒されると思うからな、とりあえずこのまま城に向かうとするか」)

 


 (「このままトラブルなく城まで行けたら」)と考えていたのだがその必要は無くなってしまったようだ。


 複数の足音が近づいてくるのが分かるしかも全員武装をしているようだ。


 「どうやら歓迎している訳では無いようだな」


  ベルゼは身構えはするものの剣を抜こうとは思ってはいなかった、むしろ相手から抜いて斬りかかってもらわないと正当防衛ならないからだ。


 複数人いる騎士団の中から一人が前に出る。軽装の鎧だが一人だけ肩の所に腕章みたいなのを巻いてあるのを見るとどうやらこの中で一番偉いのだろうそれに兜で顔は見えないがこちらをかなり警戒しているようではあるが、他の人々が向ける魔族に対する差別的なものでは無かった。


 「御仁、一体ここに「ひとり」で何しにきたのですか?ここはあなた達がくるべきところではありません」


 (「どうやら、話が通じそうな奴のようだな、あそこの領主と同じ感じなのか?」


 人」として扱った、この騎士に好感を抱いた。俺はその場で身構えるのを辞めた。


 「私は勇者を目指すベルゼと申します、ここ王都では人手が足りないと聞きました。私もそのお手伝いができればと思い王に話を聞いてもらうべくここまできた次第です」


 

 その姿を見て、騎士達はたじろいでしまったのだ。魔族の者が貴族みたいな丁寧な礼をするとは思ってもいなかったのだ。


 「これは丁寧なご挨拶をしてくれてありがたいがだが招待状も無ければ魔族だ。ここを通すわけにはいかないな。だが」


 軽装の騎士の纏う雰囲気が変わったと思った時、すでに男は懐に近づいて。ベルゼの胸に目掛けて槍を振るった。


 思わぬ奇襲であったがベルゼは難なく回避し、そのまま後ろに下がる。


 「ほう、私の槍をかわすことが出来るとはなかなかの手練れですな」


 だが相手は攻撃の一撃を止める訳は無くそのままやつは槍術を繰り出す。


 (「こいつ、なかなか強いじゃねぇか!、それに久しぶりにこんな強敵にやりあえたのだからな!!」


 ベルゼは、奴の呼吸に合わせてかわしていくが奴の一撃が頬を掠めてしまう。


 「チィ、いきなり何しやがる。こっちは手出そうとはしていないのによ」


 「あなたにその気が無くても、流石に魔族を簡単に王の元に行かせる気はありません。それにあなたほどの猛者が魔王から離れて我々側にくるのはあり得ないならばここで私が引導を渡してやろう!」


 どうやら、ベルゼの事をスパイだと勘違いしているらしい。どうやら話し合いでは解決できないようだ。


 (「仕方ないか、ここではあまり騒ぎを起こしたく無かったがそういうわけにも行かないようだな」)


ベルゼはゆっくりと剣を引き抜く、だが抜いた剣の刀身は前の魔物と闘った物とは違く赤色に染まっているのだ。


 「先に喧嘩を売ったのはそっちの方だからなこっちも少し本気でいかせてもらうぜ」


 (「なんだ?、奴の周りの空気が重くなった。というよりあの刀身に魔力が集まってきているのか?だったら少し手に負えないな)」


 「ならば私も全力でお相手しますぞ!!」


 (「!?、こいつ見る限りほとんどの魔力を槍に集めてやがる、どうやらこんな往来で本気の一撃を撃つ気なのかよ、一応周りに防壁魔法もかけておいてからやり合うとするか」)


勝手に死力を尽くした一撃を撃とうとする騎士に対して同じ総量の魔力をぶつけて相殺しようとするベルゼ、二人が動こうとした瞬間、騎士側から早馬が来たのだ。


 「戦士長、これは一体どういうことかね?、往来でその魔槍を飛ばすつもりかな?」


 ベルゼと相対していた騎士に問いかけていたのは初老に近い老人であった。


 「はい、ですがすでに住人は避難しております。私の一撃でこの魔族を倒せるのならどれだけマシか皆様わかってくれます」


 そんな老人の話をを聞くつもりがないのか、戦士長と呼ばれた男は振り返らずに答える。


 「今しがた、連絡があってなこの魔族の方は正式な王の客人だ。その証拠の手紙も預かったのだ。それにこのままやり合ってもお前の負けだ。それが勝ってもだ」


 「なっ!!、それはどういう意味で……」


 反論しようとする戦士長が止まる。どうやらベルゼが作った防壁に気づいたようだ。


 「もし、彼が手紙を持っていなくても私は王に会う事を許すよ。魔族が人間を守るなんて珍しいのだからなそれに我々には余裕も無い、時間もない戦力は多い方が良い」


 老人の言葉に短く舌打ちをしてから戦士長は戦闘体制を解き、老人の後ろに控える。


 「すみません、どうやら手違いがありましたので私はここで魔術を教えている。大魔導師のヨームと申します。これからあなたを王の元へ案内いたしますのでどうぞついてきてください」


 ヨームは、後ろからついてくるように促してくるので俺は黙ってついていく。


 色々ゴタゴタがあったがやっとな事で王に会う事が叶いそうだと思う半分、あの戦士長と闘いかったと思うベルゼであった。


 





 

 

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