第2話初めての異世界
別の世界へ行くのは初めてであった為にどこの世界に出るのか、まったくわからないまま使った為に出たとこ勝負となってしまう。
一応本には帰り方も書いてあるしある程度はなんとかなるが。
(「多分、父さんにはこっぴどく叱られるだろうなあぁみえて結構子煩悩なところと過保護なところがあるからな」)
ベルゼがそう思ってしまうのも仕方がなかった。
彼が小さい頃、探検するといって数分帰ってこなかっただけで魔界の軍を出して総力で探しにきてみつけた瞬間ベルゼ以上に涙を流して強く抱きしめられた事を覚えていたからだ。
(「あれ以来、外出する時にはどこに行くのか、細かく聞かれるようになるは、最悪転送魔法まで使って魔界にまで来ることがあったな」)
どの異世界に着くまでの間、俺は昔の記憶を思い出しながら少し不安に思ってしまっていたのだ。
(「流石の父さんもピンポイントでは来れない筈だから大丈夫だと思うのだけどな」)
ベルゼはそんな父親の性格を知った上でどこの世界に行くのか決めていない。自動で勝手に決められた異世界に行くことになっている為に、彼の父親親がベルゼのいる、異世界に辿り着くのに時間がかかる筈なのだ。
(「ってどうやらもうすぐ着きそうだな?」)
段々、思考が鈍ってくるのがわかる、どうやら異世界に着くようだ。
(「さてここから始まるんだな俺の冒険が!)」
ゆっくりと瞼を開けると俺は寝転がっていたようだ。
「さて、まずはどうするかだな?、こんなところに転移しているとは思っていなかったがな」
どうやら転移には成功したらしいのだが何もない草原で近くに街があるように見えなかった為、少し不安に感じてしまう。
「まぁ、地図も無しに街を探すのも冒険ぽいといえばぽいのかな。とりあえず探すとするかな!!」
ベルゼが向かったのは深い森であった。普通なら危険でいかないのだが。
「やはり、こういう場所に強敵がいるような気がするしな!」
まだ見ない、強敵がいるかも知れないと思うとベルゼの思考は鈍るらしく彼はそのまま深い森に突き進んでしまったのだ。
「おいおい、いつになったらこの森は抜けるんだ?まったく先に進んでいるのかわからないんだけどよ」
早くも、迷子というより遭難に近いことになってしまう。歩いても歩いても森が続くだけで一向に抜ける気配がないのだ。
「さて、こういう時は勇者はどうするんだよなまずは考えてみるか」
ベルゼは自分の腰に翼を触りながら考える。
「…………………」
ふと触っていた翼を眺めながら少し考えある結論に至る。
「そうか、飛べば良かったのか」
ベルゼはすぐに飛ぼうとした時、森の中から叫び声が聞こえてきた。
「なんだ!!、何かがいるのか!」
ベルゼは嬉々として叫び声が聞こえた場所に向かう、元々備わっていた魔力感知をフルに使い急いで向かうのであったのだ。
「おいおい、これは一体どうなっているんだ!これは!」
悲鳴が聞こえた場所に到着したのだがそこにいたのは襲われていた。人間の女性と機械じみた未知の生物が彼女を襲おうとしていたのだ。
「ピピピ」
機械音みたいな音を立ててながら、ベルゼに気づいたその生物はとてつもない速さで襲い掛かってきたのだ。
「よし!、異世界での初戦闘にしては申し分ない相手だな!いいぜ!!相手になってやるぜ!!」
ベルゼは腰にあった剣を引き抜きそのまま斬りつける。
手応えはあったがかなり装甲みたいな皮膚が硬く斬り裂く事までは出来なかったのだ。
「チィ、何つー硬さだ。」
ベルゼは奴の体の周りに魔力を帯びている事が分かり目で凝視すると何重にも薄い膜が重なっている事が分かったのだ。
(「なるほど、幾重にも重ねる事で魔力で編んだ鎧を作り上げているのか、だったら話は簡単だ)」
不敵な笑みを浮かべ、剣に何かの魔力を刷り込むように流し今度はベルゼから仕掛ける。
相手は油断していたのか?、同じようにベルゼに一撃を左手でき受け止めようとした。
同じように防げると思っていたのだろう。だがベルゼの剣は奴の腕に深く食い込み、そのまま切り裂いてしまうのだ。
「ぴぴ!?」
思いがけないことに驚いたのか?機械の魔物は甲高い警告音を発する、そしてそのままバックステップをしようとするがベルゼが逃すわけがなかった。
「もう遅い!!」
そのまま一気に機械の頭に剣を刺しそのまま力任せに強引に押し込み顔を破壊する、血の代わりにオイルみたいなのが噴水のように出るが構いはしなかった。
すぐに剣を引き抜き次は奴の体を真っ二つに切り裂く。
「まったく、初戦はもっと優雅に華麗に勝ちたかったのだがな。まぁこんな奴に油断するわけにはいかないしな」
剣に付いたオイルを振り払いつつ鞘に収める。横に倒れた機械の魔物はしばらくもがいてから動かなくなり、そのまま砂のように消えて行ってしまった。
「消えたって事はコイツは何かに召喚された事になるな。一体誰がこんな事をしたんだ。まぁなによりも」
ベルゼは、近くにへたり込んでいる女の子の方に向かう。
「さぁ、お嬢さん、もう危険は無くなりましたよ立てますか?」
「えぇ、ありがとうございます」
ベルゼの姿を見て多少困惑しながらも彼女は彼の手を取る。
(「やったー!!、勇者でやってみたかったシチュエーションをやれる日が来るとは思ってはいなかったぞ。感動で涙が出そうだ」)
冷静に振る舞いながらも心の中は冷静さを欠いて有頂天になっている。
「あの、助けて頂きありがとうございます。よろしければお礼がしたいのでよかったら一緒に村まできてもらえませんか?」
願ってもない誘いであった。このままではこんな森の中で野宿するハメになっていたからベルゼとしてはありがたかった。
ベルゼはその誘いにのり一緒に彼女の村へ向かうのであった。
彼女は、アリアという名前でどうやら薬草を摘んでいる最中にあの機械生物に襲われたらしい。
彼女の話を聞く限り村ではあんな魔物が出た事は一度も無かったという事らしい。
街に着いたら、彼女の無事に街の皆は喜んでいた。どうやらここの街を治めている領主の娘らしく大変人気者だという事がこの歓迎ぶりを見て嫌というほどにわかってしまう。
だが俺に対しては別だった、皆口ではお礼は言うもののどこか少し距離があり警戒されている感じがするのであったのだ。
どうやら、俺が魔族だということに対して警戒しているようらしい。
(「まぁ、わかっていたことだけどな。だがこの程度で曲げていてはダメだしな」)
どの世界に置いても魔族は嫌われ者である事は常識となっているのは仕方ないのかも知れない。だがそれでもやはり俺は納得できないことがある。
(「あの女の子を助けたのだから引き攣った笑顔では無く、もう少し自然な笑顔はできないのかな?」)
嘘でもいいからもう少し歓迎してもらいたかったと少しだけ残念な気分になる。やはりもう少し感謝されたいが何分自分は魔族なのだと言い聞かせながら仕方のないことだと割り切ることにした。
それから形だけの宴をしてもらい、特に盛り上がることはあまり無く、結局まったく面白味も無いただの事務的な宴が終わるのを待つしかなかったのだ。
「ハァー、やっと終わったぜ、まったくこんなにもつまらない宴は初めてだった」
ここまで酷いものは見た事はなかったが、誰もベルゼについては触れず、それぞれ自分の家に帰っていってしまったのだ。
唯一、この街の領主が気をきかせて部屋の一室を借りる事ができたのは幸いであった。このまま放置されていたら野宿させられるハメになっていた。
「まぁ、魔族に対する偏見はこんなもんだろな。よく父さんはこの問題を解決できたよな」
同じような価値観を持った人々と友好な関係を築きあげた、親の偉大さが改めてわかった時に突然、扉をノックする音が聞こえたのだ。
俺は、警戒しながらゆっくりと扉を開くとそこには今日助けた少女アリアが立っていたのだ。
「どうしたんだ?」
ここの子供達も魔族に対する恐怖心があるらしくほとんどの子が怯えていたが今、目の前にいるアリアは、普通なら直視することのできない。魔族なら俺の目をよく見てから。
「今日は、危ないところ助けて頂いてありがとうございました」
思いもやらなかった彼女の行動に唖然としてしまう。
「どうされました?」
今にも?マークが出そうな感じなら頭を傾ける。
「いや、お礼を言われるとは思っていなかったからな。ここの人々は魔族に強い恐怖心を抱いていますのですみません」
「いや、おまえさんがきてくれることでさえ奇跡だとは思っていたんだ。そうかまぁ仕方ないことかも知れんな」
「でも、私はあなたに救われて感謝しています。先程は言えませんでしたけどありがとうございました!!」
彼女はペコリとお辞儀をして感謝の言葉をベルゼに告げた。それだけで傷ついていた彼の心は救われ活力が戻ってくる。
「ありがとう!!」
ベルゼは満面の笑みで応えた。そしてアリアと少し話をしてから彼は寝ることにした。
だが初めて人に感謝された事に感動したベルゼは
しばらく寝る事ができなかったのだ。
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