同接0人
これは、私が最近ゲーム配信をした時の話です。私のスタイルは、好きなゲームを好きなタイミングで配信をしているため、配信に来てくれている人はいません。アーカイブの再生数も0~5回ほどで、生配信になると0人になります。
このままでは、配信者としての名が廃ると思い、私はあるゲームを配信することにしました。それは、最近話題になっている「はっぴー・らんきんぐ」という名のゲームです。なぜ話題になっているかというと、このゲームを配信しながらプレイすると呪われるからだそうです。普通にプレイすれば、ただのノベルゲームなのですが、決まって配信者がプレイすると変なことが起きると言います。何が起きるかは、私はその時知らなかったので出まかせだろうと思い、そのゲームをインストールしました。
ゲームの内容は少し変わっていて、登場人物が発言した単語や行動基準からプレイヤーがどれが一番幸せに感じるかを順位づけするだけのゲームでした。その順位付けによって、エンディングが変わっていくらしいのです。私は、面白そうな内容だと思い、配信環境を整えて、ゲームを開いた状態にしました。
準備中、同接数はやはり0人でした。それでも、話題に乗っかっている分何人かくるだろうと高をくくっていました。なんとか、配信準備が整ったのでゲーム画面と自分とは別のアバターを画面に共有させました。ゲーム開始前に、自分のチャンネル名とゲームの概要を説明しましたが、まだ同接数は0。誰も見ていませんし、誰もコメントしていません。やはりダメかと気持ちを切り替えようとした瞬間、コメント読み上げ機能が反応しました。
『ひきかえせ』
一つ目のコメントは、少し不穏なものでした。ですが、よく見ると不思議なことに気付きました。コメントがついているのに、同接数が0のままなのです。表示のバグかなにかかと思いましたが、何度も何度も『ひきかえせ』というコメントが来ているのにも関わらず、同接数を確認しても0になったままでした。 まさかなと思いつつも、私はゲームを開始させました。
ゲームの画面がメニュー画面から、学校が背景のゲーム本編に切り替わりました。
すると、突然女学生のキャラクターが現れて
『おすし、おにく、おせち、オムライス』
と、単語を連呼してきました。
おそらく、あらすじに書かれていた順位付けするための単語なのでしょう。次に、選択画面が出てきて同じ言葉が並んでいました。私は、自分の好きな食べ物順に4つを順番に押しました。4つすべて押し終わると次の画面に行き、また選択肢が出ました。今度も4つの単語で「北、南、西、東」と書かれていました。食べ物のランキングはわかりますが、幸せを感じる方向など考えたことがなかったので私は適当に4つを選択しました。
同様に、何回か選択肢を押すことを繰り返しながらコメントや同接数を確認してみましたが、やはり同接数は0人のままでした。にも拘わらず、コメントはさっきよりも増えていきました。おそらく4人くらいがコメントをしていました。しかも、「繰り返してください」や「放っておいてください」など、ゲームの進行などに関係のない言葉を書いているのです。
見ているならゲームや私自身に関係あることを書いてほしいと、コメントを書いている人に伝えるも、意を介してないのか同じような言葉をなんどもコメントしていました。この時点で、コメントを閉鎖すればよかったものの、私は初めてのコメントに愛着が湧いてしまい放置してしまいました。
そのまま、ゲームを続けていると奇妙な選択肢に遭遇しました。
『配信の接続数が増える、チャンネル登録者が0になる、アーカイブが消える、本名がバレる』
まるで、こちらが配信していることを分かっているかのような選択肢でした。私はもちろん、最初に配信の接続数が増えるを選びました。そして、その後は適当に選びました。すると、その影響かはわかりませんがコメントが増えていきました。ですが、接続数は0のままです。その内容はさきほどまでは日本語で読み取れるものだったのに対して、ほとんどが文字化けして何を書いているかわかりませんでした。
コメント数は今まで以上に増えて行って、コメントが流れる速さがどんどんと早くなっていきました。私は、喜び以上に気味悪さを覚えました。再生回数も0、同接数も0なのにコメントだけは増えていくこの違和感に、この時初めて実感しました。
ゲームも終盤に入っていき、私も早くこのゲームを終わらせたいと思い、選択肢を見ずにボタンを連打しました。すると、急にパソコンがブルースクリーンになって固まってしまいました。ただのノベルゲームのはずなのに何がそうさせたのかはわかりませんが私はかなり焦って、なんとか再起動させました。
すると、パソコンのホーム画面にはびっしりと、配信のコメント欄に流れていたこれまでのコメントがびっしりと現れていました。配信も切れておらず、画面はゲーム画面が配信されたままでした。その画面も女学生の顔がこの世のものではない形に崩れてしまった状態でした。私は、そのまま配信をぶち切ってパソコンの電源を落としました。
その日から私は配信するのも怖くなり、活動をやめている。元々趣味から毛が生えたようなものだったので食い扶持には困らないが、今でもパソコンから自動音声で『ひきかえせ』と再生されることがある......。一体、私は何から引き返せというのだろうか......。
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