怪談係
学校にはいろんな係活動があったよね。給食係とか、黒板消し係とか、保険係とか......。でも、僕の係は怪談係だった。内容は至って簡単。みんなから学校で起きた怪現象や、怪談、怖い話を持ち寄らせたり、週に一回それらを発表するのが仕事だ。
今考えると変な仕事だったと思う。
僕は給食を配膳したり、黒板を消したりする『仕事』を押し付けられる活動が嫌だったので、怪談係を名乗り出た。他の活動よりかは、まだ面白いと思ったし。だから、今日は係活動で得た怪談話の中で、僕も実際に体験した話をするね。
これは確か、小学4年生の8月くらいに怪談のおたよりを入れる『怪談ポスト』に来ていたものだったと思う。その内容はある小学生が、学童で遅くまで学校で遊んでいた時の話らしく、一人で学校探索をしていると階段の踊り場に鏡があったそう。別に普通だと思われるかもしれないけど、うちの学校の階段の踊り場には鏡なんてない。つまり、存在しない鏡を見たというんだ。
僕はそれを見た時、面白がって実際に調査しようと同じ係のBくんと、手紙を投函してくれたRさんの3人を引き連れることにした。僕たち3人は、放課後まで残った後、Rさん先導の元、その踊り場へと向かった。学校の正門から入って、右端の階段を上って3階から4階へ向かう間の踊り場だ。そこには、確かに鏡があった。実際に行ってみたら、勘違いで無かったというパターンを想像してたけど......。
鏡は、当時の僕らの身長より大きくて大体170か、180㎝くらいはあった。僕は興味本位でその鏡に触れてみた。だが、そこに鏡の世界があるわけでもなければ、そもそも存在しないものでもなかった。普通に触れたし、指紋が付いた。つまり、存在しない鏡ではなく、存在を知らなかった鏡ということになった。僕は、結果を知って拍子抜けして帰ろうとした。
だが、Bくんは諦めずに鏡の裏をのぞき込んだり、持ち上げようとした。持ち上げた瞬間、そこには人一人が入れるサイズの穴があった。僕らは、やっとモチベーションを取り戻して、鏡を全員で取り外してみた。
穴は、ドアが付いていたかのように真四角で、鏡よりも少し小さくて僕らと同じくらいか少し大きめの穴だった。僕らは、スマホのライトを使って中に入った。中はほこりだらけだったけど、思っていたよりも広かった。ちょうど教室半分くらいのスペースはあったと思う。学校にある秘密の部屋だと、僕たちは最初興奮していたけど、それはだんだんと恐怖ヘと変わっていった。
というのも、始めに気味悪さを感じたのは他でもないRさんだった。Rさんは誰かに見られていると言いながら、涙をにじませていた。Bくんと僕は首をひねっていると、その正体が姿を現した。それは、人間の頭をかたどった像のようなものだった。よく見ると、周りには棚が並んでおり、そこにずらりと像が並べられていた。さらに観察すると、その頭に見覚えを感じた。上級生たちだ。それに、卒業した近所でよくしてくれたお兄さん、お姉さんだ。そして、同級生。僕たちの顔もかたどられていた。いつ、だれがなんのために作ったのかわからない。しかも、その像の下にはなぞの数字が書かれていた。多分、数字の並び方的に年月日が書かれている。しかも、当時からして未来のことだった。僕は無自覚にも、それらを写真に収めた。
僕たちは、特にRさんは冷や汗が止まらなくなって飛び出していった。僕たちは、鏡を自力で戻して、何も見なかったことにしようと約束を交わして帰った。その日は、あの無機質に並んだ顔たちの事が脳裏に焼き付いて、寝れなかったことを今でも覚えている。
それから、数年の月日が経ち、Bくんが死んだ。高校生の時、事故だったそうだ。事故の日を聞いたところ、ちょうどあの頭の像の下に書かれた年代、月、日と全く同じ日だった。さらに、数年後にRさんも死んだ。元々体が弱かったそうだが、大学卒業くらいの年にガンで亡くなったという。亡くなったその日もまた、小学生の時に見た像の下に書かれていた数字と同じだった。
そして、明日。とうとう僕の日がやってくる。2023年6月30日。しかも、僕の誕生日だ。身体に異変もなければ、酒やたばこのような命を削りかねない嗜好品も避けてきた。病気もしてないし、心も満足している。特に死の要因になりそうなものは今のところ一切ない。つまり、僕はどこかのタイミングで事故死するということになる。
直感だけど、その事故死はどれだけ避けても、いつか運命の恋のようにめぐりあうのだと思う。それほど、避けられない事象なんだと思っている。それでも、絶対にあの時小学校で見た僕の像のような、苦痛の表情は避けたいと思っている。
だからこれが、僕の怪談係としての最期の役割だ。
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